Ⅸ.断律の三審劇③
※世界観の補足や設定まとめはnoteにあります(プロフィールから)
オルディナとロゴスがリーヴァ、レナリスと激闘を繰り広げる中、三つ目の舞台――
紫色の魔法円により展開された浮遊舞台では、雷鳴にも似た銃声が空を引き裂いていた。
「《雷裂牙弾》!!」
狼林の都ノアグリフに伝わる魔銃《夜牙》が、セナの掌で閃いた。
ラブラドライトのように輝く弾丸が轟音とともに放たれ、まっすぐアクシオンを狙い撃つ。
ガンッ!!
その弾道を遮ったのは、神々しき紫紺の手。
空中に浮かび、静かに佇む巫女の幻影の掌であった。
「《巫女の遮手》か……あなたのその眼は健在のようね、アクシオン。」
セナが銃口を向けたまま、唇を歪めて言う。
アクシオンの両目は既に《ルミナ・レクイエム》を展開していた。
……今の弾丸、黒紫のルミナを織り交ぜていたわね。
今の私では、完全に防ぎきるには至らない……
「セナ、本当に私たちが“裏切った”と信じてるの?」
「愚問ね……そんなの当然じゃない。あの夜、あなたたちは姿を消した。 今また現れて……精霊と神器を奪うためでしょう?」
アクシオンは彼女の短絡的な物言いに、思わず息を吐きそうになった。
一方で、そうした“言葉”を信じさせ、背後で微笑む女王と影の者たちに、初めて静かな怒りが芽生えた。
「……いいわ、セナ。あなたがその気なら、私も容赦しない。」
「強がって……今のあなたでは、私には──」
その言葉が終わるより早く、セナの背筋に戦慄が走った。
アクシオンから放たれる紫紺のルミナが、明らかな殺気と憎しみを帯びていたからだ。
「試してみる?」
アクシオンの瞳が“二重螺旋”に変化し、その背後に巫女の上半身が顕現した。
神々しき紫紺の装束を纏い、彼女の怒りと祈りを体現するかのような幻影だった。
「《ルミナ・レクイエム──律巫顕現》」
セナは一瞬、その神聖な姿に目を奪われる。
『セナ!!何をボサッとしている!来るぞ!!』
狼精霊ルクスハウルの叫びに、彼女はハッと我に返る。
「遅い!!」
巫女の拳が雷のように彼女に迫る。
ドゴーン!!
ルクスハウルが首を噛み引っ張るようにセナを間一髪で退避させる。
「ごめん、ルクス….ちょっと……ボーッとしてた!」
セナは態勢を整え、黒紫の混濁を帯びた雷弾を連射する。
ガン! ガン!
だが、それらはすべて紫紺の手に阻まれた。
「絶対防御ってやつね…でも、その巫女、まだ不完全なはず……今のうちに破壊するだけよ!」
「《森雷散華・乱舞》!!」
ノアグリフの森の雷花を模した弾丸が一斉に放たれ、巫女の身体に鈍く衝突し、ひびを刻む。
「甘いわ……《ルミナ・レクイエム》」
アクシオンの双眸がひとつ瞬くと、すべての弾丸は重力を失ったかのように沈黙し、消えた。
「まだ続ける? セナ?」
その冷ややかな声に、ルクスハウルが囁く。
『セナ……あやつの眼は、精霊の心でさえ見抜く。厄介だぞ…』
「なら、本気出すしかないっしょ? ルクス。」
『よかろう。我らの力、とくと見せつけてやろう。』
黒紫のルミナがセナとルクスハウルを包み、闇に咲く花のように収束していく。
「裏幻界昇華――《雷紋咆刻》!!」
その瞬間、セナの姿は変容し、ルクスハウルと一体となった神狼の巫装が浮かび上がる。
髪は宙に揺らぎ、瞳に雷紋が走る。
「影の力で無理やり昇華を……」
アクシオンは静かに呟く。
『冷静でいられるのも今のうちだぞ、アクシオンよ……』
「勝負はここからよ。」
神狼の巫女と祈りの巫女。
ふたりの眼差しが交わったとき、空気が張り詰め、戦の鐘が鳴った。
覚悟と覚悟が正面から交錯し、光と影の間に、新たなる秩序の兆しが生まれようとしていた。
――つづく
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