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8.新生魔王軍第1回会議

「よっしゃー! ここが新しい俺の城だぁぁぁぁ!」


 新たな家の入居当日。内見の時に落ち込んでいたのが嘘のように、魔王はとても興奮している。生まれてからずっと魔王城に籠もって暮らしてきた彼にとって、新天地に引っ越して暮らすというのは新鮮で楽しいことなのだ。


「でも二人で暮らすにはちょっと狭いっすね。四畳半じゃ、布団を二枚敷いて寝るのもきつくないっすか?」


「お前がそう言うと思って、しっかり寝床を用意しておいたぞ」


 そう言うと、部屋の隅にある襖を開ける。


「うわぁ、押入れじゃないっすか!」


「俺が部屋で寝て、お前が押入れで寝れば完璧だ。どうだ? 自分のスペースがもらえて嬉しいだろう?」


「嬉しいっす! これでドラえもんや邪神ちゃんとお揃いだぁ〜!」


 ゾンビは勢いよく押入れに飛び込み、自分好みに飾り付けを始める。一瞬のうちに、キラキラのギラギラにデコられた。


「さ〜て。引っ越しも一段落したことだし、新生魔王軍の結成式でもやるか」


「新生っすか?」


「魔王軍は一度壊滅したからな。心機一転、一からやり直すということで新生魔王軍だ!」


「なるほど。やりますか」


 ゾンビが部屋の中心にちゃぶ台を置くと、魔王がその上に乗る。


「我は人間共を滅ぼし、この世界を魔族の楽園にすることを宣言する!」


「我ら家臣は魔王様をお支えし、心から忠誠を誓います!」


「よし。新生魔王軍結成だ!」


「お〜!」


 大規模な野望への道は、小規模な魔王城から始まった。


「では、これより新生魔王軍の第一回会議を行う」


「え、会議?」


「そりゃ魔王軍といったら会議だろ。構成員が二人にまで減って大ピンチなんだから、今後の方針について話し合わないと」


「ふむふむ」


 二人はちゃぶ台を挟んで向かい合うように座った。


「う〜む、でも寂しいな。今までは四天王を集合させて賑やかに会議をしていたが、今はお前と二人きりだもんな」


「なら、私が一人四役やりますよ! 演技は得意なんで任せてください!」


「どれ。やってみてくれ」


 軽い発声練習をすると、ゾンビは演技を始める。


「会議なんて面倒くさい〜。僕もう帰っても良い?」


「魔王様の御前であるぞ。失礼な言動は慎め。でないと我がお前を成敗する」


「データによれば勇者に勝てる確率は99.9%。ぜひとも、私の考えた作戦をお使いください」


「ひゃ〜っはっはっは! あいつら全部殺しても良いのか? 血だ! 血を見せろぉぉぉぉ!」


 圧倒的な演技力で四天王を見事に演じきった。声も台詞も、何もかもが完璧だ。


「お前すげえな! 目の前に本物の四天王がいるかと思ったわ! お前、四天王に昇格させるわ!」


「マジっすか?」


「ああ。雑用係から四天王へ大出世だ。おめでとう!」


「やった〜! 友達に自慢できるっす!」


 魔王軍に新しい四天王が誕生した。なお、残りの三人が埋まる目処は立っていない。


「では四天王ゾンビよ。まずは我が魔王軍の現状を確認しよう」


「幹部は全滅、一般戦闘員は離散で人材はゼロ。魔王様本人は大幅に弱体化。そして、何も持たずに慌てて逃げてきたので財産もほとんどありません!」


「つまり問題は、人材、俺の戦闘力、財産の三点だ。これを一つずつ改善していかないといけないな」


「全部、簡単には改善できそうにないっすけどね」


「まあ、それはゆっくり考えていくとしよう」


「そんな悠長なこと言ってられますかね? 王国軍は既に魔族の集落をいくつも陥落させているみたいっすよ。残っている集落は、もう数えられる程しかありません」


「え、もうそんなことになってんの!?」


 世間知らずな魔王とは違い、ゾンビは情報収集を怠らない。


「この地図を見てください。このバツ印がついている所は全部火の海っす」


「ええ、ヤバくね……」


 魔族の領地が描かれている地図には、一面のバツ印で埋められている。そして、魔王城の直轄領には一際目立つ、太く大きなバツ印がつけられていた。


「旧魔王城は王国軍に接収され、王国の第二の首都みたいになってるみたいっす。多くの兵士が常駐していて、武器や兵糧が大量に運び込まれています」


「あれ? 今、俺達がいるフーコの街って旧魔王城に割と近くね?」


「そうっすね。正直、いつ攻撃されてもおかしくないと思います。まあ、いざとなったらテレポートで遠くに逃げれば良いですし」


「でも、この街にたどり着いたのも何かの縁だし、ここが滅びるのは見たくない。サイクロプスのおっさんとか、建設現場の奴らとも仲良くなってきたしな」


「では、この街を守るために私達が強くならないとですね!」


「そうだな。王国軍が本格的に侵攻してくる前に魔王軍を復活させなければ」


「先程挙げた三つの問題点を改善するためにどうするか、すぐに考えましょう」


 机の上にノートを広げ、本格的な話し合いが始まる。


「魔王軍を復活させるには、まず人材が必要だよな。魔王の俺が勧誘すれば、すぐに集まるんじゃないか?」


「魔王様って基本的に城に引き籠もってばかりで、民衆にあまり顔を見せませんでしたよね。だから魔王様の顔を知らない人の方が多いっす。身分証も無いので、魔王様が本物の魔王様であることを誰も信じてくれないと思います」


「ぐぬね…… ならば金で釣って雇うしかないか。でもアパート暮らしの俺達にそんな金は無い」


「魔族の王として申し分ない圧倒的な魔力を見せつければ、あなたが魔王様であることを皆信じてくれるのでは?」


「だいぶ弱体化しちゃってるから、今のままじゃ無理だなぁ……」


「魔王様の力を取り戻す、または大量のお金を手に入れる。それで人材を集める。これが当面の目標になりそうっすね!」


「よ〜し、頑張るぞ!」


 問題点が明らかになり、魔王達は目標に向かって邁進することになった。


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