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三姉妹とリユニエの星環  作者: ケミパパ
第3章 金羊に導かれし幻想

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Ⅺ.幻界昇華、発動!

※世界観の補足や設定まとめはnoteにあります(プロフィールから)

11.



リーヴァの《黒閃顕獣ケルヴァス・ドレイン》がオルディナを貫こうとした、その刹那――


漆黒と橙のルミナをまとった三首の幻影獣が、突如その動きを止めた。




「なっ……!?」


リーヴァが驚愕に目を見開く。




幻影獣の四肢を絡めとっていたのは、地面から現れた無数の白蛇の緋鎖アマヌキ


螺旋のように絡みついたそれは、音もなく獣を束縛していた。




「《白蛇縛環ハクジャ・シルヴァイン》──」




その声と共に舞い降りたのは、艶やかな黒地に紅薔薇の刺繍が咲く和装風のドレスをまとった女性。


オルディナの前に立つその姿に、彼女は目を見開いた。




「ミ、ミカゲ……? どうやってここに……」




「オルディナさん、説明は後です。私はリーヴァさんを引き受けます。あなたはこれを――」


そう言って差し出されたのは、潤朱色の瓶。

中には古都クヅラハに伝わる秘薬、《蛇命蘇醒液ハクメイ・レクティス》が注がれていた。


それは白蛇精霊サクヤオロチの再生ルミナを封じた命の霊薬である。




「ありがとう……ミカゲ。でも今のリーヴァには……」




「ご安心ください。私も無策で現れたわけではありません」




その言葉と共に、ミカゲの背後に白蛇精霊・サクヤオロチが姿を現す。




柔らかな白光を纏うその精霊から、潤朱と深緑の二色のルミナが、彼女の全身を包み始めた。




「《幻界昇華・蛇神顕現サクヤ・オロチ》――」




その瞬間、ミカゲの肌に血の紋のような神蛇の刻印が浮かび、橙銀の長髪が輝きを増して宙を泳ぐ。




リーヴァが嗤う。




「ミカゲ、邪魔するつもり? 大人しくオルディナを差し出せば、見逃してあげようかと思ったけど」




「ご冗談を。むしろ、それはこちらの台詞ですわ。


今ここであなたが女王への忠誠を断つのであれば、私はあなたに剣を向けはしません」




その静謐で凛とした声は、炎にも似た誠意を孕んでいた。




「仮契約のくせに、随分と威勢がいいね……その顔、絶望で歪めてやるよ!!」




次の瞬間、リーヴァの姿が消えた。


空間を裂くように響く声。




「《黒閃爪斬コクセンソウザン》!!」




禍々しい鉤爪の一撃がミカゲを襲う――


だが、その軌道を塞ぐように地より無数の《白蛇縛環》が再び飛び出し、リーヴァの体に巻き付いた。




「くそっ、またこれか!! こんなモン、引き剥がして――」




「……動きを止めるだけではありませんのよ」




ミカゲの言葉と共に、彼女の橙銀の髪が鋭い蛇牙のように変化し、拘束されたリーヴァの肩を貫いた。




「ぐああああっ!!」




リーヴァが咆哮をあげる。




「あなたの“裏・幻界昇華”は、その程度ですの?」




ミカゲの声音に、冷ややかな挑発が滲む。




「ナメんじゃねえよ……! はああああっ!!」




次の瞬間、リーヴァの体から黒紫のルミナが放たれ、白蛇の拘束が霧散する。




「ミカゲ! あの黒紫のルミナ……ルミナ吸収の共通能力よ!」




オルディナが叫ぶ。




「その通り。女王陛下から賜ったこの力があれば、そっちの魔術なんか吸い尽くしてやれる!」




リーヴァの傷はすでに再生していた。




「なるほど……吸収したルミナで、治癒も可能……まさに寄生術法の完成系」




ミカゲは、まるで魔術書を読むような静かな口調でつぶやいた。




霧散する白蛇の残響の中で、リーヴァの傷は瞬く間に癒えていく。




黒紫のルミナが、焼けた肌を蝕むように覆い、蘇らせていた。




「どう? あたしのこの力……不死身のようで、気味が悪いでしょ?」




リーヴァが笑う。

その眼光には確信めいた凶暴が宿っていた。


