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~11~

 宿屋にやって来た他所のプレイヤータウンの冒険者達はレベルもバラバラで90レベルの冒険者が3人しかいなかった、残りの9人は子供ばかりでどうやら初心者のようだった。


「初心者連れじゃ鉱石採掘は向かない場所だと思うんだけど、気のせいかしら」


 タカミヤが他の冒険者達を観察してから再び部屋に戻ってくると。


「やっぱり赤のフリル付きか、いや黒のレースでも良いかも、む~~どっちを履くか」


 何やらカノンは下着を前に唸っていたのでそっとドアを閉め見なかった事にし、一階の酒場で先に食事でもとることにして階段を降りる途中、先程の三人組がコソコソと内緒話をしている所を目撃したがあまり聞き耳を立てて他所の事情に首を突っ込むの訳にも行かないのでそれ以上は気にせずに残りの階段を降りていき酒場のカウンターに座ると、鉱夫達が力が出るようにと豪快な肉料理が多い中である1品を見つけたタカミヤはその料理を頼んだ。


「ほらお前らも食え、明日は忙しいぞ~」

「「「「「「はい」」」」」」


どうやら先程の三人組も初心者達を連れて食事に来ていたようで離れたテーブルを12人で囲んでいるのが見えた、子供達は久し振りの料理なのかガツガツと料理を食べ三人はそれを見て静かにエールを飲んでいるらしい、タカミヤがカウンターへと振り返ると鉄板焼がちょうど出てきた所のようでジュウジュウと音を立てていい臭いがたちのぼる、静かに食べ始めたタカミヤの前にバーボン入ったグラスが滑って来た、何事かと思い滑って来た方を見ると、カノンが同じようにグラスを手にしながら。


「私のオゴリだ」

「何してんの」

「一度してみたかったんだ」


 カノンはそう言うとそそくさとタカミヤの隣へ移動してきてメニューを開き料理を注文していく、そしてグラスを傾けると。


「うぇぇにっがぁぁ~~い」

「飲めないんならやらなきゃいいのに」

「う~」


 どうもカノンは酒を飲めないらしく、眉を潜めたあとグラスの残りをタカミヤに押し付けて別の飲み物を注文していた、本当に何故頼んだろうか・・・これが日本なら色で誤魔化せるウーロン茶でもでてくるのだろうが。


 カノンもどうやら他所の冒険者達が気になるのかチラチラと覗いているらしい、面倒なことが起きないように一応念をおしてあまり見ないように言っておいた、まあ向こうの冒険者達が気付いてない様なので気をつけておけば喧嘩になるような事態にはならないだろう。


「グランセルにいる冒険者とは随分と毛色が違うのだな?」

「グランセルの冒険者は仲間と一緒に他愛のないお喋りをしたり、お祭りしたりするのが好きな人達が集まってる場所だからね」


 グランセルは欧州サーバーの隅っこにあるプレイヤータウンで、ガチガチの攻略専門のプレイヤーは数数(かずかぞ)えるほどしかいない、チャッターやフレとパーティー組んでのスローライフなプレイを楽しむ者が多い場所である、それ故に他のプレイヤータウンからはヌルイだの腑抜けが多いだの陰口を叩かれた時期もあったが『大災害』が起きた後でも街の大地人と上手く共存出来ているのはグランセルの冒険者の大半が心優しいプレイヤーだったお陰だろう。


 実際『大災害』が起きた後で他所から逃げてきてこの街に住み着いたプレイヤーも多い、そんなプレイヤー達はこの街のメインプレイヤー達に土下座して謝罪する(別に謝罪要求はしてない)などして受け入れて貰うために誠意を表したらしい、今ではグランセルの平和な街並みを護る為に自警団に参加するものや、色々なサーバータウンを渡り歩いた経験を生かして商人達の護衛を引き受けている者も居る程だ。


「冒険者といえど平和を望む者だっているし戦いを望む奴もいる、そういう事よ」

「そうりゃほは~」(訳:そうなのか~)

「ゲコだったのね・・・」


 喋りが怪しくなってきたカノンが料理を食べ終えてサイフを探して服をはだけそうになっているのを阻止しカノンの分を立て替えて自分の分も含めて金貨を払うと、酔ったカノンに肩を貸し部屋まで戻ってくるとベッドに寝かせた、するとカノンは手を広げて叫ぶ。


