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第六十三話 一難去ってまた一難

更新を待って頂いていた方も、そうでない方も、大変長い期間、更新お待たせし、すみません。

こうした形で不定期になるかとは思いますが、また更新させて頂こうと思います。


なんか前回の更新時もそんなこと言っていたような気がしないでもないですが、私自身、この作品を続けたいと思っておりますので、今後とも、期待して頂いている方も、そうでない方も、どうぞ宜しくお願い致します。




〈アスラ視点〉


「だーれが恩人だ。大したことしてないだろ」


俺はクワトロとゼクスの頭を小突いた。

どうやらミレディと話をしていたらしい。それよりミレディのこの服はなんだ。


「アスラ……」



ミレディの無表情は、もはや懐かしく感じてしまうほど、彼女の定着したイメージとなった。


「悪い。遅くなって」



素直に頭を下げた。

いくら騎士隊の、ギルドの都合で働いていたとは言え、報告もなしに行方をくらましたのは俺に違いない。


「何してたの?」



怒っているのかどうなのか。ミレディの感情は未だに読めない。





「騎士隊の手伝い」


間違ってはいない。


「それって解放軍と関係ある?」

「関係はあった。ギルドランクがAだから、手伝うよう招集されたんだ。仕事は情報収集が主だったし」


ミレディはしばらく沈黙し。


「ふぅん……」


多くは聞いてこなかった。



「ミレディは何してたんだよ? そんな格好して」


俺は今一度、ミレディの服装を頭から爪先まで、ざっと見た。


「なに……」


むず痒そうに俺の視線から顔をそらすミレディ。

会って初めて表情に変化が出た。


「別に……ここの酒場で働いてただけ……もうやめる」


「「ええーッ⁉︎ 辞めちゃうんですか⁉︎」」



近くにいたクワトロとゼクスが声を揃えて目を丸める?