だが、ミカゲは一歩も退かない。




「ええ……確かに、少々厄介ですわね」




彼女の足元に、光が湧いた。




静かなる泉を湛えるように、潤朱と深緑が溶け合ったルミナが滲み、周囲の大地に波紋を描き始めた。




「……ですが、そのルミナ。私の“水”には通じませんのよ」




ミカゲが指をすっと前へと伸ばす。




その瞬間、彼女の背後に顕現していた白蛇精霊・サクヤオロチが咆哮した。




その声は水琴窟のように澄みわたり、次の瞬間、無数の水の刃が虚空を切り裂いた。




「《白潮蛇舞ビャクチョウ・セイラン》!」




白銀にきらめく無数の蛇が、水の奔流を纏いながらリーヴァに襲いかかる。




水流はリーヴァ覆っていた黒紫のルミナを穿ち、彼女の身体から力を削ぎ取っていく。




「ぐっ……!? ば、馬鹿な、私のルミナが……水なんかにっ……!!」




リーヴァの叫びが上がるが、もう遅い。




ミカゲの髪が、風に揺れながら色を変えていく。




その銀橙の髪先が波のように分かれ、白蛇の鱗のような光を宿していた。




「……水は、形なくしてすべてを包み、そして、流れの中で命を還す」




静かに囁いたその言葉とともに、再びルミナが弾ける。




「《蛇神顕界・輪廻水壇リンネスイダン》」




地面が割れ、純白の蓮が咲くように、水の環が広がる。




その中央から放たれた蛇の牙は、まっすぐにリーヴァを貫いた。




「がはっ……あ、ああっ……」




黒紫のルミナが、逆流するかのようにリーヴァの身体から剥がれ落ちていく。




霧のように揺らめきながら、それは水面に吸われ、消えていった。




「ミカゲ……まさか、“女王の贈与”を……消したのか……?」




「はい。あの黒紫のルミナは、“蛇神の水”には通用しません。」




ミカゲの瞳が、サクヤオロチと同じエメラルド色に染まり、静かに輝いた。




「ここで、終わりにいたしましょう」




そして次の瞬間。


ミカゲの手に、蛇紋を刻んだ細剣が現れる。

蛇精霊サクヤオロチの力が込められた刀だ。




「《清刃・蛇祓セイジン・ジャバライ》!」




その一閃が走った瞬間――




リーヴァとケルヴァスを繋げていた黒紫の鎖が、光の粒子となって四散した。




「ケル……ヴァス……? く、くそ……!」




地に膝をついたリーヴァの身体は、もはや昇華の力を保っていなかった。




光の粒子が、祈るように舞台へと舞い落ちていく。


その中心に、ただ膝をつくリーヴァの影だけが、静かに揺れていた。






ロゴスの喉元へ、レナリスの黒紫の刀身が閃光の如く迫った――




ガキィィンッ!!




「なっ……!」




その瞬間、濃蒼に輝く刃が間に差し込まれ、レナリスの剣をはじいた。




「ロゴス、大丈夫?」




その声と共に現れたのは、蒼紺の羽織に身を包んだ黒髪の女剣士。

鋭い眼差しと、幻影のようにたなびく黒髪。

彼女の名は――カゲツ。




夜の静寂を編んだような漆黒の羽織に、青紺の刀身が冷たく光を放っていた。

その姿は、理と幻想の境界に立つ審問官のようでもあった。




「モナの《次元忘却〈ネムレイン〉》の加護ね……来られてよかった。ありがとう。」




ロゴスの声に、カゲツは肩をすくめた。




「呑み込み早すぎるよ、アンタは。」




そう言うと、彼女は自身の愛刀――《ミラージュ・ヴェルナーダ》の刃先でレナリスを押し返す。




「カゲツ……あなたも邪魔するつもり?あなたの剣では、今の私の律剣術には届かないわよ。」




再び双剣を構え直すレナリス。




「強くなったのはアンタだけじゃないよ、レナリス。」




その瞬間、カゲツの背後にいた猿精霊・シエンの身体が青紺のルミナに包まれた。




「《幻界昇華・猿神顕現(シエン・カエル)》ッ!!」




カゲツの身体を蒼紺のルミナが包み、肌に青い焔のような紋様が浮かび上がる。




「仮契約の身で、幻界昇華を発動させるとはね……」




レナリスが呟いたその瞬間――

ミラージュ・ヴェルナーダの刃が彼女の目前に迫る。




ガッキィィン!!




