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あずき棒  作者: 椿 桜


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1/1

みかんpart

「なぁ、このあずき棒ってさ、、、硬いじゃん?」


真夏の夏休み

駄菓子屋のベンチに座りながら

二人で、あずき棒を食べていると

突然、友人がこんなことを言ってきた。

何を今更、食べるの初めてじゃないだろと内心ツッコみつつ

私は、無言で頷いた。


「凶器になりそうじゃね?この硬さなら頭部殴ればイチコロだろ

 そう考えると、恐ろしいアイスだな」


いやいやいや、おま…え?

私は、意味の分からなさに口を開けたまま数秒固まってしまった。

頬を伝う汗が、太ももに落ちる。

生温い汗の感覚で、意識が戻る。

その時、私は立っていた。

驚きのあまり意識が戻ったと同時に立っていたのだろう。


私は、自分でも驚く声量で


「食べ物だからね!?」


と叫んでいた。


それを聞いた友人は、腹を抱えて爆笑していた。

私の気も知らないで、、、

彼は、昔からこうなのだ。

突拍子もない発言で、いつも私を驚かせる。


彼とは、家が隣同士の幼なじみというか腐れ縁というか

そんな関係である。

彼の名前は、綿霧 隼人

私と同じ、中学一年生だ。

友人は多いくせに、休みの日は私をやたら誘う。

私に気があるのか?

ないないない!絶対無い!!


そういえば、以前こんなことを言っていた。

“みかんと居るときは、素で居られるから楽”

だって。

それには、私も同感である。

腐れ縁だからこそ、お互いを知り尽くしているというか


「おーい、みかん。どうした?立ったまま固まって

 アイス溶けるぞ?」


誰のせいでこうなったと…はぁ、いつものことか。

私は、ベンチに座り直しアイスに無心でかじりついたのだった。


その後、私は用事があったので解散した。


~帰り道~

夜も更け、街灯が道を照らす。

昼間のように、人は居らず静寂が支配していた。

家が近くなった場所で、静寂を破る音がした。


ガン

ガン

ガン


私は、音が気になりはしたのだけど

早く帰ってシャワーを浴びたかったので真っ直ぐ家に帰った。


家に着き、真っ先にシャワーを浴びた。

昼間の隼人との会話を思い出しながら。


「あずき棒が凶器になる…か」


無意識でポツリと呟いていた。


この時は、まだ―――


~翌日~

あれ、今日はまだ隼人が来てないな。


隼人は、毎朝窓からモーニングコールをしに来るのだ。

ほんと、飽きもせずに来ていたのに

来なかったことは、今まで一度も無かった。

いつからか、私自身の朝の楽しみになっていた。

どうしたんだろう。

心配になったから、私の方から行くことにした。

私は、窓からなんて危ないことはしない。

インターホンを押して、玄関から行く

正規のルートを選んだ。


インターホンを押すと、隼人のお母さんが出てくれた。

すんなりと玄関を開けてくれた。

私は迷わず二階の部屋に向かった。


コンコン


二階ノックをする。

返事がない。


「入るよー」


私は、部屋の扉を開けた。


“心ここにあらず”


この表現が的確な顔の隼人が居た。

悩みとは無縁で、バカで、お調子者

それが隼人だったのに、何があったというのだろう。


私が、声をかけても反応がなく

まるでただの屍のようだ。

と思わず言いたくなってしまうほどに。

声をかけてダメならと触れてみた。


「ハッ」


そんな間抜けな声を上げながら、隼人は意識を取り戻した。


その後、何があったのか聞いたのだが教えてくれなかった。

“変な隼人”

その時の私は、そう思うだけだった。


あの時にもっと―――


~数日後~

何事もなかったかのように、隼人は元気だ。

私たちは、今日も駄菓子屋のベンチであずき棒を食べていた。

あずき棒は、中々溶けないから外で食べるには最適なの。


隣で、バカ話をしている隼人に適当に相づちを打ちながら

あの日の夜の音を考えていた。

何でかな、ただの音なのに、気になって仕方ない。


ガン


同じ音が、背後で聞こえた。

私は、とっさに振り返った。

駄菓子屋の店主が、あずき棒を落とした音だった。

なんだ、別の音か。


隼人の声が途絶えたので、横を見た。

青ざめていく顔が目に映った。

大丈夫?と聞くと


「ん、あぁ。暑さでやられたかな」


苦笑いをしながら答えたのだ。

“今日は、一段と暑いもんね”

そんな間抜けな返答をしたことを、今でも鮮明に覚えている。


誰よりも側に居たはずなのに。

誰よりも異変に気付いていたはずなのに。

誰よりも、隼人の助けになれたはずなのに。


この会話を最後に、隼人は消えた。


~翌日~

今日は、いつもより早く目が覚めた。


ドクン


言葉に出来ない違和感があった。

“嫌な予感”

昨日の隼人の表情を思い出す。

私は、急いで隣の隼人の家に向かった。


「う、うそ、、、」


あるはずの家がなかった。

目から涙が溢れかえる。


「うぁ、、、うっぁぁぁぁぁぁ!!」


うっ…吐き気がする…

嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ、、、

なんで、

ねぇ

誰か教えてよ

何処に行ったの

はや

バタッ







『かん、みかん、みかん!』


あぁ、聞き覚えのある声がする

隼人の声にそっくり

でも、隼人は居なくなったんだよね

てことは、ここが死後の世界?

