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40.魔王軍過去編④

「……そして彼らはいつまでも幸せに暮らしました。おしまい。どう? 面白かった?」


「うん!」


 魔王は自室で、息子に絵本の読み聞かせをしていた。最近は親子で団らんする時間を多く確保できており、二人の絆は今までよりも強くなっていた。


「親子水入らずのところ失礼します!」


 ゾンビが大きな箱を担いで、部屋の中に入る。


「魔王様、ついに完成しました!」  


「千年に一度の天才鍛冶職人に頼んでいた奴?」


「はい!」


「楽しみにしてたんだ〜! 早速、開けても良い?」


「危険な物なので、万が一に備えて息子さんを別の部屋に避難させてからの方が良いかと」


「そうだね」


 息子が安全な場所まで移動したことを確認すると、魔王はワクワクしながら箱を開ける。

 中に入っていたのは、禍々しいオーラを放つ武具の数々だ。


「こ、これが邪神器……?」


「はい。史上最高の鍛冶職人が己の全てをつぎ込んで作った至高の逸品。これ以上の傑作は千年、一万年経とうとも生まれることはないと言っていました」


「あのさ、この武具から得られる力は本物なんだろうけどさ……」


 邪神器を目の当たりにした魔王は、頭を抱える。


「何か問題でも?」


「何というか厨二っぽくない? 全体的に紫で、宝石ギラギラで、何かドラゴンの模様とか掘ってあるし……」


「厨二……」


「まあ、厨二なのは百歩譲って、鍛冶職人の趣味だとして許容するよ。でも、この鎧のデザインだけは許せん!」


「すごく格好良くて、ナイスな鎧だと思いますけど」


「どこが! 面積がめちゃめちゃ小さくて、ほとんど防具としての機能を果たしてないじゃん! ほぼ、おっぱい丸出しだよ!」


「魔王様の大きくて美しい胸を相手に見せつけることで、気を散らすという意図があるらしいっすよ」


「つべこべ言わずに、さっさと試着してください!」


「わっ、きゃあ!? やめて!」


 ゾンビは魔王の服をひん剥いて全裸にする。そして、強制的に邪神器を身に着けさせる。

 物凄くセクシーな姿になった。


「うわ〜! 超似合ってます!」


「ええ?」


「私が男だったら、間違いなく押し倒して犯してます!」


「大問題だわ! この装備、リテイク希望!」


「残念ながらリテイクは無理っすね」


「何で?」


「鍛冶職人さん、この装備を受け取った直後、ちょうど寿命が来て逝っちまったんすよ。かなり年寄りでしたので……」


「ご愁傷様です……」


 魔王は数珠をこすりあわせて、冥福を祈る。


「それじゃあ、このダサくてエロい邪神器を使うしかないってこと?」


「そうっすね」


「絶対、嫌だ! 封印しておく!」


 後日、邪神器はダンジョンの奥深くに厳重に保管された。


「ところで、魔王様。魔王軍の目的であった魔族の統一は終わりましたが、これからはどうします?」


「魔族を統一したといっても、強い力で無理矢理従属させただけで、心は全然バラバラだからね。いつ戦乱に逆戻りするかわからない。しばらくは内政をガチって、魔族全体の支配を安定させないとね」


「魔族達は各種族ごとに集落を持っていて、そこにまとまって住んでいます。だから種族間の交流が少なく、心理的な溝が埋まらない。魔族をまとめていくためには、そこをどうにかしないといけませんね」


「この世界には、まだまだ未開拓な土地が多い。そこに、新たな集落を開発しようと思う。他所からの移住を積極的に支援して、あらゆる種族が共存する理想郷を作る。そのような場所を徐々に増やしていき、ゆくゆくは種族間の壁を完全に撤廃していきたい」


「大規模な計画になりそうっすね」


「私一人じゃ不可能だから、官僚になりうる人材を多く登用する。種族や身分関係なく、有能なら高い給料を出すよ!」


「私、募集をかけてくるっす!」


「よろしく!」


 魔王による魔族大改革が始まった。






 各地に魔王直属の官僚を派遣し、改革を実施。種族間の交流も増え始め、魔王を中心とする支配体制が、少しずつだが進んでいった。

 また、魔王のワンマン状態であった魔王軍の組織固めも行い、彼女が急死したとしても息子が成人するまでの間は軍としての体裁を保てるくらいの体制が作られた。


「とりあえずは魔族をまとめきることができた。あとは城下町の発展でもやろうかな」


「もう十分発展してると思うんすけど」


「まだまだだよ。私の出身地はこんな物じゃなかった」


「では城下町を魔王様の出身地のように作り変えると?」


「私だってそこまで頭が良いわけじゃないから、すぐには無理だろうけど、時間をかけて少しずつあっちの世界のように変えていきたいな」


「どんな感じなんすか?」


「まず食文化が発達してるよね。すかいらーくっていう大企業があって……」


「ふむふむ……」


「……それとあと、娯楽も多いよ。漫画っていう面白い本があって、中でもおすすめは邪神ちゃん……」


「ほうほう……」


「他には……」


 魔王は自分の世界の文化をざっくりと説明した。


「へ〜、すごいっすね! 想像もつかない程の超技術っす!」


「でしょ〜? 私は寿命が限られているから、一生のうちで向こうの世界を再現するのは難しいだろうけど、親子何代もかけて実現できたら良いなって。ゾンビは寿命無いんでしょ? あなたには、そのサポートをお願いしたいんだけど」 


「あっ、う〜っす…… 善処します……」


「あんま乗り気じゃなさそうだね」


「正直、ダルいっすね」 


「まあ、そう言わずにさ。うちの子のためにも頑張ってよ」


「はいよ〜」


 魔王直轄領では文化レベルが伸びていき、現代の魔王軍に少しずつだが近づいていくのであった。






 魔王城と同じくらいの規模の城。そこの玉座には白髪の老人が座っている。世界最大の国家を治める国王だ。


「国王陛下、ご相談が」


「申せ」


「はっ!」


 国王の前に跪いているのは、セイン・メラルド伯爵。国の重鎮で、国王からの信頼も厚い。キハラヤスやゴモラの先祖にあたる。


「我らの王国は、陛下の代になってから急速に勢力を拡大しました。もはや、人間の治める他国などは脅威になりえないでしょう」


「うむ。『人間』の国はな…… 人間以外に脅威となる存在が現れたのだな」


「はい。ここ最近になって、魔族が圧倒的な速度で発展を遂げています。我が王国の成長スピードも凌駕するほど急速にです」


「それほどまでとは……」


「今までは魔族間の各種族が対立していたため、人間に何かをしてくる心配はありませんでした。しかし、魔王という存在が現れ、魔族は一つにまとまってしまったのです。これまで魔族同士で向けあっていた殺意が、何かの拍子にこちらに向いたとなると……」


「考えただけでもぞっとする。セイン、何か対策は無いのか?」


「魔王軍が我が王国に攻めてくれば甚大な被害が生じます。それならば、攻められる前にこちらから先制攻撃をしえ、魔族共を滅ぼしましょう」


「魔族は手強いのであろう? 上手くいくのか?」


「奴らは今、魔族間の内紛が無くなり平和ボケしています。人間が攻めてくることなど、考えていないでしょう。その隙をついて、速攻でかたをつけるのです。王国軍の戦力を一気に投入すれば必ず勝てます!」


「相分かった。お前の言う通りにしよう」


 魔族と人間の長年にわたる戦いが幕を開けた。


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