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第七話 とある馬車に乗って その1

自分には長男、長女に次ぐ次男という立場に次期当主の継承権がないという理由だけで親に見放された。

どうしようもなく呆れた話だが、まあ今は良しとしよう。

よかったな。俺が大海原の如く広い心の持ち主で。


だが適正魔法がない。属性魔法が使えない、無属性の魔力というのが原因で勘当されたのは、どうにも釈然としない。

無属性だからと言って、使い道がないと決まったわけじゃないのに、チャンスを奪われては、そりゃあ俺の大海原にも嵐が吹くってもんだ。

本当に、酷い仕打ちだと思う。でも俺にはそれに抵抗するだけの力がないのも事実。

粛々と受け入れるしかなかった。


ノクトアの火属性やミレディの水属性のように属性が付与されている魔力は、効果や威力は落ちるものの、他の属性の魔法も使える。

二人からしたら土属性や風属性といったような属性だ。


でも無属性魔法はそもそもの話、それを使う者の魔力を火や水に変化させる力自体がない。

つまり無属性魔法を使う魔術師は、それ以外の属性魔法を使うことができないのだ。

それが無属性と言われる所以(ゆえん)


これだけでは魔法使いとして先が知れてしまうが、さすがにそれでは酷というものだ。

ちゃんと救済措置はあった。


無属性魔法はどの属性にも分類されることのない魔法を使うことができる故に、どのカテゴリーにも属することのない無属性なのだ。

つまり無属性魔法を使う者はそれぞれ特有の魔法を使うことができる。

言わば、専売特許だ。

そのため逆に、例えば火属性を適正魔法とする魔術師が、無属性魔法を使うことはできない。


属性魔法と無属性魔法の間には、はっきりとした隔たりがあるのだ。


考えようでは、無属性魔法は異端の魔法。

属性魔法を使う者が圧倒的に多い世の中が、少数派の無属性魔法を見下す理由だ。


だけど俺は腐らない。

なぜなら、自分にしか使えない無属性魔法に期待をしているからだ。

俺はこの無属性魔法でのし上がって、俺を勘当したフォンタリウス家を見返してやる! 十倍返しだ!