「ひゃあ、ろんとこ~い!!!(訳:さあ、どんとこーい)」

「何が?」

「しゅへにしょうふひちゃぎははいれるろら」(以下ご自由に想像ください(笑))

「いいからヨッパライは早く寝なさい」


 ペチっとカノンのオデコを軽く叩いて言い聞かせると、カノンはむくれ。


「ひょふぇいにひゃじをにゃにゃへるもんじゃないにょ~!!」

「あんまり聞き分けないとホントに襲うわよ・・・」


 カノンが諦めないのでタカミヤが脅しで威嚇するとカノンは毛布を口許まで被り。


「///りゃんぴゅはへふてくれふぁいとふぁふきゃひし///」

「さっさと寝ろ!!」


 再び手刀で頭を叩いて気絶させるとタカミヤは部屋のランプを消してソファーに寝転び毛布を被った、もう春先の季節になるがまだ肌寒い日も多く暖かくなるのはもう少し先になるだろうと考えつつ、タカミヤも静かに眠りについた。






 ~翌日~

 『オリハルコン結晶』は出ずとも『オリハルコンの欠片』が出ればいいやという流れで再び鉱山の中で採掘作業を行う二人、ドリルが不慮の事故で折れてしまったので今日はカノンもマトックでカンカンと採掘作業を進めていく、龍の移動通路になっていないエリアの採掘場所を掘っていた二人は昨日の冒険者達を見かけたのだが今日は子供達だけで来ているらしい。


「ん?向こうは結晶龍(クォーツドラゴン)の巣の筈だけど・・・」

「気になるな」

「んー・・・・、見てない振りもしたくはないし・・・仕方ないか」


 二人は静かに子供達の後をつけ、巣の中でも岩陰になる場所で子供達の採掘光景を覗いていた、別段問題ない様子で採掘を続けていく子供達(子供とは言っても15~16くらい)は無事に採掘を終えたらしくバッグや町の雑貨屋で売っている予備のバックパックへと鉱石を詰め込んでいっていた、バッグを背負い巣を後にしようとした時1人の少年が巣のある場所に置いてあった大きな結晶の様なものに気付いた。


「見てみろよ!!これ高く売れるんじゃないか?」

「ホントだ、でもこれには触るなって言われてたでしょ?」

「そうだけど、これを売りゃああの人らに貰った金貨も返せるじゃねぇか」

「ダメだってば早くしないとドラゴンが来ちゃうから急いで合流場所にいかないと」

「先に行ってろよ、俺はこれを持っていくから」


 少年がそう言うと他の8人は巣を後にし先程言っていた合流場所とやらに向かったのだろう、だが少年が大きな結晶の様なものに手を伸ばそうとしたとき、見るに見かねたカノンが少年を止めようとして投げたロープがその手に巻き付いて少年を止めた。


「それには触っちゃダメ!!それは結晶龍(クォーツドラゴン)の卵よ」

「悪いことは言わないわ、途中まで送ってあげるから一緒に来なさい」

「ええ、これ龍の卵なのか!?」


 少年は説明を聞き慌てて手を放すと、タイミング悪く翼の羽ばたきの音が聞こえてミヤは慌ててカノンと少年を抱えると先程まで隠れていた岩陰に再び隠れる、少し後にエリア上部の空洞から結晶龍(クォーツドラゴン)が戻ってきたので間一髪で気付かれてはいないようだ。


 (卵が無くなってたら怒り狂って暴れだしてた所だったわ)

 (結晶龍は怒ると冒険者達に手当たり次第に襲いかかるからな)

 (え、じゃあ俺が卵をとっちゃってたら凄く危なかったってこと!?)

 (そうよ、だからあなた達の保護者の人達も触っちゃダメだっていってたのよ)


 龍を刺激しないようにヒソヒソと小声で話し、龍が背中を向けたところでハイドスキルを使って静かに巣を進んでいく、途中気配を感じた龍が振り返った瞬間ピタリと止まり(ハイドスキルで全員ステルス状態だが動けば見つかる)じっと待ち続け龍が後ろを向くまで立ち止まっていた、そして再び静かに歩きだし無事に巣から脱出に成功すると少年を待つ仲間のもとへと送り届けに行った。


