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あずき棒  作者: 椿 桜


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2/2

隼人 part

「なぁ、このあずき棒ってさ、、、硬いじゃん?」


俺は、無意識に発言していた。

何度も食べているはずなのに、何で今更って

隣のみかんは、ツッコみたいけど我慢してんな。

ずっと一緒に居るんだから

言わなくても顔見りゃ分かるっての。


「凶器になりそうじゃね?この硬さなら頭部殴ればイチコロだろ

 そう考えると、恐ろしいアイスだな」


本当に、恐ろしいよ。

チラッと横目で駄菓子屋の店内を見る。

店長が気付いてる様子はないな。


俺から、みかんに伝えられる最大限のメッセージ

意味に気付かなくて良い。

みかん、お前は何も知らなくて良い。


俺が何とかする。

俺は、この時決意した。


何があろうと、みかんを守るって


そんな俺の決意なんか知らない

みかんは、今まで聞いたことがない声量で


「食べ物だからね!?」


と叫んだ。


俺は、思わず爆笑した。

あぁ、楽しいな。

みかんと居ると、不安なんか吹き飛ぶ。

これから先もずっと、この関係が続けば良いのに。


"好きだよ みかん”


この気持ちは、今回の一件が片付いたら伝える。

だから、絶対に···


「おーい、みかん。どうした?立ったまま固まって

 アイス溶けるぞ?」


俺が考え事をしてる間に

みかんも何か考えてたみたいだ。


その後は、アイスにかじりつく

みかんの横顔を眺めていた。

本人には、バレないように


みかんに用事があるらしく解散した。


みかんの背中を見送った後

俺は駄菓子屋の店内に入った。


重い

この空間だけは異質だ

心臓が締め付けられる


一人で入ると、重圧が俺を襲う

一歩一歩足を出しながら

店内の奥に居る店長の下に向かった。


「今夜××時、××公園にて話があります」


店長は、不気味な笑みを浮かべながら

眼鏡をクイッとあげた。

何も返答はない。

だが、これは了承したと言うことだろう。

俺は、一礼すると駄菓子屋を出た。


はぁ…はぁ…


駄菓子屋を出た瞬間、どっと汗が噴き出した。あの場所も、あの店長も普通じゃない。

先月までは、普通の駄菓子屋だったのに


一週間前に…全てが変わってしまった。


思い出したくもない悪夢みたいな景色

誰も異変に気が付いていない。


『奴は何者なんだ?』


ゾゾッと背筋に悪寒が走った。

誰の声だ今の

ゆっくりと後ろを振り向く。

駄菓子屋の前で、あずき棒を齧りながら店長がこちらを見ていた。

あまりの恐怖に、その場から走り去った。


指定した時間の15分前

この一件に片を付ける為、俺は重い体を引きずりながら向かった。

公園には、先に店長の姿があった。


ガン

ガン

ガン


何かを叩いている。

恐る恐る覗き込むと、そこには

顔の原型を留めていない人間の死体があった。

まただ、またあずき棒で頭蓋骨を叩いている。

こいつはイカれてる。


何とか、吐き気を抑えていると店長の手が止まった。


「あぁ、やっと来たのかい。待ちくたびれて頭蓋骨を叩いてたんだ」


血に塗れたあずき棒を一齧り。


「ん~、この塩加減が良いんだよ。君も食べるかい?」


店長は、齧ったあずき棒を俺に差し向けた。


「見ているだけで吐き気がする。

 誰がこんなもの食うかよ。」


とは流石に言えず


「食欲が無いので大丈夫です」


と丁重にお断りした。


「それで?私に話があるんだろう?何だね?」


あずき棒に足し血をしながら、俺に尋ねてきた。


言えるわけがない

こんな状況で

殺されるのは目に見えている

だが、みかんを守るために…!!


「一週間前に、見た事も今日見た事も…誰にも言わないので

 俺とみかんには何もしないでください。お願いします」


俺は、深々と頭を下げた


「みかん?あぁ、いつも一緒に居るあの子か。健気だね~

 分かった。君達には、手を出さないと約束する」


俺は、了承を得た喜びで顔を上げた。

だが、現実はそんなに甘くなかった。

この店長の真の姿を見てしまったのだ


「とか言うと思ったかい?ダメに決まってんだろ

 お前らは、既に俺様の獲物なんだよ。

 この人間の様にな。ただ、別れの時間ぐらいは与えてやるよ

 それでいいかい?」


月の光に照らされた、店長の姿は人間ではなかった。

バケモノ…

そんなバケモノが、満面の笑みで有無を言わせぬ発言をしてきた。


俺には、、、頷く事しかできなかった。


「うん!分かってくれたらいいんだよ。逃げようなんて考えるなよ?

 この街は、既に俺の支配下だ。大丈夫。

 死んだら、存在が消え誰の記憶にも残らないから

 一週間後、殺すね」


何を言ってんだ、このバケモノは

やばいやばいやばい

関わるんじゃなかった

あんなの目撃するんじゃなかった

一週間の余命宣告


ふ…ふざけんなよ

理不尽な現実に、笑いながら涙を流し膝から崩れ落ちた。


ガリ

ゴリ


「あぁ、やはり人間の絶望する姿が最高のトッピングだぁ♪」


ごめん、みかん

俺が甘かったよ


「うひょー!!ねぇ、今どんな気持ち?どんな気持ち?

