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『ナイルに悲報を持ってきてしまったぞ』

 ◁

 ナイルは打ち上げで散々飲み食いした後宿屋で眠りについた。 ナイルが就寝中は配信画面は真っ暗になってしまうのだが、暇な視聴者たちは好き勝手コメントを投稿しており、コメント欄は視聴者同士の交流所のようになっている。

 

 『ナイルたんがお酒飲む絵面について言及したい』

 『設定上は何歳だったっけ?』

 『確か、十四歳』

 『はいアウトー』

 『お巡りさんこっちですw』

 『いやいや、見た目は十四だけど魂は大人なのかも!』

 『どこの名探偵だよw』

 『そもそもこの国の成人は何歳なんだ?』

 『運営に確認よろw』

 

 視聴者たちが盛り上がる中、突然コメント欄にとある投稿がされた。

 

 『ナイルに悲報を持ってきてしまったぞ』

 『お? 噂のリア友か?』

 『いいや私が本物だ』

 『そう言うのいいから、報告よろ』

 『ナイルの魂、部屋にいなかった』

 『それまじ?』

 『ま?』

 『なん……だと?』

 『マジよりのマジ』

 

 ナイルのリア友を名乗る男からのコメント以降、コメント欄がものすごい勢いで動き始める。

 

 『てーかどーやって入ったw』

 『……窓代は後で弁償するから』

 『お巡りさーん!』

 『治安わるw』

 『そんなことはさておき、ナイルの魂はハードウェアごと綺麗さっぱりいなくなってたし、パソコンはついたまんまでコンセント抜いても消えなかったんだよ』

 『おいおい、コンセント抜いて配信切れてたらどう責任取るんだよ』

 『何そのホラーな報告w』

 『それは盲点だった。 でも焦りすぎて気が気じゃなかったんです』

 『まーしゃーないんじゃね?』

 『でも窓はちゃんと直せよw』

 

 リア友の話によれば、ナイルの本体はハードウェアごと姿を消しており、パソコンは電源がついたまま。


 コンセントを抜いてもパソコンの電源を落とせない上に、マウスやキーボードを操作しても画面を切り替えることもできなければパソコン自体を操作することも不可能になっていた。


 不可解な現象が複数見られたため、リア友を名乗る投稿者は慌てて帰宅して配信画面を開いたらしい。


 とは言っても、ナイルは現在就寝中のためその報告を確認するのは翌日目を覚ましてからになってしまうのだった。

 

 ◁

 昨日は酔っ払っていたせいでなんとも思わなかったが……


 翌朝、意識が覚醒して目を覚まそうとしたのだが、目を覚ます前に少し不安になってしまった。


 配信切れてて視聴者さんたちのコメント見れなくなったらどうしよう。 そう思いながらも恐る恐る目を開ける。


 そして、相変わらず賑やかなコメント欄を見てホッとする一方、また新たな問題にぶつかることになった。

 

 『あ、起きたんじゃね?』

 『ナイルたんおはー』

 『それではリア友さん、報告よろ』

 

 昨日までと変わりなく、視聴者さんたちが挨拶をしてくれる。 俺も「おはようございます」と返したのだが、早速とばかりにコメント欄がものすごい速さで切り替わっていった。


 どうやら俺のリア友が部屋に様子を見にきてくれたらしいが、部屋には俺の姿が綺麗さっぱり無くなっており、配信も切れなくなってしまっていたらしい。


 パソコンもコンセントを抜いたにも関わらず電源を落とせなかったとか? 率直に言ってホラーである。


 それと同時に、リア友以外からも驚きの報告が後を絶たなかった。

 

 『昨日の雷で行方不明者続出したらしいぞw』

 『SNSのトレンドは今その情報で持ちきりだw』

 『ナイルくんの配信は運営側でも切れなくなってるらしい』

 

 なんと、驚くべきことに昨日の雷で百名近くの人間が行方不明になっており、失踪した人達の部屋を捜索した結果、とある共通点が見つかったとか。


 全員このゲームをプレイしていたという共通点が。


 古いゲームとはいえ同じ時間帯に百人近くプレイしていたのかと感心する一方、俺以外にも配信していたプレーヤーがいたのではないかと期待に胸を膨らませる。


 だが残念なことに配信していたのは俺だけだったらしいし、配信先であるニカニカ動画の運営は問題視されている俺の配信を強制終了しようとしたらしいのだが、できなかったという報告を運営サイトが明らかにした。