 合流場所はこの鉱山に住む2体の龍の通り道から外れているキャンプエリア(モンスターとエンカウントしない安全地帯)へと少年を連れてやって来た二人は先程の子供達と保護者の3人が居たのにい気付く。


「リューグ!!怪我はないか!!」

「バカな真似をしやがって」

「アンタらがコイツを助けてくれたのか?」


 3人は口々にリューグという名前らしい少年冒険者を怒るとタカミヤとカノンに頭を下げた、カノンは別になにもしてないと手を振っていたが結晶龍の卵に手を出そうとしたのは他の8人から聞いていたらしくかなり心配していたらしい、ふと3人の様子を見てタカミヤはある事に気付く。


「もしかして、結晶龍(クォーツドラゴン)の足止めをしてたの?」

「な!?なんでわかんだよ?」

「いや、3人とも随分ボロボロだし、結晶龍も少し傷だらけだったみたいだから何となく」


 そこまで言うと3人は静かに頷いた、何でソコまでして子供達に鉱石採掘をさせていたのか聞こうとしたが、場所が場所なので今日は採掘を切り上げて(ふもと)の町に戻ることにしたまではよかったのだが。


「へくち!」

「あ・・・」


 カノンが小さくクシャミをした事で近くを歩いていた鉱物龍(マテリアルドラゴン)に気付かれてしまい、出口まで鬼ごっこが始まってしまったのだった。


「アンタなーーーー!!」

「スマーン!!悪気はないんだーーー!!!」

「いいから走りなさい!!追い付かれるわよ!!」


 9人の子供達を手分けして抱えて(レベルが低くSPDとAGL値の問題によりレベルの高い大人組と走る速度がかなり違うため)ドシンドシンと突進してくる鉱物龍から必死に走って逃げ回り何とか鉱山の出口が見えた所で。


「振り切ったか?」

「そんなわけないでしょ『放射熱線(メーザーブレス)』が来るわよ!!」

「うわぁ!!!きたあああ!!」


 鉱山の出口から転げ落ちる様に飛び出したコンマ数秒後、超高熱の炎のレーザーの様なものが吹き荒れた、鉱物龍のブレスは一部からはレーザーだのビームだの言われているのだがまさにその通りだった・・・良くみるとカノンがゴロゴロと転げ回りながら。


「髪が焦げた!髪が焦げた!!」


 と叫んでいたのでマジックポケット(マジックバッグの機能がついた不思議なポケット)から大きな水筒を取り出すと水筒の中の水をカノンにかけてあげた。


 長いストレートロングだったカノンの髪は焦げた部分を切り、綺麗に揃えてセミロングになってしまったのでカノンはヘアバレッタで後ろ髪を纏めあげてアップスタイル(紫電の○レスタ○ン風)に結い直している所だった、命からがら(冒険者は大神殿で復活するのでカノンのみだが)鉱山からの脱出を終え、麓の町まで降りると宿酒場に戻り彼らの話を聞く事に。







    ~~~~~





 話を聞き終えたタカミヤは頭を抱えると、オリビエに念話を繋げ彼らの事情を伝えた。


『自分達の益にならない初心者(モノ)を切り捨てる・・・か、合理的っちゃ合理的だけど』

「とは言え子供達を切り捨てるのはどうなのよ・・・」

『まあ、僕やミヤっちは親にはなってないけど子供を持ってもいい年齢だから余計にそう感じるのかもね』

「そんな簡単な問題かしら?」


 子供達は元はアメ○カサーバー方面の出身でプレイヤータウンで排斥され、フィールドでは追い回されて金品を強奪されたりしながら命をなんとか繋いでいたらしい、彼ら3人も所属していたギルドの指示で子供達を搾取する立場だったのだそうだ、だが3人は子供達が搾取されていく光景を見続けて遂に堪えきれなくなって銀行から全ての私財を引き出した後、ギルドの目を盗んで子供達を連れて『妖精の環』に飛び込んだらしい。


 何とか脱出には成功したが飛んだ先のロ○アサーバーのあるプレイヤータウンでは身の安全を確保するために街を仕切るギルドに賄賂を渡さなければいけなかった、幸い彼ら3人はレイド攻略ギルドのメンバーだったので私財に余裕があった、だが子供達はそうもいかず・・・そのプレイヤータウンでは性的暴行を受けそうになった子もいたらしい、彼らは子供達に自分達の金貨を分け与え身を守るために使う様にと言い聞かせ様々な情報を集め、安全な土地を求めてプレイヤータウンを渡り歩いたのだそうだ、今回は度重なる出費で消費した私財の補充を兼ねていたらしい、レベル90の3人は未だしも子供達はそうはかないので今回の鉱石採掘計画を立てたらしい。


