第六十五話 テスト その一
感想等すべて拝読させて頂いています。
誤字脱字のご指摘、感想も、大変感謝しております。
いつもどうもありがとうございます。
〈ノア=キーリスコール視点〉
「ソーニア、長期休暇だからってたるみすぎだぞ。この前も連日朝帰りだったそうじゃないか」
「いいじゃない。つい最近まで平民だったんだから、平民らしくて」
「今はもう貧乏生活じゃないんだ。貴族としてきちんと振る舞えよ」
娘、ソーニア=キーリスコールは最近怠惰である。
キーリスコール家はつい数年前まで平民の身分だった。しかし、私が発明した『精霊還元装置』を、フォンタリウス家が高く評価したおかげで、財も増え、貴族にのし上がることができた。
しかし解放軍が解散したという知らせとともに、俺の耳に入ったのは、解放軍の幹部に、フォンタリウス家の当主が含まれていたことだ。
つまり、『精霊還元装置』の話は反故になる。
国にも顔が効くフォンタリウス家が支えになってくれると思っていた矢先の出来事だ。
新顔貴族として、これからどう身の振り方をするか、目下思案中だった。
娘の言うように、本当に平民に戻されるかもしれない。
それだけならまだ良い。
フォンタリウス家ほど力のある貴族に力添えしてもらい、他の貴族をゴボウ抜きし、一気にフォンタリウス家並みの貴族にのし上がってしまったのだ。
他の貴族が良い顔をするわけもなく、もっと言えば、解放軍と繋がっていたフォンタリウス家当主、それと関係のあったウチまで解放軍とグルだと叩かれる可能性もある。
そうなれば平民どころじゃ済まない。
ウチは屋敷まで建ててしまった。
いつ他の貴族の息のかかった者に取り壊されるか、もしくは家族に危険が及ぶか、わかったもんじゃない。
警備の増援をギルドに依頼したのが記憶に新しい。
「はぁ……」
何度目かわからない溜息をこぼした。
ここ最近の癖になりつつあると言ってもいい。
娘には平気な顔をしているものの、いつ我がキーリスコール家を取り潰そうと考える輩が襲ってくるか、気が気でないというのが、正直なところだ。
また溜息をつこうとしたとき、召し使いに呼ばれた。
「ノア様、ギルドに出していた依頼を受けたとおっしゃる方が、いらしています」
数少ない召し使いの一人、サーシャだ。
このメイドの他に、執事として経験豊富なロブという男もいる。
しかし二人だけでは心許ないというものだ。
そこでギルドの対応が早いのは、実に助かった。寄付金を引き上げておこうとも思うほどだ。
まあ報酬は貴族らしく高額にしておいたし、依頼ランクも少し高めに設定したのだ。金に困るベテラン冒険者が依頼を見つけるのに、そう時間はかかるまい。
「今どこにいる?」
「応接間にお通ししています」
「わかった。ロブも呼べ」
「かしこまりました」
綺麗にお辞儀するサーシャ。
さて、どんなベテラン冒険者か。
筋骨隆々な男か。それとも経験豊富な魔法使いか。はたまた防衛作戦が得意な策士か。
期待が胸に膨らんだ。
そして、俺は応接間に入り、そこに見える三人組に度肝を抜かれた。
「ノア=キーリスコール様ですね。本日から警備を担当します、アスラと申します。この二人は私の助手です」
「こ、子供じゃないかッ!」
ソーニアと年の変わらないガキが、応接間のソファに腰掛けていた。
助手と呼ばれる二人の女も、まだ若そうだ。見るからに若すぎる。それに警備の仕事だというのに、誰一人として武装していない。軽装なんてものじゃない。私服だ。どこぞの商業区にショッピングを楽しみに行くかのような恰好なのだ。
なんだ、今のギルドは貴族の警備に子供を当たらせるようになってしまったのか。
そんなに無能になってしまったというのか!