 今やツッタカターのトレンドは俺の異世界転生生配信の話題で持ちきりだとか。 ヘリオポリス・インカーズを作成したアビッソスカンパニーは行方不明になったプレイヤーたちを元の世界に戻せるよう試行錯誤していると言う話だ。


 想像以上に大問題になっていることを知り、俺は思わず冷や汗をかいてしまう。


「おいまじか、同接数がとんでもない数字になってやがる」


 思わず同接数を確認してみたのだが、騒ぎの渦中である俺の配信は同接数が五桁を軽くオーバーしており、そのおかげか知らないがステータスもとんでもないことになっている。

 

 『運営から伝言、行方不明になったプレーヤー探してくれってさ』

 『近々ワシらのコメント投稿も気安くできなくなるらしい』

 『とは言っても運営はこの配信画面に何にも手を出せないから、注意勧告くらいしかできないらしいがw』

 

 どうやら俺の配信はこのゲームを作ったアビッソスカンパニーの方々だけではなく警察たちも確認しているらしい。


 大変なことになってしまったことを自覚して、全身に鳥肌が立ってしまう。

 

 『まあでも気にせず今まで通り冒険しなよw』

 『あんまり気負いすぎると逆に大変なことになるぞ!』

 『サポートは俺たちに任せろ!』

 

 心温かいコメントが俺を励ましてくれているおかげで、コメント欄にちらほらみられる堅苦しい文言のコメントはものすごい勢いで流れていっている。


 おそらく政府関係者や運営会社の堅苦しいコメントを、視聴者の皆さんが意図的に流れるよう計らってくれているのだろう。


 ならば俺から言えるのは一つ。


「皆さん! 俺は今まで通り実況していきますので、皆さんも今まで通り接してください! できるだけ効率良くこのゲームをクリアしていけるよう頑張りますので!」

 

 『その言葉を待ってたぞw』

 『またおもしろおかしいツッコミを期待してる』

 『楽しく冒険していこうぜ!』

 

 とは言っても、これからは行方不明になったと言うプレーヤー探しにも少し気を配ろう。 同時にこのゲームから現実世界に戻る方法も頭の片隅で考えることにする。


 冒険の方針を決めたところで、目が覚めてからしばらくコメント欄と睨めっこしていたため相当な時間が経過していることに気がついた。


 二日酔いになっているわけではないが、かなり遅い時間まで寝てしまっていたらしい。 ベットのすぐそばに取り付けられていた窓から外を見てみると、随分と日が昇っている。


「サナさんたちはもう冒険に行っちゃったかな?」


 なんて独り言を呟きながら部屋に取り付けられていた化粧台で身だしなみを整えて、共用スペースになっている水道で顔を洗い、宿屋の食堂に降りていく。


 すると食堂の端の方にあった四人席には、サラーマさんとサナさんが向かい合って座っていた。


「おいやっと起きてきたかナイル! 昨日の盗賊どもの懸賞金もらってきといてやったぜ」


「おはようなのにゃナイルくん! 早速だけど今日もダンジョンの場所を教えてほしいにゃ」


 二人揃って声をかけてきてくれたので俺は少し安心してホッと息をついた。 なんだかサラーマさんは疲れた表情をしているが、面倒な事でもあったのだろうか?


 対してサナさんは、シリスの体を探しにいく気満々らしい。 彼女は忘れてはいけない事を忘れている。


「いやいや、シリスの……シリス様の体を探しに行くのは一旦後回し! 今日はモンクにジョブチェンするためにジョブチェンクエストへ行きましょう!」


 そう、俺は今この瞬間も視聴者たちと視界を共有している。 昨日もお手洗いに行く際は目を閉じて手探りで用をたすハメになっていたし、なんなら音も恥ずかしいから大声で適当な歌を歌ったり水を流しっぱなしにしたりとかなり面倒だった。


 ちなみに、お手洗いに関して世界観的にツッコミたい気持ちはあるが、ありがたいことに水栓式の便座だった。 不幸中の幸いである。


 ともかく、目を瞑ったまま用をたすと何か間違いを起こしてしまいかねないため、一刻も早くモンクにジョブチェンジして、レベル二十二で習得できるという心眼スキルを覚えなくてはならない!

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