間話 2人の新米
〈レオナルド視点〉
解放軍という言葉を聞いたことがあるだろうか。
……無いよな。ごめん。
これから、その事について話そうと思う。
前にもあったが、俺の家族は山賊に襲われて死んだ。
ああ、いいんだ。
別に可哀想だなとか思ってもらおうとしてする話じゃない。
だから、その哀れな物を見るような目はやめろ。
まあいい。
話が逸れた。
それから残された俺とジュリア。
剣術を磨いたんだけど、当時子供だった俺達だけで生活が出来たわけじゃない。ましてや剣術を学ぶ余裕などない。
当然、たくさんの人の力を借りて、その人達のお陰でここまで育ってこれた。
そういう意味でも、やはりアスラは凄いと思う。
筆舌に尽くしがたい強い意思があいつにはあると思った。
俺とジュリアの住んでいたいた村は、はっきり言って貧しかった。
そこで俺達の村の村長は王都で子供の保護してくれる機関にツテがあるとのことで、それからの俺とジュリアは王都で暮らす事に決まった。
その村長ってのは、こりゃまた良い人で、でも実はこのエアスリル王国の生まれじゃない。
隣国のレシデンシアって王国の出らしい。
その俺達を保護してくれる機関のツテって言うのは、どうやらそのレシデンシアって国に住んでいた時に知り合った人との繋がりのようだ。
村長と繋がりがある人は、もちろんレシデンシア出身。
でもこのエアスリルのとある公爵家の人を嫁にもらったとかで、今はエアスリルの公爵身分なのだとか。
その辺の仕組みについては、上手く説明できないんだが、そんな感じ。
あ、今俺のこと頭弱いって思った奴、表出ろ。
俺の四の段までの華麗な九九を見せてやる。
とまあ、そんな感じで俺達を保護してくれた人は優しかったという、めでたしめでたしな結末。
だと良かったんだが。
解放軍ってのはここから大きくなり始めたんだ。
俺達は幼いうちから、その預け先の人に剣術を教わったり、ギルドの依頼を受けさせてもらったりと、生きる力を教わった。
それはかなり厳しいものだったけど、俺は何とかやり遂げた。
その頃には、俺は確かに強くなったと実感していた。
仕事の範疇じゃないだろうに、快くいろんな事を教えてくれた。
そこは保護、と言うか施設に近い所だった。
暮らすには不自由はなかったし、もしかすると貧しい農家の子供より良い暮らしが出来ているかも知れない。
だからその施設の方針である厳しい特訓の生活は辛かったが、納得はしていた。
ただ、剣術の特訓と厳しいギルドの依頼があるだけ、それだけ。
そしてその施設では友達も作ることができた。
みんな俺やジュリアと同年代だった。
俺とジュリアと同じく、厳しい特訓や依頼を乗り越えてきた仲間だ。
そこでできた友達はみんな言っていた。
『大きくなったらゼフツさんの役に立つ』
とか。
『将来ゼフツさんと一緒に同じ夢を追う』
とか。
何かとゼフツって名前を出していた。
そういやゼフツって、この施設の人だっけ。
村長と繋がっていたレシデンシア出身の。
『レオナルドとジュリアは強いね。良い幹部を目指すんだよ』
幹部?
何のことだ?
幼い俺とジュリアにはわからなかった。
でも今になって言えることだ。
本当について行って良かったんだろうか。
そのゼフツ=フォンタリウスという男に。
これは本当に俺達の心からの感謝の念なのだろうか。
恩返しなのだろうか。
それとも何か強迫観念に似たものなのだろうか。
わからない……。
今も、その先の俺とジュリアも、それの答えは見つからないままだ。
それは俺とジュリアがここまで生きてこれた経緯なのか、これから俺達の首を絞める縄となるのか、今はまだ、誰も知らない。