目を開けるのが怖いな

もう少し

もう少しだけ

目を閉じたまま、君のかすかなぬくもりを感じさせて

目を開けると、全てが終わってしまう気がするから


「好きだったよ…隼人…」


もう届くことのない声

こんなことになるのなら、もっと早く伝えるべきだった

気付かないフリをしてた

あの関係が壊れるのが怖くて

当たり前の日常が、これからも続くと思ってた

バカだなぁ、私って

失ってから、君の存在の大きさに気付くなんて


君は、私に返しきれないほど色々くれてたのに

私は、何一つお返しをしてないんだもん


そろそろ、目を開ける覚悟を決めないと

“あの世で、君に会えますように”

そう願いながら

私は、ゆっくりと目を開けた。


見慣れた天井

いつも嗅いでる匂い

ここは、私の部屋?

身体を起こそうとしたら「っ…」

あまりの痛さに顔をしかめた。

ゆっくりと、起き上がり部屋を見渡す。


あぁ、やっぱり私の部屋だ

喉がカラカラだ

何か飲みたい

私は、部屋を出て一階に降りた。

リビングから血相を変えたお母さんが出てきて

私を抱きしめた。

泣いてる、なんで?

泣きながら何かを言ってるけど

ダメだ、聞き取れない

まだ、頭がボーッとする


「水、、、」


聞き取りにくいほど、小さな声で

なんとか絞り出した。

今、私が出せる精一杯の声だった。


お母さんは、私をリビングに座らせると

キンキンに冷えたお茶を持ってきてくれた。

喉が潤い、身体に染み渡る。

徐々に頭もクリアになってきた。

安心したら、お腹が鳴った。

お母さんは、すぐに大盛りチャーハンを用意してくれた。

「こんなに食べれないよ」と普段なら言うのだけど

ペロッと完食をしたのだった。


冷静さを取り戻した私は、お母さんに尋ねた。

何で泣いていたのかを。

お母さんは、一回深呼吸をしてから話してくれた。

私が、家の前で倒れていたこと

倒れてから今まで一週間も経っていたこと

ずっと看病してくれていたこと


全て聞き終わり一つ気になった。

隼人に関して触れていないこと。

お母さんなら知っているかもしれない。

一縷の望みを賭けて、聞いてみた。


「隼人くん?誰?その子。みかんの知り合い?」


え、私の中で何かが崩れ落ちた。

ガラガラ

と音を立てながら


お母さんは、私が傷つく冗談を言わない

それは、よく理解している

だからこそ、受け入れがたい現実を突きつけられている事実のみが

今、私の目の前にある

どういうこと、、、?


私は、勢いよく立ち上がり自分の部屋に向かった。

何か、何か無いの

隼人が存在していたことを証明する何か

部屋中探し回った

無い

何にも無い

諦めかけた直前

窓辺の傷が目に入った


「これって、、、」


よくあるただの傷

皆は、そういうと思う

でも、この傷はただの傷なんかじゃない

この傷は、隼人が窓から来たときに

ドジを踏んで付いた傷

隼人の存在を証明する物はない

でも、痕跡だけはここにある


今の私にとって、それだけで十分だ

痕跡があるのなら、何処かでまだ生きている

その可能性が残ってるのだから

だけど、手がかりがない

ほんとに?

何かあるはず

考えろ私、何でもいい


「音…」


まさか!?

考えるよりも先に身体が動いていた

何度も過ごした思い出の場所

駄菓子屋に向かって


いつもより、遠く感じる

一歩が重い

手がかりがあると信じながら

隼人との思い出を思い出しながら


「バカ、勝手に居なくなるなんて。。。」


隼人を責めるのは筋違いなのは分かってる。

異変に気付きながら、何もしなかったから

罰が当たったんだ

絶対に見つけるから

待ってて


やっと着いた

駄菓子屋に入ると、空気が違う違和感が私を襲った

空気が淀んでる

何、これ

気持ち悪い


ガン

ガン

ガン


音が止まり、奥から店主が出てきた


「おやおや、やっと来たのかい。随分と遅かったねぇ」


手には、あずき棒が握られていた


「大丈夫、一瞬だから」


あずき棒が振り下ろされる

私が、最後に見た光景


ゴン


鈍い音が、駄菓子屋の店内に響き渡るのだった。

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