「くっ、速い……!」




レナリスは双剣でその一撃を受け止めたが、 その眼には、カゲツの動きがもはや“残像”にしか映っていなかった。




剣が交わる度、蒼と黒紫の光が激しく火花を散らす。




「速い……今の私の眼では見きれない……」




ロゴスは呆然と、剣戟の舞台を見つめていた。




「《七破律ダスク・ディソナンス――三律・断斬ディバイド》!」




レナリスが黒紫の剣を振りかざすと、禍々しいルミナがカゲツを包み込む。




ミラージュ・ヴェルナーダで受け止めるカゲツ――




「……!」




その瞬間、彼女の身体が静止した。




「もらったッ!!」




レナリスの青碧の刃がカゲツを横から切り裂く。




「カゲツッ!!」




ロゴスの叫びが響いた。




……が、




切られたカゲツの身体はゆらりと霧散する。




「幻影……!」




驚愕するレナリスの背後から、ミラージュ・ヴェルナーダの刀身が突き刺さる。




「ぐぅぅぅぅ……」




呻くレナリス。

その背後に、濃紺の瞳が静かに煌いた。




「安心して。致命傷は避けてる……」




刀を引き抜くカゲツは冷静に語る。


「ど…どうやって?」


「これがシエンとの共鳴の力……私の身体能力を極限まで高め、幻影すら具現化させる。」




彼女は刀を払って血を拭った。




「レナリス、まだ、続ける?」




「当たり前よ……私はここで、あなたたちとの“絆”を断ち切る。」




腹部の傷に手を当てるレナリス。

傷は既に癒えかけていた。




「その黒紫のルミナで……回復を……。でも、その力……副作用があるんじゃないの?」




カゲツの問いかけに、レナリスは冷たく笑う。




「心配無用よ。さあ、続きを再開しましょう。」




再び、剣を構えるレナリス。




「カゲツ、レナリスとミストロスの意識は完全に堕ちていない。ルミナ炉に絡みついた黒紫だけを断てないかな?」




ロゴスの視線は《オラクル・アイ》で、消えかけの灯火の中でも真実を見据える。




「やってみるよ。そのつもりだったから。 あいつの黒紫のルミナ……そして、ミストロスとの禍々しい“鎖”を斬る!」




カゲツの足元から、幻影のような青紺の残像がいくつも立ち昇る。




その全てがレナリスの眼前に、斜め、横、背後――あらゆる方向から映る。




(見えない……!)