 もっと、俺を楽しませてよ」


 あ

  あ

   あ

    ぁ

     ぁ

      あ

       …


~翌日~

昨日の出来事をずっと考えていた。


”一週間の余命宣告”


店長の言葉に嘘がないのは、分かる。

何故なら、今の店長は本来の店長ではない。

一週間前、駄菓子屋の店長をあずき棒で撲殺していたのを俺は目撃してしまったから。

なのに、誰もあの店長に違和感を抱いてない。


やっと、その理由が分かった。

俺以外は、前店長の事を誰も覚えていない。

いや、正確には”知らない”


部活後に帰宅していたら、忘れ物をして

学校まで取りに帰ったせいで目撃した。

あの時、忘れ物をしなければ…

学校まで取りに帰らなければ…


平穏な日常は、続いていたのかな・・・


突然、誰かが触れてきた


「ハッ」


いつの間にか、みかんが俺の背後に居た。

色々聞かれたが、話せる筈もなく黙秘を貫いた。


だって、もしも話したら


みかんはきっと無理をする。


刺し違えてでも、俺が店長を止める。


~数日後~

今日が余命宣告の最終日

今日の為に、やれるだけの事はした。

みかんと、過ごせるのは今日が最後なんだろうな。

最後ぐらい、いつもの俺で居よう。


俺が、いつも通りバカ話をしていると適当に相づちを打つみかん

これでいい

これが俺達の日常


ガン


これは、まさか警告か?


『今日で最後だ。分かってるな?』


この声は、あの時聞いた声。

あー、クソ!

全て、見透かされていたのか。

思考すらも、店長に見透かされていた。

全てが掌の上だったという事か。


「大丈夫?」


みかんの声が聞こえた。

まずい、心配されている。


「ん、あぁ。暑さでやられたかな」


とっさに、誤魔化した。


「今日は、一段と暑いもんね」


その言葉を聞いて、俺は誤魔化せた安堵と同時に罪悪感に襲われた。


みかんに、嘘をつくのが辛い。


好きだ、好きだ、好きなんだ


ずっと前から好きだった


この想いを、伝える事が出来ないまま俺は死ぬのか


あー、嫌だな


これから先もず――――っと傍に居て欲しかった。


ありがとう


そして、さよなら


あの会話を最後にみかんとは解散した。


「別れの挨拶は、済んだのかい?」


あずき棒を上下に振りながら、店長が近づいてくる。


「はい、済みました。ですが、夜まで待ってください。

 今夜22:00にこの駄菓子屋に来ます」


俺は、店長の返事を聞かないまま立ち去った。


~22:00~

駄菓子屋に着いた。

駄菓子屋の入り口は開いている。

夜の静けさと暗さが合わさり、昼間の100倍は不気味だ。

つまり、100倍怖い。


正直、今も逃げ出したい気持ちがある。


「はぁ…」


溜息を一回


「スーハ―、スーハ―」


深呼吸を二回


覚悟を決めた。

俺は、ズボンのポケットに入れたカッターナイフを

握りしめながら店内に入った。


グワン

グワン

グワン


あれ、視界が揺らぐ

一歩足を踏み入れただけなのに、、、


バタッ


「ここからが、お楽しみの時間だからね。君には、眠っておいてもらうよ♪」


これが俺が、気を失う前に聞いたセリフだった。


~???~

何で、俺まだ生きてるんだ?

ここは何処だ?

あれから、どのぐらい時間が経った?


朦朧としていた意識がはっきりしてくる。


だが、目の前には信じられない光景が広がっていた。


みかんと店長が対峙している。

は?

何でだよ


「おやおや、やっと来たのかい。随分と遅かったねぇ」


やめろ

やめろ

やめろ――――――――


だが、俺の声は届く事が無く


「大丈夫、一瞬だから」


あずき棒がみかんに振り下ろされた


ゴン


うわああああああああああああ


何で、みかんが…ここに


店長が近づいてくる

そして、ガラスの扉を開けた。


「どうだった?大切な人が目の前で殺されるのは」


俺は、店長の声には反応せずにみかんのもとに向かった。


「マジックミラーって知ってる?片側からしか見えないガラス

 特殊な素材だから、君の存在はつい先ほどまでこの世から消えていた

 ねぇ、今どんな気持ち~?」


みかんを守ると決めたのに…


クソ!


俺は、何も出来なかった


何も出来なかったどころか、目の前で殺されるのを見ていた


何で、俺だけが生き残る


店長がみかんに近づき頭部の血をあずき棒に付けた


「さいっこう♪今までで一番美味しいよ♪」


ガリ

ゴリ


「もっとさ、その絶望の表情を見せてよ。ん~堪らない♪」


俺は、何も出来ずにその場でみかんの死体を見つめていた。


「それじゃ、さよなら」


ゴン


鈍い音が、駄菓子屋の店内に響き渡るのだった。

みかんpartでは、描かれなかった隼人の心情や舞台裏と言いますか

矛盾が起きないように、執筆いたしました


正直、隼人partは心苦しかったです


2視点作品を初めて書いた作品です


最後まで、読んでいただきありがとうございます

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