『レベリングデートとは?』
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ノリでRTAダンジョン攻略に挑むことになった。
挑戦するのはパラディンのジョブチェンダンジョンで、ジョブによってエンカウントするモンスターやボスが変わるらしい。
モンクのダンジョンでは状態異常攻撃主体のモンスターが多かったが、パラディンの場合は群れで行動するモンスターが現れるらしい。
主に出てくるのはここに来る途中にエンカウントしたサンドウルフや、初登場のミイラナイト。 他にもレッサーヴァンパイアやレッサーデーモンなどが出没する。 名前は物騒だが、眷属や仲間を召喚するタイプの魔物で、数は非常に多いが一体一体はさほど強くない。
ジョブチェンダンジョンに出没するモンスターはそのジョブと相性がいいため、このダンジョンはパラディンがいると攻略しやすくなる。 つまりパラディンと対人相性が悪いアサシンやレンジャーは不向きなダンジョンとなっている。
モンクのダンジョンも名目上はモンクがいると楽に攻略できると謳ってはいたが、実際問題推奨ジョブはレンジャーやウィザードだ。
なんせ二階層にいるモンスターは空を飛んでいるのだから。 詐欺である。
「さてさてみなさん、解説が終了したところで階段も登り終えますが、パラディンのジョブクエで出てくるボスって強いですか?」
『解説とは?』
『お前さっきから無言だっただろうがw』
『コプスネクロマンサーじゃなかったっけ?』
とまあ脳内で勝手に整理してた内容を踏まえた上で、実際問題不安要素も多いのである。
モンクのジョブチェンダンジョンで出てきたレインボースコーピオンは異常に強かった、つまりこのパラディンのダンジョンでも同じことが起きても不思議ではない。
「やっぱパラディンのジョブクエに出てくるボスもくそ強いんすかね?」
『まあ十中八九強いだろうな』
『へいへいびびってんのか?』
『念の為モンクの相性的にメメジェット氏かサナたん呼びに行った方がいいかもな』
視聴者もボスの強さを気にしているようで、RTAを始めると意気込んだはいいもののそれで死んでしまっては元も子もない。 仕方がないから命は大事にしながらダンジョンに挑むことにしよう。
「まあ、一回攻略を挑んでみてから決めてもいいかもしれないっすよね。 もしボスが強かったら即撤収すればどうにかなりますし!」
「お困りなのかにゃ? ナイルくん!」
方針が決まりそうになった瞬間、背後から聞いたことがあるような声が響く。 俺は驚きながら振り返ると、
「え? なんでサナさんがここに?」
「なんでも何も、理由は一つしか無いにゃ」
「なるほど、そう言うことですか」
おそらくサナさん、メメジェットさんと並んで未だにレベル十。 今後のことも考え、俺達の足を引っ張らないようこっそり鍛えようとしていたのか。
なんて真面目な子なんだろうか
「ナイルくんをつけてきたのにゃ!」
前言撤回。 もしかしたらこの猫耳女、地雷系ヒロインなのかもしれない。
「ストーカーですか?」
「そうとも言うかもしれないにゃ!」
「こいつなんで堂々としてんだよ……一応、理由を聞いても?」
「やることがなくて暇だったのにゃ!」
『サナちゃんからの好感度って、始めから異常に高いからな。 理由は知らんが』
『猫は気分屋だから何を考えてるかわからん』
『そういうところが可愛いんじゃないか!』
元気よく「暇だったからストーカーしました!」 発言をされても返答に困ってしまう。
しかしまあ、丁度いいと言ったら丁度いいタイミングだったかもしれない。
「俺今からレベリングしようとしてますけど、一緒に来ます?」
「ふっふっふ、水臭いにゃあナイルくん。 あたしたち同期じゃないか、そのくらい喜んで手伝ってあげるにゃ!」
「じゃあ行きましょうか、くれぐれもみんなには内緒にしてくださいね!」
後々レベリングのことを知られたらみんなぶつくさ文句をいいそうだからな。 特にラーザさんとかラーザさんとかラーザさんとか。
「なるほどなるほど、これはいわゆるレベリングデートだにゃ!」
……こいつは何を言っているのだろうか?
