きらきらの在処【冬童話2026】
こんばんは、春海です。
今回初めての短編制作と公式企画に参加させていただきました。どうぞゆっくりご覧下さい。
ある夜の出来事です。
僕は何も無い空間にいました。あたりを見回すと、お父さんもお母さんも弟も、学校の友達も先生も、みんなが手に‘’きらきらしたもの”を持っていました。丸い形の人、ギザギザな形の人、モコモコした雲みたいな形の人、みんな色々です。
でも確かに輝いて、そこにありました。
けれど、僕の手には何もありません。
いいなぁ、みんなのそれ、僕もほしいな。
僕は思いました。
誰かにきらきらを分けてもらう?でもみんな大切そうに持ってるから、少しちょうだいって言ったら悲しむかな?きっと嫌がるよね。
だから探しに行こう、自分だけのきらきらを。
僕は歩きました。
みんなの元を離れて歩くと、森に出ました。
森の中では、リスや鳥もきらきらを持っていました。みんなのとは違って小さかったけど確かにそこにありました。
僕はもっと歩きました。
真っ暗な空から雪がパラパラと降ってきます。
寒いなぁ、暖かいご飯が食べたい。
ふかふかのお布団に入りたい。
あのきらきらも、きっとすごくポカポカしているんだろうな。
僕は止まらずに歩きました。
凍える手先をポッケに入れて、寒いのを我慢しました。きらきらは必ず見つかると信じていたから。
やがて森をぬけて、海に出ました。
砂浜には誰かがいます。
僕はその人の方に歩きました。きらきらがどこにあるのか聞きたかったのです、きっとその人もみんなと同じできらきらを持ってるから。
近づくと、その人は綺麗な女の子でした。僕と同い年くらいです。長い髪の毛だな、冬なのにすごく薄着で、寒そうだなって思いました。でもよく見ると、その子はきらきらを持っていませんでした。
「君も持ってないんだね。」
僕は声をかけました。
すると女の子は答えました。
「落としちゃったの、だからね戻ってこないの。」
女の子はすごく悲しそうでした。
「落とし物は‘’交番”ってところに届くって聞いたことがあるよ。そこに行ってみよう、僕もきらきらを探してるんだ。」
けれど女の子は首を横にふりました。
「戻ってこないよ、私も君も。失ったきらきらはもう二度と手に入らないの。」
僕は不思議に思いました。
なんでこの子にそんなことが分かるの?
女の子は落としちゃったって言ってたけれど、僕は最初から持ってなかったんだ。
だから欲しくて一生懸命探したのに!
僕は悔しくなって、女の子になんで?といっぱい聞きました。
それから女の子は下を向いて言いました。
「私もきらきらがほしいの。でもダメなの!
きらきらはね――‘’いのち”なんだよ。失ったいのちは戻らないってお母さんが言ってたの!」
僕はびっくりしました。
「…いのちがないってことは、死んじゃったってこと?」
女の子はゆっくりと頷きました。
でもおかしい、僕は今地面に立ってます。自分の足で立って、呼吸して、女の子と目を見て話せています。
死んでいるなら、立つことも、呼吸をすることもできません。
幽霊ならきっと目には見えない透明だから、誰にも見つけて貰えないはずです。
女の子は僕のことをからかってるんだ、嘘をついているんだと思って、僕は怒りました。
すると女の子はしくしくと泣きはじめてしまいました。僕はどうしたらいいか分からなくて、もっと近づいて涙を袖で拭いてあげました。ゆっくりと話してくれました。
お父さんとお母さんとこの海に来ていたこと。あっちの方は波が強いから、絶対に行ってはダメだと言われた方に、2人が目を離した隙をみて、興味本位で行ってしまったこと。そしたら大きな波がきて、水が口に入って、苦しくて息ができなくなってしまったこと。気がついたらお父さんとお母さんが泣いていて、2人にあったきらきらが自分にはなかったこと。またきらきらが戻ってくるかもと思って、ずっとこの場所で待っていること。
僕は、女の子が嘘をついているように思えませんでした。
「…そうなんだね、怒ってごめんね。」
僕は謝ることが精一杯でした。
女の子の話が本当なら、きっと僕も死んでしまったんだ。理由は思い出せないけど、きらきらを持ってないことは本当だから、信じるしかないのかもと思いました。
周りには誰もいなくて、世界が僕たちだけのような気がしました。
みんなにももう会えないんだと思うと、僕も悲しくて泣いてしまいました。 きらきらなんてなくてもいいから、お母さんのご飯を食べて、お父さんとお出かけして、弟と遊びたいって思いました。勉強は嫌いだけど、友達とももっと遊びたいです。
女の子は僕が泣いてるのに気がつくと、ぎゅっと抱きしめてくれました。女の子の身体はとても冷たくて、氷みたいでした。2人で抱きしめながら、しばらく泣きました。どれくらい泣いたのか分からないけど、朝日が上りはじめています。
「――くんはね、朝に太陽が登った頃に産まれたんだよ。太陽がないと真っ暗で人は生きられないの。だからママ思ったんだ、――くんはママにとっての太陽なんだ。ママをママにしてくれた、パパとママにとっての太陽なの。」
「――くんは、ママのお腹に来る前何してたのかな?」
「――は優しいから、きっと前世でも良いことをたくさんしたんだろうな。パパと俺の大好きなママの子に産まれてくれて、ありがとうな。」
泣いていたら、パパとママが僕にそう言ったことを思い出しました。
あの時はよくその言葉の意味が分からなかったけれど、今はとても大事なことのように思えてきます。しばらく考えると、僕は良いことを思いつきました。
「ねぇねぇ、あのさ。」
声をかけると女の子は赤くなった目で、僕のことを見ました。
「死んじゃったらさ、生まれ変わればいいんだよ。生まれ変わればまたきっと、きらきら持つことができるよ。」
女の子は首を傾げました。
「…でもどうやって?」
言われてみれば確かにそうです、僕も女の子も生まれ変わる方法を知りません。
「だから探そう、2人で!前にママが言ってたんだ、良いことをしたから生まれ変われたとかなんとか…だから探してみよう。2人でまたきらきらを持とうよ!」
そこから僕たちは2人で協力して、ゴミを拾ったり、公園のベンチを綺麗にしたり、良いと思うことを全部やりました。
相変わらず僕たち以外の人はいなかったけど、寒くても雨が降ってても、2人で頑張りました。
ある日目を覚ますとお空にいました。ふかふかの雲の上には女の子もいます。
お空から見た街には色々な夫婦がいました。生まれ変わっても2人一緒がいいね、と女の子は言いました。僕も女の子ともう会えないのは寂しいなと思いました。2人でたくさん話して、僕と女の子は、1組の夫婦を選びました。若い女の人と優しそうな男の人です。
次起きたら、きらきら持ってるといいねと女の子に言いました。女の子はそうだねと笑っていました。
長い冬が終わり、春の訪れを告げるかのように、病院で元気な2人の赤ちゃんの産声があがりました。とある夫婦の間に産まれた、男の子と女の子の双子の赤ちゃんです。
顔はあまり似ていないけれど、2人は確かに、誰よりも幸せそうに、きらきらを持って産まれた赤ちゃんです。
お母さん、お父さん。
生んでくれて、ありがとう。
もうきらきら無くさないように、大事に持ってるね。
いかがでしたでしょうか?
私にとってのきらきらを、物語にした作品でした。
寒い冬、家から出たくない季節だからこそ、みなさんも自分自身の‘’きらきら”の形を考えてみてはいかがでしょうか?ご感想等もお待ちしております。