「確かにAランクで依頼を設定したはずだ! 子供が受けられる依頼ではない!」
と、先程アスラと名乗った少年が立ちあがり、綺麗に礼をした。
「確かに、Aランクに設定されていました。ですが私もAランカーなのです。ギルドカードをご覧になりますか?」
「なッ……なにぃ……?」
こんなの、詐欺じゃないか!?
確かに提示されたギルドカードにはAランクの文字がある。
しかし、こんなの誰も予想しないだろう? 子供が依頼を受ける可能性があるだなどと。
逆に子供の実力を疑う材料や可能性など、いくらでも思い浮かぶ。
まずはAランクだ。
上位ランカーのパーティに参加さえすれば、子供でもランクは上がることができる。
もっと言えば上位ランカーからギルドカードを奪って偽造している可能性も否めない。
それにギルドもギルドだ。
俺が依頼したギルドは都市ウィラメッカスの冒険者ギルドだ。娘のソーニアの通う魔法学園のある都市でもある。魔法学園にも、冒険者ギルドにも、多額の寄付をしてきた。
なのにギルドの職員ときたら、ガキの冒険者の猿真似も見抜けないようなボンクラなのか?
俺は茫然自失とした。
しかしこれは書面上だけは正式に手続きを行って送り込まれたガキなのだ。よりタチが悪い。
上手いこと言いくるめ、ガキをギルドに追い返した後、ギルド長に文句をつけてやる。確かあそこのギルド長もフォンタリウス家の者だったはず。
今思えば、この国の至る所の重要機関には、必ずフォンタリウスの者の名前がある。それほど、フォンタリウスは国の次に、この国を牛耳っていたということだ。
今更ながらそれを実感し、悪寒が走る。しかし、そのフォンタリウスも終わりだ。この、キーリスコール家が、これからは国の貴族のトップとして君臨する時代が来る。
これまで見下してきた貴族の連中を見返し、それを妬んで妨害する卑しい貴族を追い返してやるのだ、これまでも、これからも。
そのためには、目の前のガキをとっとと追い返し、ギルドに目にモノ見せて、より腕の立つベテラン冒険者を呼ぶ必要がある。
「はぁ……」
落胆の溜息がでた。この際だ。仕方ない。貴族として、せめて振舞おう。
「アスラ……君だったかな? 俺がギルドに依頼したのは屋敷の警備だ。それに、警備に就くものには屋敷の家事も任せるつもりなんだよ。君に勤まるとは、あまり思えない。今引き揚げるのなら、報酬金はここで支払おう。どうかな?」
俺は意地悪くも、ギルドに提示した依頼内容にないような、屋敷の家事などと架空の仕事も足して、何とか目の前の子供に立ち去ってもらおうと、大人の悪知恵が働いた。
が、この子供はあろうことか渋った。
「いやですよご主人。今僕たちが欲しているのは金じゃない。仕事です」
と朗らかに笑う少年。
俺は自分の表情が固くなるのがわかった。
しかしここは俺にも矜持というものがある。引き下がるのはキーリスコールの名に恥じるというものだ。
「なっ、なんなら、言い値で支払おうっ」
はっはっは、言ってやった。
しかしこれで引き下がるようなら、先の言葉に反することになる。そういうところで意固地なのが、また子供だと言うのだ。
「いっ、言い値っ!?」
しかし少年は明らかに揺らいだ。
しかも隣の助手と言われていた赤毛を二つに分けて結った少女に小突かれる始末だ。
「ぅおっほんっ!」
そしてあからさまな、わざとらしい咳払い。
「な、何度もくどいようですが、わたくしどもが欲しているのは……しっ、仕事なのですっ」
何とか踏み止まる少年。
なんか……子供とか大人とか言うのがバカらしくなるくらい、欲と理性がせめぎ合っているな……。
と、そこで。
「良いではありませんか」
応接間に現れたのは、執事のロブ。
ピンと伸びた長身に、白髪をオールバックにした、黒い燕尾服の男。
小さな丸眼鏡の奥に佇む瞳は、しかし鋭い。
「この少年たちは動機はどうであれ、正規の手続きを経てここまで来ております。いかがですかノア様。彼らにチャンスを与えては」
ロブがこう言うのだ。
彼は元高ランクの冒険者。そして家事仕事の腕も確かだ。警護や執事としての技術、そして経験は申し分ない。キーリスコールが貴族になった当初から世話になっている。
それに、もう子供であることを責めるのが、馬鹿馬鹿しくなって来たところだ。
ロブに任せて問題ないだろう。
「ロブがそう言うのなら、彼らは君に任せる。いいか?」
俺がそう言うと、ロブは快くそれを受けた。
「もちろんでございます。新人を鍛えるのはサーシャ以来。腕が鳴りますぞ」
ロブも人が悪い。
今の家事警備完璧なメイドとなったサーシャが、ロブに仕事を叩き込まれていた時分には血反吐を吐くような鍛錬を積んでいたのだ。
それをこの少年たちにも……?