******



というのが、俺の今しがたまでの考え。

ええ。俺にも自惚れた、そんな時期がありましたとも。

所詮、ゼロにいくら十や百をかけても、ゼロだ。

ゼロでしかないのだ。

もはや黒の騎士団を名乗って、弱きを守り強きをくじくしかない。


俺は今、とある馬車の上で2人の男女に慰められながら項垂れている。

こんなにも自分に絶望しているのには、もちろんのこと、理由があるワケで……。




*********


俺はルースが言っていたギルドを目指すべく、王都に向かっていた。

ギルドとは、いわゆる仲介人。

誰かに頼み事を依頼をされれば、ギルドに登録している冒険者にその依頼を斡旋する。

その王都のギルドに、重要な情報があるとルースは言っていた。


俺は道中の宿を経由して、王都を目指す。

生まれて初めての敷地の外だ。

おっかなびっくりした俺だったけど、怖がるという程でもない。むしろ好奇心に後押しされたぐらいだ。

フォンタリウス家を出て、三時間程歩いたところ。

王都への道は日本にはないような、大自然の中なので、もちろん電車やタクシーなどの公共の交通機関などは存在しない。

だが、所々に道案内の看板が立っており、王都へは迷わずに行けそうだ。

道もアスファルトなどでの整備はもちろんされていないが、ここは行商人がよく利用する街道らしく、歩くには問題はない程に踏み固められている。


俺の荷物はヴィカに貰った金と着替えのみ、と極めて軽量だ。

だが、やはり身体は五歳児。

歩くペースも遅いし、すぐ疲れる。


俺は日が沈む前に、道すがらにある宿を早めに見つけて、そこで休む事にした。

それは果てしなく広がるように思わせる広大な草原を横切る街道沿いにポツンと建っている宿屋。

二階建ての緑の屋根。

外観は瀟洒(しょうしゃ)な雑貨屋のようにも見えなくもない。

あたりは夕日に照らされて、俺の影も伸びる。


今日は色々あって疲れた。

まだ王都への道のりもはっきりしない。

金にどれほど余裕が残されているのかもわからない。

そんな懸念を抱きながらも、宿の引き戸を開ける。

扉に取り付けられた、来店を知らせる鈴がさりげなく鳴る。


「らっしゃい。坊や、一人かい?」


入口のすぐ右手に設けられたカウンターのヒゲを肥やしたいかついスキンヘッドの店主らしきおっさんが出迎える。

筋骨隆々の体が着ている服を今にも破り切らんという勢いだ。

ここにドーラ一家がいればゲンコツ勝負も始まろうに。


「お一人様ですよ……」

「いや、そんな悲しい顔されても」


俺をファミレスに一人で来店する客みたいに見るんじゃねえ。

その意を込めた返事に店主のおっさんは困り果てる。



「親御さんはどうした」

「家庭の事情でここにはいません。で、一泊ニ食付きでお願いできますか」

「小さいのにしっかりしてるんだな。それなら五千Gだ」



俺は屋敷で強要されていた礼儀作法にならった言葉遣いで接する。

俺は指示された代金をヴィカに貰った金貨袋から支払う。



この世界の貨幣は(ゴールド)と呼ばれるもので、


実はこの世界の貨幣はわかりやすく、1Gで1円。

石貨一枚で1G、鉄貨一枚で十G、そのあとは0が一つ加わるごとに銅貨、銀貨、金貨と価値が上がる。


五千Gなら、五千円。千円札価値の銀貨五枚で支払える。

俺は銀貨を五枚支払った。それでも、ヴィカから貰った金にはまだ余裕があるぐらいだ。

無駄遣いは避けようと思うが、休める時には休むようにしよう。


「ほら、これが部屋の鍵だ。飯は、ええっと、お前……」

「ああ、アスラです」

「アスラの都合の良い時間に言ってくれりゃ、飯は作るからその時には声を掛けてくれ。俺は店主のモーリスだ。何かあれば言ってくれ」

「ありがとうございます。それじゃあ、早速。王都まではここから歩いてどのくらい時間がかかりますか?」


俺は若干モーリスのガタイにおののきつつも、質問する。


「おお。それならここから馬車が出てる。この宿の客なら乗れるから、明日の朝それで行くといい。丸一日もすりゃあ着くだろ。なんだ観光か?」


おっとここにきて五歳児の肉体的にはおいしい耳より情報。

この宿の宿泊サービスの一環ということか。

ありがたくそれを利用させてもらおう。


「そんなとこです。じゃあ食事をあとで部屋に持って来てくれませんか」


カウンターから食堂らしき部屋が見える。

そこでも食事をしている人が何人かいるが、俺はあいにく知らない人間と食事をするメンタリティは持ち合わせていない。


了解だ、とモーリスは快く承諾してくれた。

客室は全て二階にあるらしい。俺は指定された部屋に向かう。

部屋は割と綺麗にされていて、あのいかにも豪快そうなモーリスが掃除をしている姿は思い浮かべるだけでシュールだ。

中に入ると、六畳ぐらいの広さがあり、ベッドと洗面所と小さな机が用意されていた。風呂はないみたいだ。

光源は備え付けのランプに火を付けて用意する。


ぼんやりと部屋がランプに照らされる。


さあ、時は満ちた。

俺がここで宿をとったのは、俺の無属性魔法の能力を知るためだ。

もし魔力切れで倒れてもベッドの上だ。

それを鑑みて、前倒れた時のようなことになっても大丈夫だという安心感を得る。

でも、書庫みたいに半壊させるのだけは避ける。

適正魔法の儀式の時同様に魔力をコントロールして抑える。


今回の目的は、俺の無属性魔法の効果を知るため。

早く知っておくに越したことはない。

この先何かで役立つかもしれないからだ。

というか、どんな能力なのか知りたくてウズウズする。

俺は書庫の時よろしく、手に魔力を集める。


程良く集まったという頃。

俺の懐に入れてある、金貨袋がもぞもぞと動いているのを感じる。

どうしたものか。

金貨袋を取り出してみると、どういうワケか、金貨袋はひとりでに空中に浮遊し始めた。


俺には物を動かす力、サイコキネシスがあるのか?


だが、そういうことではないらしい。

目の前の木製の机を浮かせようとしても、ピクリとも動かない。

魔力が足りないのか?


