ハンバーグ 2
皆さんはハンバーグの付け合せはなにが好きですか?
私はにんじんのグラッセが好きです
「こういう時は肉をガッツリ食べたくなるよなぁ」
カズヤはそう言うと用意していたハンバーグのタネを温めたフライパンに投入する。油が小さく跳ねるのを見ながら蓋を閉め、用意していたにんじんを少し厚めに切った。本当は手の込んだ切り方をしたいが、やり出すと止まらなくなるので我慢する。休日にがっつりやろうと決め、にんじんたちを鍋に入れた。そこに被るくらいの水を注ぎ、砂糖とバターをいれ火にかけ軽く混ぜる。バターと砂糖が溶けていくのを見ていたら水が沸騰してきたので慌てて火を弱め、しばらく煮詰めていく。その間にハンバーグをひっくり返そうと蓋を開けば、焼けた肉の香りがふわりと辺りを漂い、にんじんの甘い香りと混じり合うのを見てカズヤは嬉しそうに笑う。
ハンバーグを一度ひっくり返し、焼き目を見ると程よい焦げ目が顔を出す。また蓋を閉じ焼き上がりを待ちつつにんじんを串で容赦なく刺す。一つは味見用、と心の中で言い訳をして口に放り込めば、まろやかな甘さが口に広がり一人唸る。これこれ、この甘さがいいんだよ。にんじんを飲み込み仕上げと言わんばかりに火を強め、ツヤが出るようにしたら付け合せであるにんじんのグラッセの完成。
ハンバーグの方はもう少し時間がかかるのでスープとご飯の用意をする。この国の人達はパンがメインだが、カズヤは根っからの日本人なのでハンバーグにご飯を合わせる。脳内で女神がわーわー騒いでいるが、カズヤは遠くに追いやった。うるさい、誰がなんと言おうとこの店のオーナーは自分なので、何を合わせるかは自分で決めるのだ。文句なんて言わせん! なんて心の中で高笑いしながらご飯とにんじんのグラッセを盛り付ける。ハンバーグに串を刺して火が通ってるか確認すると問題なさそうだ。付け合せが乗った皿にハンバーグを乗せ、ソースをかける。艶のあるソースがさらに食欲をそそり、カズヤは満足気に頷くとレントの元に持っていった。
「おまたせ」
カズヤが持ってきたハンバーグを見てレントは目を輝かせる。目の前に置かれ、レントは喉を鳴らした後カトラリーを手に取った。いただきます、と小さく挨拶をしハンバーグを口に運べば、嬉しそうに咀嚼する。
噛めば噛むほど肉の味が広がると言うのに、何かフルーツが入っているのか、少し甘さが残るソースの味が肉の味を引き立てとても美味しい。付け合せと一緒に食べれば、バターと砂糖がハンバーグをまろやかにし、あまりの美味しさに笑顔が溢れてしまう。
レントはご飯に目をやり、カズヤを見つめる。パンではないのかと訴えているような気がしてカズヤは腕をバツになるようにクロスして抵抗した。納得がいかないのか、レントは少しだけ眉を顰めた後、ハンバーグと共にご飯を口に入れ食べる。そして目を開いた。ご飯の甘みが肉と合うのだ。無言でハンバーグを食べ進めるレントを見てカズヤはほくそ笑んだ。このままいけば、ご飯派が増えるかもしれない。
「ごちそうさまでした!」
グラスを置き、笑顔で皿を返すレントにカズヤはお粗末さまと答える。彼の様子を見る限り、憂いはなさそうだ。
「マスター、俺不安だけどやってみるよ」
「そうか」
「落ちたらマスターに美味しいもん作ってもらって慰めてもらうから」
「落ちること前提で考えるなよ。まさかそれ目当てじゃないだろうな?」
「まさか!」
そう答えるレントの顔に嘘偽りはない。カズヤはレントならできるさと言った後、皿を片付るために奥に引っ込んだ。レントは彼の背中を見て、眩しそうに目を細めた後、扉に手をかける。
街中を軽快に歩いていくレントの姿は、迷いがないように見えた。
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