まだ金だけもらって引き下がっていれば良いものを。
こういう手口で少年たちを退けるというのは、どうも大人気ない気がせんでもない。
俺は少年たちに同情を向けてから、応接間を出た。
何も知らずにニコニコしている少年が、さらに哀れを誘った。
◇◆◇
〈アスラ視点〉
ロイアと別れた後、俺とアルタイル、クシャトリアは、ギルドに向かった。
解放軍の一件で恩を売ってやったギルドに、体の良いキーリスコール家に潜り込む口実をムリクリ作ってもらうためだ。
はてさて、無理難題をどれほど押し付けるとギルド長であるミカルドは根をあげるのやら。
まるでクリスマスにプレゼントをサンタに頼む子供になった気分だ。ワクワクする。
これぞ本物のメリクリ。
ミカルドはムリクリ口実をでっち上げて立場を悪くするのが末路だ。
そしてメリクリとムリクリを掛け合わせようとする俺もまた、ムリクリ。
などと冗談を並べては、今後の方針考案を後回しにする。
そんな都合良く行くか馬鹿者。
と思っていたのも束の間で。
「また来たの、あなた。しかも一人増えてる」
ミカルドは、クシャトリアを新たに率いた俺がギルドを訪れたのを見て、露骨にゲンナリする。
「ああ、こんなことを腹割って話せるのはアンタだけだ」
「ギルド長よ」
「ギルド長っ!」
「調子の良いボウヤだこと。で、用ってのは?」
「キーリスコール家に潜り込みたい。合法的に」
「あなた何をする気? 盗み?」
「まさか。ゼミールからの依頼だよ。個人的な」
「前に課題とか何とか言ってたんじゃないの?」
「そう解釈することにしたんだ」
「はぁ、まあいいわ」
ミカルドは頭を抱えて溜息をつく代わりに、行動に出てくれた。
「ヴィトナ。キーリスコールの依頼があったわね。出してきて」
ミカルドの秘書的な存在であるヴィトナに指示をした。
ヴィトナが持ってきたのは、一つの依頼書。
どうやらキーリスコールから提出されたもののようだ。
「これですね」
ヴィトナはすっと俺に手渡す。
「……屋敷の警備?」
ざっと依頼内容を読むと、そういうことのようだ。
「そう。あなたたちが来るのを見計らっていたかのように、昨日に提出された依頼よ」
「昨日?」
俺は思わずミカルドに聞き返した。
あまりにも出来すぎている。
俺たちが課題を一つ終え、キーリスコール家問題に取り掛かろうとした時に、まるでキーリスコールの屋敷に迎え入れるかのようなタイミングで出された依頼。
と、そこでゼミールの話と繋がった。
キーリスコール家の長女ソーニアと、その祖父にあたるノノの不仲の解消を、学園に依頼したのは、ソーニアの父、ノアであると、ゼミールは俺に言った。
であるからして、この依頼内容とタイミング的に、明らかに対外的に何も問題のない屋敷への潜入を意識してのことだ。
これが道しるべだったのだ。
「じゃあ、これを受けるよ」
「わかったわ。一応形だけだけど、手続きはお願いね」
ミカルドの指示をもらい、ヴィトナに依頼受注の手続きをしてもらった。
ついでにクワトロとゼクスにも挨拶をする。
クワトロは人当たりの良さから受付で。
ゼクスは手先の器用さ、物作りに長けていることから、ギルド建物の設備などのメンテナンス及び改修を担当しているらしい。
「頑張ってね、アスラ」
「また寄ってくださいね」