それとも何らかの理由で、俺の能力の対象外なのか?

どちらにせよ、俺はもう少し魔力を増やして手から放出してみる。


すると、浮遊している金貨袋や俺のいる部屋の扉のドアノブや蝶番(ちょうつがい)、床の木の板に打ち込まれている釘が、勢い良く飛んできて、俺の手に集結する。

音を立てて壊れた扉が倒れる。


カチャッ


そして金属が触れ合う音がした直後に、まるで糊付けしたかのように、ぴったりと引っ付く。

そこで、この魔力との関係が俺の頭に浮かび上がる。


俺の手に集まったのはすべて金属だ。


俺は金属を操ることができる無属性魔法という推測を立てて、今度はもう少しだけ、今より多くの魔力を解放する。


すると、

「あぶねえっ!!」


部屋の外からモーリスの何かの危険を知らせる大きな声が短く聞こえてくる。

その注意喚起は正しくて、次の瞬間には。


この部屋の扉を突き破り、俺を串刺しにせんとする速さで包丁が飛んできた。


俺は反射的にそれを避けるが、包丁は壁にビィンと突き刺さる。


俺は倒れた扉を跨いで外にでると、食堂から飛んできたと思われるフォークやスプーン、燭台が部屋の前に散乱していた。


二階の俺の部屋の前は吹き抜けになっており、一階の食堂や厨房をよく見渡せる位置にある。

天井の小さなシャンデリアは何かに引っ張られるようにこちらに傾いていた。

食堂では、なんだなんだ、とちょっとした騒動になりつつある。


「す、すまねえ。アスラに頼まれた飯を作ってたら急に包丁が飛んでいって、それで……」

「い、いや。大丈夫です。俺も無事ですし」

「ああ。悪ぃ。できたら飯を持っていくからよ」


コック帽を被った、料理人服のモーリスが部屋に駆け込んで、俺の身の心配をしてくれる。

俺に被害がないことを確かめてから包丁を壁から引き抜き、おっかしいなあ、とモーリスが包丁の異変に疑問府を浮かべながら、一階の厨房へ入って行く。

それを見届けた俺は、何事もなかったかのように部屋に入る。


あっぶねえ!

死ぬとこだ。


俺は身を呈して、さっきの推測を確かにする。


俺の無属性魔法には金属を操る力がある。

それも、魔力を込めれば込める程に、操れる範囲が広がるというやつだ。

包丁や燭台、金貨袋の中の鉄貨、操ることができたのは全て金属である。


どうせならサイコキネシスのようなオールマイティな方が良かった。

金属なんて、ピンポイント過ぎて、逆に実用性がこの世界ではない。

日本や地球には、近代技術に金属が使われまくっているので、そこでは俺の魔法にも有用性があったかもしれないが、この世界は近代科学もおろか、産業革命すらなさそうだ。


この世界では魔法が科学の代わりなのだ。

そこに金属操作などが需要の高い能力とはとてもじゃないが、思えない。


俺の魔法は便利か、そうでないか、と言うとかなり微妙な、筆舌に尽くしがたいところだ。

お、俺の魔法が微妙過ぎて笑える。



俺が魔法を正しく使えたという喜びと、この微妙な魔法と一生向き合っていかなければならないという、失意のせめぎ合いにのまれていると、モーリスが夕飯を持ってきてくれた。