「今、新人の私たちの面倒見てくれるって言われて話掛けたんですけど!」

「話が違いますよぉ……」


ついにクワトロが持ち前のクレーム並べをする。ゼクスも項垂れた。



そんなことになっていたのか。

俺が解放軍となんやかんやしている間、ミレディとロイアはギルドの酒場で働きつつ、俺を待機。

そこで、俺の仕事が終わり、解放軍はうまい具合に潰れ、行き場をなくしたクワトロとゼクスが、俺と共にギルドに帰り、働き口を手に入れることができた。


が、そこで、俺が騎士隊の依頼を完了し、帰ってきたことにより、ミレディの待機期間も満了。

解放軍からクワトロとゼクスを逃した俺が、クワトロとゼクスに仕事を教えるはずのミレディを奪ってしまったのだ。


「そういうことだから」



ミレディが無表情に、自分を優先する。


なんか……クワトロとゼクスの出鼻をくじいてしまった感じになった。


「社会は甘くないんだよ」


「まあ……全部面倒見ろとは言わないけどさ……」

「予想外の展開でしたね」


俺の冷たい発言に、何も言い返して来ず、重い表情をするクワトロとゼクス。



そうこうしているうちに、ミレディの姿は消えていた。ギルドの酒場内を見渡すと、すぐに彼女の姿は見つけられた。

なぜなら、ちょっとした騒ぎになっていたからだ。


「ヴィトナさん、私とロイア、現時点をもって、辞めさせてもらいます」


「⁉︎」


ヴィトナが一時、フリーズする。


「辞めさせてもらいますんで」


「おいおい、なんでだよ、ミレディちゃん」

「ロイアちゃんも、せっかく仕事が板に付いてきたってのによ」

「もうセクハラ発言しねーからよ」


酒場に居合わせた冒険者たちが、ミレディたちを取り囲んで、あーだこーだと二人を引き止める。


別にミレディもロイアも、俺の女だと言うつもりはないが、俺が親しく見知っている女子にセクハラはよせと思ったり思わなかったりの俺。


クワトロとゼクスも、不安げにその様子を眺める。


「ミレディさん、ロイアさん、少しの間でいいから……人手が……なぁんて言うか、少ないっていうか……」


苦笑いでミレディとロイアに詰め寄るヴィトナ。

彼女は俺、延いてはミレディとロイアの事情を知っている数少ないギルドの人間だ。

これ以上ギルドとして引き止める理由はないが、ギルドの受付嬢の事情を背景に、今ヴィトナは引き止めているようだ。


ヴィトナの葛藤も他所に、ロイアがミレディと相談を始める。


「……編入生くん、戻ったんだね」

「うん……」

「ミレディ、ここでまだ働きたいの?」

「うーん……」

「ここは名残惜しいけど、今は編入生くんといたいんだね……?」



「う……うん……」



「わかった」


ロイアがミレディに耳打ちしているのが見える。しかし、ここからでは何を話しているのかは、聞こえなかった。


が、間もなくして、ミレディはロイアを引き連れて戻ってくる。


「話はついたのか?」


「たまに手伝いに来るって言って来た」


俺が聞くと、ロイアがそう答えた。


「一旦、学園に戻ろうか」


ロイアは話を続けた。

しかし、それには俺も賛成だった。


今回の学園から提示された課題、そして課題をこなす上で、ギルド長がミカルドである冒険者ギルドの管理下で動き、事は進み、およそミカルドの期待通りの結果となった。


そして、その奉仕活動を言い渡したのは、ミレディの母、ゼミールというじゃないか。

ゼミールはミカルドと関わりが深い。


できすぎているのだ。

何か、作為的なものを感じる、この一件。

情報を整理し、態勢を立て直したい。


そして今後の課題である、学園生徒のソーニアと、その祖父であるノノとの仲を持ち、仲直りさせるという、全く学園も地域活性化も関係のない課題。


これも、何か仕組まれているのだと、誰だって思う。目標が明確過ぎる。何か企みをはらむ課題内容だと嫌でも感じた。

もしくは、そう感じさせて、この課題には裏があると俺たちに思わせる目的もあるのかもしれないと、深読みしてみる。


そして俺たちに、ゼミールは何かを求めているのだ。


闇が深いぞ、こりゃあ。



課題の一つをギルドへの貢献と設定し、それを紆余曲折がありながらも、解放軍の壊滅で幕を閉じることができた。

ギルドや騎士隊に恩を売れたことだし、俺的には良しとしようじゃないか。




◇◆◇




学園に戻ると、長期休暇があと半分も残っていないことに気付いた。


休暇中も学園の職員は働いているようで、ちらほら職員を見かける。


生徒のほとんどがイイトコの出だから、必然的に生徒のほとんどが長期休暇中は帰省しており、全くと言っていいほど、生徒と顔を合わせることはなかった。



学園に備え付けられている中庭に足を運び、今後の方針を考える。


中庭の芝生にある、パラソル付きの丸テーブルに、アルタイル、ミレディ、ロイアと腰を掛ける。


「で? 編入生くん」


「なんだ」


「その赤毛の子はなに?」


「これは……」


あちゃー、なんと答えれば良いものか。

人工精霊と答えれば、俺が解放軍解散の当事者であることまで語る必要も出てくるし、そうなれば余計な混乱を招きかねない。


いや、しかしだ。

もう解放軍が壊滅する瞬間をこの目で見たのだから、解放軍の秘密や人工精霊のことを話しても、解放軍に命を狙われることはない。


むしろ、今話しておいた方が、今後の対策も立つというものだ。


「コイツは……人工精霊だ」


「人工精霊?」

「人工精霊……」


ロイアとミレディは、違った反応を見せた。

ロイアは初耳と言った様子。

ミレディは、人工精霊を知った様子だった。


「ミレディ、知っているのか?」


「……うん……お父様が、研究してたこと……成功していただなんて……」


ミレディは、普段の無表情が珍しく見られず、思い悩んだ表情をして言った。


……あぁっ!

しまった……!


人工精霊はゼフツが解放軍の研究所で作ったものだ。アルタイルが俺についているということは、俺がゼフツと一悶着あったのだと考えるのが妥当だろう。


そして解放軍の壊滅と、時を同じくして俺がギルドの依頼を終えて戻って来た。


今回の一件で、俺とゼフツを結びつけるのは、容易なはず。

まずい、これはまずい。

いや、いずれ知ることになるだろうが、今ここでミレディに知られるのは困る。


なんてアホなことをしたんだ俺は……考えなしの使えない脳みそめ。

いっそ死んで貝になりたい。


「お父様と……何かあった?」



ホラ見たことか。案の定だ。勘の良いミレディ。すぐにアルタイルが人工精霊だという事実を通して、ゼフツと俺の関係を探る。


きっとこの焦りは、アルタイルも気がついているはず。

アルタイルに視線を忍ばせると、目があった。


だけでなく、アルタイルが、テーブルの下で何やら俺に合図をした、その瞬間。



「ミレディさん、あなたのお父上は解放軍の幹部でした」


「「「え?」」」


俺も含め、三人が素っ頓狂な声を上げる。

俺は主に、今言っちゃうの? の「え?」の意味。二人は驚きの反応であると思われる。


俺もある意味驚いた。どストレートに真実を語るアルタイル。


「うそ……そんなの、聞いてない」


ミレディは珍しく動揺を表情にする。

が、アルタイルは話をやめない。


「聞かされていないだけです」


「お、おいっ」


辛辣な物言いに、俺もアルタイルを止めに入い……いや、アルタイルは俺が止めに入ることなど、お見通しのはず。彼女はそういう能力の人工精霊なのだから。


じゃあ、なぜ……。


「アスラ……」


ああ……。


俺がムキになって止めに入る。それが、ミレディにとっては、父親が国のテロ集団、解放軍の幹部だったという残酷な真実の、この上ない証明。


アルタイルは、俺をコピーし、俺の記憶の中のミレディを、今と照らし合わせ、最善の選択ができる。


残酷ではあるが……。



「ご、ごめん……」






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