『グランセルもすぐ隣のエレボニアがいつ爆発するか分からない手前平和とは言いがたいんだけど』

「そこはクロウとミスティに連絡して住む場所やらを用意してもらう事にしたわ」

『オルディス湾岸都市か・・・確かにあそこは結構平和だね、隣接するプレイヤータウンも我らがグランセルぐらいだし』

「一応あそこには神殿もあるし、仕事なんてハロルドの所でなんぼでもあるでしょうし」

『ふむ、それもそうだね』


 タカミヤは念話を終えると別の相手に再び念話を繋げて連絡を取った、2つ返事でOKしてくれた友人に礼を言うと彼らを連れてマインツ鉱山町を後にし大型馬車でのんびりとした旅を数日間続け、目的地の『オルディス湾岸都市』へとやって来るとクロウとミスティが街の入り口で出迎えてくれた。


「おう!お前らが新しくこの街に住むガキんちょ共か、よろしくな♪、俺はクロウだ」

「私はミスティよ、クロウの・・・そうねぇ、恋人・・・かしら」

「「「「「「おお~~~~♪」」」」」」

「いや捏造すんなよ!!信じちゃってるから!!」

「ふふジョークよジョーク」

「明らかにマジだったように見えたんですが~」


 クロウとミスティの愉快な掛け合いを見て子供達も安心したのかクロウに「なあ兄ちゃん、どこま進んでんの♪」などとまとわりついていた「だからそんなんじゃぁねぇっての!!」と叫んぶクロウに「あらあら♪周囲公認かしら♪」と微笑むミスティ、「外堀から埋めんじゃねぇよ!!」と再び叫ぶクロウ、そんな光景を見ていた子供達の保護者3人は。


「スマナイ、色々世話になってしまったな」

「ん?、私は話を通しただけで後はアナタ達の仕事よ」

「そうだな、この街ならアイツらも安心だろうし、なんとか頑張ってみるよ」


 カノンを連れタカミヤが手を振ってその場から離れようとしたら3人から再び声をかけられて呼び止められた。


「あそこに居たってことはアンタ達も鉱石目当てなんだよな?、コレを・・・・・子供達が採掘した鉱石なんだがアンタ達に渡してくれって預かってたんだ」


 そういって差し出された鉱石の数々を目の前にタカミヤは優雅にその場に土下座すると。


「是非売ってください!!!!」

「ええ!?なにコレ!?え?なんで土下座されてるんだ!?」

「お願いします、是非とも売ってください!!お願いします!!」


 3人は訳が分からなかったがタカミヤが鉱石を買い取ってくれた金貨はかなりの額で、その金貨で少し大きな一軒家を買うことにし、彼らの新しい生活が始まったのだった。













  ~~オルディスからグランセルへの帰り道~~


「なあミヤ殿、なんで土下座までしてその鉱石の山を買ったんだ?」

「もしかして実物を見るのは初めて?、この先が見えるほど透き通って澄みきった青く耀くコレが『オリハルコンインゴット』なのよ」

「ええ!?」

「しかも3個よ3個♪、マーケットで買うより安い相場で買えるなんて、ビギナーズラックさまさまよね~♪」

「相場より安いって、ミヤ殿さっき金貨50万枚くらい払ってなかったか?」

「マーケット相場だと『オリハルコンインゴット』1個で20万枚はくだらないわよ?」

「アワワワワ(((((((; ‘ □ ’)))))))」

「さて、いいことして結果オーライだし、今日はいい気分で寝れそうだわ♪」











  とはいえ、グランセルの家に戻ると鍛冶屋『武士刀姫』の看板に『武者鎧始めました』という冷やし中華も驚きの看板が付け加えられていて『オリハルコンインゴット』の代金を経費としてオリビエに押し付け絶叫させる事になったのだった・・・・・・。


『オリハルコンインゴット』

サブロール『錬金術師』が『錬金』すれば『オリハルコン結晶』が最低でも10個は手に入る、結晶よりも入手率は低く驚きの0.6%。

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