こんこん

短いノック。


「どうぞ」

「よお、アスラ、飯だぜ」

「ありがとうございます」


「いいってことよ」


と言って、部屋を後にするかと思いきや、そこに留まって俺の食事の様子を興味深々に眺めてる。



「どうしました?」

「いや、俺の息子もちょうどお前ぐらいでよ、まだ俺の嫁にべったりなのに、お前はこんなにも早く自立してすごいなと」


モーリスには子供がいるらしい。

そりゃまあ、確かに五歳児が王都まで一人旅だなんて、危険だわな。

俺がモーリスの立場でもそう思う。

だけど、それを危険だ、と叱りつけずに素直に褒めてくれるのは嬉しかったりする。


「もし良かったら、明日王都まで送ってってやろうか?」

「え?」

「もちろん代金はいらねえ。老婆心だ。なんかお前、妙に達観した感じだからと言うか。危なっかしくてよ」



俺は危なっかしいらしい。

それとも、自分の息子と照らし合わせて、重ねているのだろうか。

兎に角、なんにせよ、これは渡りに船だ。

一人で王都に向かうより、道を知っている人間がいた方が心強い。


俺は明日の付き添いを頼んで、食事を終える。

食べ終えた食器をモーリスに渡し、俺は早々にベッドに入る。

さっき魔法を使ったこともあり、身体がだるい。

また明日もある。

寝れるときに寝なければ。

こういう時、一人だと苦労するぜ。



それにしても、俺の魔法がしょっぱすぎる。

ベッドで横になり明かりを消すと、先程の俺の無属性魔法を思い出す。

金属操るのが能力か。


物語においては、火属性魔法を使う主人公の脇で守られる駄キャラが持ってそうな魔法だ。

いや、別に何においても俺が中心でいたいだなんて、自己中心的なことは考えてないけど、何かのCMで人生の主人公は君だ、なんて言ってたのを思い出すと自嘲気味に笑えてくる。