『レベリングデートとは?』
『急募、説明求む』
『サナたんとデートとは、けしからん!(困惑)』
とまあ、何を考えているかわからないサナさんの発言をいちいち深読みしても埒が明かないため、俺達は自然な流れでダンジョン内へと向かっていった。
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「ちっくしょー! 六分三十二秒! めっちゃ時間くってるよ! サナさんが途中ではぐれるから!」
「無茶言わないで欲しいにゃ! なんで君はそんなに急いでるのか、まずはしっかりと説明しろにゃ!」
「RTAは競技なんですよ! 一分一秒を争う過酷な競技なんですよ!」
「それを始めからちゃんと説明しろにゃ!」
どうやらRTAの意味はわかっているらしい、なぜに?
「ちなみにサナさん、RTAの意味ってちゃんと知ってますか?」
「できるだけ短時間でダンジョン攻略したいって意味じゃないのかにゃ?」
「うん、まあだいたい合ってますけど、なんでこんな単語知ってるんです?」
俺の問いかけに、しばらく視線を斜め上に持ち上げて考え込むサナさん。
「うーん、なんというか、いつの間にか理解できるようになった? のかにゃ? なんだか他の国から来た傭兵仲間とか、ナイルくんやメメちゃんも使ってるし、自然に学習したのかにゃ?」
『ここって異世界のはずなんだが?』
『そもそもなんでナイルは転生したのかが謎』
『自我が芽生えたタイミングで何らかのバグが発生した?』
『でもサラーマさん、保冷剤って単語にはなんだそれって言ってたぞ?』
『バフって単語には普通に反応したがなw』
『暇な時に実験することを推奨する』
なんだろう、違和感は残ってしまう回答だがまあいい。 今はいかにしてタイムを縮めるかに思考を回す。
「いいですかサナさん。 こういう場合、俺の攻略法はただひたすら正面の道に行きまくると決めてしまうんです!」
「正面が行き止まりだったらどうするにゃ?」
「そういう時は一貫して右回り!」
「なんでそんなことを決めるのかにゃ?」
「迷ってる時間が無駄だからに決まっているでしょ?」
俺の場合、RTAをする際こういったランダム変形ダンジョンは、行動パターンを一貫させる方法を取っている。 やり方は人それぞれだから自分が一番やりやすく、一番しっくり来る方法を取れば迷うという余計なタイムロスを防げると考えた。 異論は……あるよね、まあやり方って人それぞれだから温かい目で見守って下さい。
「それと、いちいち広間の敵は全部相手しなくていいですから! ラーザさんはいないんだし!」
「でもモンクのダンジョンの時は、モンスター見つけるたびに眼の色変えてたにゃ」
「それは討伐数で競う競技だったからです。 今回の競技はタイムアタック! 経路上にいる邪魔な敵をぶっ飛ばして次の階層に向かうのを優先させるんですよ!」
「それってちゃんとレベル上がるのかにゃ?」
サナさんが声を張って講義してくる。 まあ、確かに全然モンスター倒せてなかったからレベルは上がってないかも?
……って、いやいや、RTAでは考えたら負けだ! 心を無にしてもう一度挑戦するしかない!
ちなみに、コプスネクロマンサーはものすごく強化されていたらしい。 普通ならミイラナイトやスカルソルジャーを二十体まで召喚して襲ってくるらしいのだが、それが百体近くにまで膨れ上がっていた。
サナさんは悲鳴を上げながらひたすら弓を射まくっていたが、サーベルキャットと俺の二人で挟むように守りながら突貫。 強化されたとは言っても召喚してくるのは雑魚モンスターだし、ネクロマンサー本体も強力な魔法を使っては来るが、レインボースコーピオンほど攻撃速度が早かったわけでもない。
なんなら、詠唱の硬直中にサッと近づいてボコスッ! と殴ってノックバックさせて詠唱を無理やり中断させれば十分対処可能だった。
可哀想にネクロマンサー、お前は強化する方針を誤ったのだ。
そんなわけで入念な打ち合わせを経て二周目に突入。 サナさんはものすごく嫌そうな顔をしていたが、ついてきた以上道連れというのは決定事項だ。
そんなわけで騒ぎ散らすサナさんの背中を押してもう一度ダンジョン内へ。
この時、俺はどれだけ早くダンジョンを攻略するかに思考を割いていたせいで、遠目から怪しい視線を向けられていたことには一切気がつかなかった。