クワトロもゼクスも、かつての暗い影はない。笑顔だ。
それを見て一層気を引き締めて、俺たちはキーリスコールの屋敷に向かった。
のだが。
キーリスコール家の屋敷は、都市ウィラメッカスの郊外付近にあった。
森の中にポツンと建ったような家。
万が一を考え、アルタイルをアル、クシャトリアをクーシャと偽名……うぉっほん、あだ名呼びすることとした。
準備万端。
しかし、そこで目の当たりにしたのがこれだ。
「こ、子供じゃないかッ!」
キーリスコール家の当主であるノア=キーリスコールの驚愕の表情。
あれ?
驚いてるヤツ? これ。
「確かにAランクで依頼を設定したはずだ! 子供が受けられる依頼ではない!」
これってどうも演技には見えないんだよな。
内部にも俺たちが入り込むことを、渋々入れてやったという風に誤魔化す必要があるかないかというと、まぁない。
屋敷内部に反発分子がいるために誤魔化しているのかとも思ったが、それなら俺たちとこんなに堂々と対面したりはしないはず。
そして新たに現れたロブという執事に丸投げしたあたりから、これは確実に、キーリスコール家の当主ノア本人が、魔法学園に娘ソーニアと父ノノの不仲の解消を依頼したという線は消えた。
でも学園長本人が、依頼人はノアだと言ってたはずなのに。
学園長がそんなしょうもない嘘つく?
俺を乗せるために、そんな嘘つく?
もしそうなら、コレ……ただただ大嘘だから。
ギルドに屋敷警備の依頼が届いていたのも、たまたまだ絶対コレ。
偶然とは到底思えない中、そういった価値観を潜り抜けて現実になった偶然だコレ。
警備の依頼がタイミング見計らったようにあったもんだから、ノアが父娘の不仲解消の依頼人だってことを信じて疑わなかったけど、これ全部たまたま上手くいってるだけだ……。
そう考えると、俺はとんでもない綱渡りしていたことに気付く。
「君、名前は?」
ノアが応接間から出てから残された俺に、ロブと呼ばれていた執事は尋ねた。
「あ、アスラ……」
俺は執事に八つ当たりした。敵意剥き出しで睨んでしまったのだ。
あれもこれも全部ゼミールのせいだ。
あいつ学園長のくせに下らない嘘つきやがって。
帰ったら思いっきり視姦してやる。
「私はロブという。よろしく。まあしかし、私には良いが、その目はあまり旦那様に見せない方がいいな。気迫は買うが」
ロブが、口髭をいじりながら言う。
あったりめーだ。
依頼主に、んな敵意剥き出しで睨むか。
もっとも、父娘不仲解消の依頼人という話は架空のものだったがな。
残ったのは警備の仕事と、あとは家事。
「そこでだ。旦那様の欲する警備ができるか、一つ私がテストしよう。いいかな? アスラ君」
「ええいいですよ。むしゃくしゃしていたところです」
ほんの短い間とは言え、上司だ。可能な限りゴマをすろう……もとい、可能な限り媚を……じゃなくて、仲良くしよう。
俺の性格ってこんなにもねじ曲がっていたのだろうかと、ふと落ち込む今日この頃。
「それは何より。テストと言っても簡単なものだ。気負わなくてもいい」
ロブは笑顔で、説明に入った。
入社面接の実技版だと思えばいい。
「この屋敷にはメイドが一人だけいてね。サーシャというのだけど、彼女は多少腕に覚えがあるようなんだ。そこでアスラ君には、サーシャと戦ってもらいたいんだ」