少しブルーな気分で眠りにつく俺であった。


**********



翌朝、清々しいほどに天気が良かった。

そして俺の気分も上々の、針落とせ、音鳴らせパーリナイ……というほどのものでもないが、晴天を見て気分を落とす心持ちでもなかい。

むしろ、昨日自分の無属性魔法に対して落胆した俺が嘘のようだ。

一晩寝ると俺の魔力も気分も回復していた。

これから良い事あるって。

そういう風に思うことにした。


俺は顔を洗い、部屋を出る。

昨日部屋に向かって飛んできた金属類はすべて片付けられていた。

ありがたいことで。

カウンターのある一階のロビーへ降りる。

そこにはモーリスがいて、気さくにあいさつをする。


「おはよう、アスラ。よく眠れたか?」

「おかげさまで」

「飯はもうできてる。部屋まで運ぼうか?」

「いえ、朝は食堂で食べます」



了解だ、と昨日と同様に気持ちの良い返事が返ってくる。

今日の俺はちょっとした気まぐれを起こし、食堂で食べることにした。


食堂には甲冑や鎧を身に纏った人でごった返していた。

大きな剣を背負っていたり、弓矢を手に持っていたりと格好は様々だが、みんな一様に肉付きの良い体格をしている。

男は引き締まった身体ではあるが、腕を曲げた時の上腕二頭筋と爽やかな体育会系の笑顔が眩しい。

女は多少筋肉はついているものの、それが逆に体躯をスリムに見せる。膨らむ所は膨らみ、しまる所はしまっている。

みんなおそらく冒険者だろう。



俺が食堂に入ると、みんなが授業中の教室に入ってくる遅刻した生徒に一度注目して、興味をなくしたように視線を黒板に戻すような感じで、俺を一瞥する。

この時の理由のない気不味さは異常。

が、次の瞬間にみんなギョッとして俺の方へ向き直る。


「おい、モーリス。これあんたのガキか!?」

「うわー、ちっちゃくて可愛い♡」

「でもちょっと前に比べるとだいぶデカくなっただろ」


「いや、こいつ俺の子供じゃないんだが」


さらに一同が騒然とする。



「とうとうやっちまったか、モーリス」

「ああ、アンタの極悪顔ならいつかはガキ攫ってくると思ったぜ俺は」

「可哀想な子……」


「ちげえよ! 聞けよ! こいつはこの歳で一人旅してんだよ! 他人だよ!」



「そういう設定なのか?」

「言い訳が苦しいぞモーリス」



「あー、もう! アスラ、お前から説明してやってくれ!」


さすがに俺もモーリスが可哀想になってきたので、俺の取って置きの助け舟を出すことにした。

俺は良い事を思いつき、一瞬菩薩(ぼさつ)のように微笑む。

だがその後には、俺はその場に弱々しくヘタリ込み、泣き真似をする。


「よよよ。このおじちゃんの膝の上に乗せられたんです」


そうすると、先程までの騒然としていた部屋は一瞬で静寂な空気とモーリスへの軽蔑の視線で満ちる。

モーリスの血色の良い顔が嘘のように青ざめていった。



******



そして朝食後。



「何だよモーリス、ビックリさせんなよ!」

「そういうことは先に言えよな」


みんなの誤解はすぐに解けて、安堵するモーリス。

と言うより、九死に一生を得たといった感じのモーリス。



「マジでやめてくれアスラ。心臓に悪い」

「ははは、ごめんなさい」


俺は素直に謝る。

だが、みんなと打ち解けたので、俺的には結果オーライだ。

と言ったものの、みんなに責められるモーリスを見てひとしきりにやにやさせてもらったのは事実なんだが。


「なかなか真に迫ってたぜ、ガキんちょ」

「この子面白いわね」



二人の冒険者が話しかけてきた。

今まで屋敷では味わえなかった雰囲気だった。

ゼフツの封建的な家庭環境とは大違いだ。

俺はこういう楽しく、明るい場所も好きなんだと、実感した。

のどかで静かな場所も好きだが、こんな風に人とわいわい楽しく盛り上がるのも案外楽しい。

今でも俺とモーリスが話をしている2人以外の冒険者達は、食堂の奥で朝っぱらから酒を酌み交わしている。



「こいつらはギルドの冒険者でな。依頼を終えた後はこの宿を利用してもらってる」


モーリスが二人の説明してくれる。

聞けば、この冒険者達も王都に帰る所で、俺が乗ろうと思っていた馬車で帰る予定なのだとか。


「俺はレオナルドだ。ギルドランクCの上級剣士だ」

「私はジュリア。彼とパーティを組んでるの。と言っても二人なんだけどね。彼と同じく上級剣士よ」



レオナルドと名乗る男は、爽やかな金髪の兄ちゃんで、二十代前半のナイスガイだった。ニコッと笑った時に見える歯が人懐っこい印象を与える。鎧などは付けておらず、皮のジャケットだ。私服も兼ねているのだろうか。剣士と言うだけあって、腰には立派な剣を携えている。



ジュリアと名乗ったのは、黒髪をポニーテールに結った浅黒い肌の若い女性だ。ポニーテールのテールの部分は長く、背中まで届いていて、白いタンクトップに腰にはパレオと、動きやすそうな格好だ。美人だとは思うが、カッコイイ系の方面だ。彼女も剣を腰にぶら下げているが、レオナルドとは違い二本の同じデザインの短い剣だ。双剣という奴だろうか。



そして初めて見る剣士たち。彼らが口にした上級剣士。書庫で読んだことがある。

剣士にも魔法使いと同様、初級から神級までの上達率の指標となるものがあるらしい。

人はみんな魔力を持っているが、適正魔法がないから、もしくは魔力が少なく魔法使いの道を断念したか、剣に憧れたりした者が剣士になるらしい。




「アスラっていったよな。俺達も王都に帰るんだ。良かったら一緒に来ねえか? モーリスの手間も省けるだろう」

「そうね。アスラ、一緒にいかない?」


「……はい、行きます」

「即決だな」


俺は自分の理性と今後の事を話し合い、厳正な会議の結果、前かがみで尋ねてくるジュリアの豊満な胸の前ではそれは意味を成さない事が分かった。


「大丈夫だアスラ。二人は信用できる。俺が保証する」


モーリスのお墨付きのようだ。

話す姿を見ていると、三人はとても仲が良さそうに思える。

俺が了承すると、食事も終えたことだし、俺たちは宿を出た。


ということで、俺は2人と一緒にモーリスの宿の前に停車している馬車の荷台に乗り込む。



「また何かあるときは寄ってけよ、アスラ」

「はい、ありがとうございます」


俺はモーリスと短く別れを告げる。

モーリスが荷台の乗り込み口を閉めて、手を振る。

俺も手を振り始めると、馬車が発進した。

間もなく、宿は見えなくなり、俺はレオナルドとジュリアに向き合う。


「王都までよろしくお願いします」



「ああ、こちらこそだ。つっても移動は馬車で済んじまうんだけどな」



ケラケラと何が面白いのか、笑うレオナルド。

ジュリアは苦笑いをする。


「ねえ、アスラ、何でその年で一人旅なの? 格好からすると良いとこのお坊ちゃんみたいなのに」



「ああ、確かに気になる。五歳つったよな。お前しっかりしてるがかなり幼いぞ」


「そうですね。お互いのことを知るためにも、話しておきましょうか」



俺は別に隠す必要はないと判断したので、包み隠さずにすべて話した。



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