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第七十七話 答え合わせ

久々の更新にも関わらず、誤字報告、ご感想ありがとうございました。

誤字報告は確認させて頂いた上、反映させて頂いています。

いつもありがとうございます。


今回は短めです。

 冷や汗が止まらなかった。

 クシャトリアとアルタイル……そしてオリオン。

 解放軍のゼフツが所長をしていた時の魔法研究所が生み出した人工精霊たち。

 俺が彼女らに関係があること。

 そのうちの二人と契約をしていること。

 解放軍の壊滅とともにゼフツを、フォンタリウス家を破滅に追いやっていること。

 それらを語らずには、クシャトリアたちとの関係を説明できなかった。


「そうか……君たちが……」


 ノアやロブ、サーシャたちは半信半疑と顔に書いた上で、迷っているような表情を浮かべている。

 色んなことを割愛して説明した。俺が紆余曲折の末にクシャトリアやアルタイルと契約したことと、解放軍の壊滅に関与していること、延いては人工精霊について必要最低限ではあるが知識はあること。

 それらについては間違いなく伝えた。


「今ので信じるんですか……?」

「にわかには信じられない。ただ筋は通っている気はしている。あと、もう一つ質問いいかい?」

「ええどうぞ」

「なぜここの警備の依頼を受けようと? ソーニアがノームミストとは知らずに来たんだろう?」

「うーん、これ言っていいのかなぁ……魔法学園の学園長がその依頼を受けた上で、ノノとソーニアの仲を取り立てと指示があって……」


 それでソーニアとノノの仲を探っていた、と説明を付け加えようとしたところ、話の途中でノアが高笑いを始めた。


「あははははははは」


 なんだなんだ、壊れたか?

 そりゃあ娘が怪盗なんていうイタイ肩書きを隠してて、さらに人工精霊なんていうもっとやばい存在を屋敷で飼ってて、父親の心中を察すると気が触れるのもわからないでもない。


「あはは……はぁ、そういうことか。君たちは学園長の使いか……」

「え、どういうこと?」

「アスラ君、今の話は言っていいやつだよ。と言うか、君がそう白状すると踏んだ上で、学園長は君たちを行かせたんだ」


 なるほど。

 ……。

 ……。


「え、どういうこと?」

「あらら……」


 俺の理解力のなさにノアは崩れそうになる。


「マスター、おそらくゼミール学園長は、私たちがゼミール学園長の指示で来たことを言わせる目的があったのでは……?」


 アルタイルが俺の記憶と状況を統合、整理して助言をくれる。


「なるほど。ということは、ゼミールは俺たちが奴の指示で来たことをノアさんたちに言わせる目的があったってことだな?」

「は、はい、そう申し上げております……」

「ほんとにバカだなお前は」


 アルタイルとクシャトリアから容赦なく「残念な頭してるなお前」という視線を送られる。


「ゼミール=フォンタリウスがキーリスコール家のために動いてくれた……僕たちキーリスコールは貴族だからその恩義を受けたことを無視できない」


 ノアの言う補足説明は、ゼミールの意図を明らかにするものだった。


「恩返しするってこと?」

「そういうことだ、アスラ君。そして今、彼女たちフォンタリウス家が欲しているものは、たった一つ」


 え、貴族ってそんなに頭いいんだ?

 もうそんなこともわかっちゃうわけ?

 なんだろう、ゼミールのことだからロールケーキとか紅茶とかかな。


「それは、キーリスコール家による後ろ盾だ」


 ノアは言い切る。ロールケーキじゃなかったみたいだ。


「ゼフツが解放軍関係者であった以上、フォンタリウス家領地内は大混乱だ。王族からの視線も痛い。領主であるゼフツが捕えられたから妻のゼミールとミカルドがフォンタリウス家の立て直しをしなくてはならない」


 なるほど、それでキーリスコール家の後ろ盾を欲しているとわかったわけか。

 ノアは続けた。


「そんな中、ゼミールから受けたのはキーリスコールの家庭内でのわだかまりの解決。この恩は貴族である以上返さなくてはならい。恩を受けた我々はフォンタリウス家が望んでいるものを検討し準備するのだが……彼らが欲しているものは火を見るよりも明らか。僕たちがゼミールの寄越した君らを警備依頼の担当として受け入れた時点で、ゼミールの目的は達成されていたんだよ」


 これだから貴族は怖い、だとか、つい最近まで平民だった僕らにすることじゃないだろ、だとか小言をこぼしつつも、ノアはゼミールの目論見通りに動くつもりらしい。


 貴族というものは難しい考え方をするものだと思った。

 普通にノアに後ろ盾になってくださいとは言えないものなのだろうか。

 それをしたら、下手に出ているとか思われて印象が悪くなったりするのだろうか。

 わからない。

 そもそも俺は自分の行動で周りがどう影響されるのか考えることが苦手だから。


「ゼミール=フォンタリウスの指示で警備依頼を受けたことを知ってしまった以上、彼女にはお礼を言わないと。そして彼女の望みが明らかである以上、貴族としてそれを汲み取った恩返しをしなくてはならない。結局、君も僕たちも最初から彼女の手のひらの上さ。ひとまず、この件に関しては僕の方で対応をしておこう。君たちはソーニアを迎えに行ってくれるか」


 ノアはそう言うと、ロブに馬車を用意させた。

 まったく貴族というものはわからない。

 そういうものだから仕方ない。ノアはそう言うが、俺は納得できなかった。


 ロブが用意した馬車に、俺とクシャトリア、アルタイルで乗り込む。

 御者はアルタイルがしてくれた。


 思えば、ゼミールから課題を出されてからだった。

 一つ目は奉仕活動ということで冒険者ギルドに行って依頼を受けることを指示されたが、ギルドに行った時点でAランカー冒険者は、ミカルド=フォンタリウスが務めるギルド長から直々に依頼が下ったこと。

 そもそも、そこからすでにゼミールの術中だったのかもしれない。

 フォンタリウス家がキールスコール家からの援助を受けられるとなると、ミカルドも喜んで協力しただろうし。


 そこで俺が解放軍に潜入し、解放軍を壊滅させるところまでのシナリオがあったかどうかはわからないが、キーリスコール家の後ろ盾を得ることを目的とした、この二つ目の課題……。

 どう転んでもキーリスコール家とは手を組むつもりだったのだ。


 貴族……と言うか、したたかな女は恐ろしいということを、改めて身に染みて感じている。



 そんなことも知らずに巻き込まれたロイアは今頃どうしているだろう。

 別行動を始めてから、数日が経った。

 彼女は無感情に見えて情に厚く正義感が強い。

 上手く立ち回っていると思うが、前世の日本のようにスマホでやりとりできないのが歯痒い。

 異世界はスマートフォンとともにじゃなかったのかよ。



 俺たちは一路、ノノのいる宿へ馬車を急がせた。






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