「ぶっ! なんで女と!? ……なんですか!」
思わず吹いた。
そして思わず敬語を忘れそうになった。
それほど驚いたのだ。
どこの世界にメイドと冒険者戦わせる執事がいるんだ。
「やってみればわかるさ。ああ、ちょうどいいところに。サーシャ、彼はアスラ君。屋敷の警備に就くかどうかわからないけど、志望はしているん……だよね?」
明らかに俺を見くびっているような話し方だ。
バカにされている。
ロブの話の途中で、銀のトレイを持ったメイド服の女性が応接間を通りかかった。
年の頃は二十代前半。
ロブは、彼女がメイドのサーシャだと紹介した。
サーシャは、白と黒のメイド服に、色の薄い茶髪の髪を肩まで伸ばした、線の細い女性だった。
メイドと言えば明るい性格かと思えば、とても無愛想で、表情がないとも言える。
「してますよ。そんなことどうでもいい。ちゃっちゃと終わらせちゃいましょう」
さらに苛立たしげな声が自分から出た。
「あの、恐縮ですが、申し上げます。うちのアスラとやり合うには、些か彼女が不利かと」
と、ここでアルタイルが進言。
「君は?」
「アルと申します」
さっそく偽名の効果発揮。
アルタイルが悠々と答える。
「そうか、アル君。そう思う理由もお聞かせ願えないかな?」
ロブはあくまで低姿勢。
しかし眼光の鋭さは衰えない。
「マス……アスラは身内贔屓に聞こえるかも知れませんが、とても強いです。冒険者ランクもA。サーシャ様が敵うかどうか……」
いや、俺自身口を挟まず何も言わないでいるし、そう言ってもらえて嬉しいんだけど、ロブとサーシャって人の気を逆撫でするのだけはやめてね?
一応雇い主だから。
「ははは、それは頼もしいね。でも今は判官贔屓にしか聞こえないな。実力を持って示してくれ。サーシャも、頼んだよ」
「……」
「はい」
アルタイルは、これ以上説明しても無駄だな、と言いたげな苦笑いを俺に向けてくる。
俺は、雇い主の前で、くれぐれもやめてくれ、と言いたげな苦笑いで返す。
そしてサーシャは恭しく返事をした。
ロブが屋敷の外に行こうと一同を促し、俺たちは屋敷から百メートルほど離れた森の中にやってきた。
その際に、好きな武器を一つ選ぶようにロブに言われ、俺は屋敷の武器庫にある鎖鎌を一つ借りた。
これを使って戦えということだろうか。
「さっきも言った通り、サーシャと戦ってもらう。言い忘れていたが、魔法の使用はナシだ。もし警備についている時に、屋敷内に野盗が押し入った場合に魔法で屋敷を破壊されては堪らないからね。私の目が届くところなら、どこでもいい。この環境を使って相手を気絶させるか、参ったと言わせること。Aランカーなら、それくらいできるだろう?」
ロブは優しい老人のお手本のような笑顔を浮かべる。が、話の内容は穏やかなものじゃない。
アルタイルはああ言ったが、実際サーシャの実力が俺を上回っている可能性もある。
俺は鎖鎌の、鎌の柄の部分を持ち、分銅ももう片方の手に構える。鎖鎌自体は鉄製で、業物でも何でもなく、ただの訓練用と思われるものだ。
対してサーシャも、訓練用のククリナイフを構える。
武器の扱いは……相当手慣れていそうだ……、あのサーシャって女。
油断大敵。緊張感が増す。
「準備はできたようだね。それでは、初めてもらおうかな」
ロブが短く、始め、と合図する。