レナリスは剣を交差させ、視界の全てを警戒する構えをとる。




だが次の瞬間、その剣が一本、宙に舞った。




「――《幻閃・双月斬》」




カゲツの声と共に、濃紺の残像が一気に凝縮され、


“二重の斬撃”が光の速さでレナリスを貫いた。




「くっ……がはっ!!」




膝をついたレナリスの背後に、


淡く黒紫に染まった牛精霊・ミストロスが浮かび上がる。




その角から、禍々しい黒紫のルミナが無数の鎖となってレナリスに巻き付き、その身体を操っていた。




「……この鎖のせいで、あんた自身の意志が捻じ曲げられてる」




カゲツは《ミラージュ・ヴェルナーダ》を逆手に構え直し、


自身のルミナを一点に集中させた。




「――シエン、やるよ。」




猿精霊シエンが頷く。

彼の眼が、完全な月のように光り出した。




「これで、終わらせる」




青紺のルミナが再び閃き、空間ごと震えさせる。




「《猿神顕現・清影ノ斬鎖セイエイノザンサ》!」




その斬撃は、まさに"概念"を断つ一閃だった。




レナリスとミストロスを繋いでいた黒紫の鎖が次々に断ち切られ、




空間が“音を立てて”震えながら、ルミナが粉砕されていく。




「ぐぅ……あああああっ……!」




レナリスの全身から、黒紫のルミナが逆流するように抜け落ちていく。




同時に、ミストロスの幻影も苦しげに咆哮し、霧散した。




そして、すべてが静寂を取り戻した。




──残されたのは、刀を握ったまま膝をつくレナリスと、




彼女を静かに見つめるカゲツの姿。




「……戻れた?」




カゲツが問いかけると、レナリスは力なく笑った。




「……まだ、痛いけど……なんとなく、視界が澄んだ気がする」




カゲツは刀を下ろし、静かに答えた。




「よかった。あんたが、あんた自身に戻れて」




場面は、静かに、次なる戦場へと移り始めていた――







セナは片目を細め、銃口を彼女に向けた。

「バイバイ、アクシオン」




そして、ラブラドライトのように煌めく弾丸が引き金とともに放たれたその刹那――




「《天籟風環テンライ・ウィスフィア》!」




淡い風がふわりと舞い、旋律のような軌道を描いて弾丸を逸らした。

音もなく響くそれはまるで空が歌っているかのようだった。




「この魔法……」

セナが目を細める。




アクシオンの前に、桃蝶の羽衣を纏うような光が舞い降りた。




淡い銀灰のドレスに星花の刺繍が煌めき、

髪に挿した蝶の飾りと腰元の蝶が微かに揺れる。




背後には天光を纏うペガサス精霊・ラファエルの姿があった。




「エリシア……来てくれたのね……」

まだ雷撃で体が痺れるアクシオンは膝をつきながら言った。




「遅れてごめんね、アクシオンちゃん。ここからは私に任せて」

エリシアは優しくウィンクを返す。




「ちょっと……エリシアまで邪魔するの?あっ、そうか。エリシアはまだ女王に忠誠を誓ってないんだっけ?」




セナがにやりと微笑む。

「エリシア、まだ遅くないよ。今からでも私たちの方につかない?」




「丁重にお断りするわ」

その声は、鈴の音のように澄み、けれど確かな強さを孕んでいた。




「今の女王に忠誠を誓ったら、私の“歌”も翼をもがれる。

それに、私は――アクシオンちゃん、そして三姉妹を信じてる」




黄金の瞳がまっすぐにセナを射抜く。




「美しい信念ね……でも、それがただの幻だってこと、証明してあげるっ!!」

セナの言葉に、エリシアは静かに微笑んだ。




「ふふ、強くなったわね。黒紫のルミナのせいかしら?

でもその光こそがまやかしなのよ──」




エリシアのルミナが桃金色の螺旋を描きながら舞い上がる。




「《幻界昇華・幻馬顕現ラファエル・アストラリア》」




その瞬間、彼女の肌に星辰のような金色の紋様が浮かび、

背中からラファエルと同質の光翼が広がった。




ドレスのレースは光を帯びて星の花弁を模し、彼女の姿はまさに天空の歌姫であった。




「エリシア...その姿...」

アクシオンが聞くと、


「えへへ。びっくりした?

あなたたちに少しでも近づきたくて、ラファちゃんとたくさん特訓したの。

だから、今はゆっくり休んでて、アクシオンちゃん」




『……エリシア。幻界昇華の維持限界は数分――無理は禁物です』

ラファエルが夜空の風のような優しい声で囁いた。




「ええ、分かってる。だから最初から全力で行くわ!」

その言葉と同時に、エリシアは天翔ける風の矢のようにセナへと駆ける――




「見せてもらおうか……アーティストの力ってやつを!」

セナはそう叫ぶと、雷撃を纏わせた双銃を構え、弾を放った。




「《双撃聖十字デュアル・クルセイド》!」




だが――




「……風よ、音となりて舞いなさい」

エリシアの小さく紡がれた言葉が、空気を震わせた。




風が旋律を帯びる。




飛来する銃弾を、優雅な風音のように吹き払い、

空間が音楽のように共鳴し始める。




「なっ……風が、弾いてる……?!」




「あなたの“攻撃”に、心が乗っていないもの。音にならない衝動は、響かないわ」




その瞬間――




エリシアの足元から金と銀のルミナが舞い上がり、空を走るラファエルと共鳴する。

その翼の一閃が、空気を振るわせ、“音の刃”として放たれた。




「《星風奏刃セレノ・ファルシア》!!」




その光刃がセナと狼精霊・ルクスハウルを繋ぐ黒紫の鎖を切り裂いた。




「がっ……!?な、なんで!?私とルクスの力は……っ!!」




「セナちゃん、あなたのその力は、誰かの“声”に縛られている。

自分の意志で選んだ音じゃない……だから、私の歌には勝てない」




響き渡る風音と共に、空間に“蝶の音”が咲くように輝く。




エリシアは、前へと歩みを進めた。




「私は、仲間の心と、希望の旋律を信じている。

それが、私の“幻界昇華”……」




金蝶の羽が風に乗り、エリシアの歌声とともに舞い散る。




「だから、ここで――“終幕”よ」




「《星舞終曲ルミノア・フィナーレ》!!」




ラファエルの翼から放たれた最終の閃光が、

セナの身体を包んでいた黒紫のルミナを打ち砕き、

まるで“罪の音”を静かに沈めるように、闇を祓った――



――つづく



ここまで読んでいただきありがとうございます✨

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