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34.復興作業

「肥料はこれを使え! 錬金術で作られた特殊な肥料だから、荒れ果てた土地でも何とかなるだろう。でも、めちゃめちゃ貴重だから大事に使えよ!」


 炎天下の中、城下町の畑で、魔王は大声で指示を出す。


「魔王様、上手くいってますか?」


 ゾンビは日陰でジュースを飲みながら尋ねた。


「まあ何とかな。城下町の住人が食べる分の食糧はまかなえそうだ。壊された家も順番に復旧している。この調子でいけば、王国軍が攻めてくる前の状態に戻せそうだ」


「お〜、魔王様なかなかやりますね」


「当たり前よ!」


 再び魔王城の主となり、王者としての自覚が芽生えた。それから魔王は寝る間を惜しんで働き、魔族のために国を良くしようとしている。


「ただ、こちらが復興作業をしている間に、王国軍も体制を立て直していると思います。もう一度、攻められたとしたら、守りきれますか?」


「それがちょっと微妙なんだよな。いかんせん、人手が足らん」


 魔王軍の連戦連勝の噂は各地に広がり、魔王に仕えたい者がどんどん集まってきている。しかし、それでも全盛期の人数には届かない。


「人間の冒険者どもが、魔族の領内に平気で足を踏み入れて、狩りまくってますからね。王国軍なんかは、街一つ分の住人を皆殺しにしたりしてますし」


「人口は減る一方だ。どうにかして改善したいんだが、何か思いつくか?」


「少子化対策ってことっすか? 簡単っすよ。ラブホテルを建てまくって、あとは避妊具の製造を禁止しましょう。子どもがバンバン生まれますよ」


「おい、こら!」


「ぐえっ!」


 ゾンビの頭にチョップを入れる。  


「もっと真面目に考えろ」


「ぐぬぬ…… 今後の動向を注視しつつ、検討に検討を重ねて、検討を加速させましょう」


「注視と検討しかしてねえじゃねえか。そのまま増税しそうな勢いだな!」


「どこの与党っすか、それ」


「お前じゃい!」


 魔王は再び、ゾンビをチョップする。


「頼むから、まともな改善案を出してくれ」


「だいたい簡単に改善案が出るなら、少子化になんてなりませんよ」


「そうりゃそうだけどよ…… でも何もしないわけにはいかんだろ」


「なんで、子どもが増えないかというと、人間にすぐ殺されるからなんすよ。戦いに継ぐ戦いで、生活費もカツカツ。こんな状況で子育てしたいなんて誰も思わないでしょう」


「あ〜」


「安心して子育てができるように、人間を魔族の領内に絶対に入れないこと。そのための圧倒的な軍事力が必要ということになります」


「軍事力を増強しようにも、そのための兵士が足りないんだよ」


「外の集落から魔王城の城下町への移住を推進しましょう。そしてその方々に魔王軍に入っていただく。お金をちらつかせれば乗ってくる者は多いと思いますよ」


「魔王軍の資金もそんな多いわけじゃないんだけどな……」


「国を富ませるための先行投資っすよ。最悪、魔族の有力者達からお金を借りましょう。エルフの女王様とか、頼み込めば少しは協力してくれますよ」


「あい、わかった。やろう」


 魔王は大量の軍資金を投入し、移民の奨励を始めた。






 内政を本気でやり始めてから、かなりの時が経過した。城下町には活気が戻りつつある。

 魔王とゾンビは、そんな城下町の視察をしている。


「いやぁ〜、思ったよりたくさん集まったな」


「魔王軍の給料を底上げしたお陰で、どうするか迷ってた層も加入してくれました。お金はケチっちゃ駄目でしょう?」


「だな。人手が集まったお陰で産業が発展し、前よりも多くの金が手に入る」


 城下町には大きな畑が広がっており、そこで多くの魔族が農業に勤しんでいる。肥料の研究にも多くの費用が投入され、農業の効率が大いに上がっている。


「そして机の奥深くに眠っていた、母さんの手帳。これがすげえ役に立つ」


 先代の魔王が残した手帳には、工業に関する情報が書いてあった。動力となる魔力をどのように補うか、どこにどれだけの人員を配置するか、どんな時にどんな物の需要がでてくるかなど、とにかく細かく書き込まれていた。


「特に装備品の工場がガチですげえわ。あれが魔王軍の戦力を何倍にも押し上げた。剣や鎧だけでなく、銃火器も量産できるんだぜ。母さんは、面白い物を考える」


「先代は、頭の回転が早かったっすからね。皆から異次元の存在と崇められていましたよ」


「ゾンビ、この手帳を見つけてくれてありがとうな。お陰でめちゃめちゃ助かったぜ」


「魔王様の机、死ぬほど散らかっていたので探すのが大変でしたよ。もっと整理整頓してください」


「気をつけます……」


 二人は、周辺の見回りを続ける。


「それにしても本当に賑わってるな。いつどこを歩いても誰かしらいるぞ」


「でも人口が増えればヤバい奴の人数もそれだけ増えますので、治安が悪くなりますよ。その辺は大丈夫っすか?」


 実際に移民を受け入れ始めた初期の頃は、荒れに荒れまくった。首狩り族はその辺の通行人の首を狩って遊ぶし、サキュパスは平気で路上でエロいことをしていた。

 それは一見、異様なことかもしれないが、彼らの故郷では普通のことだった。大勢の文化の違う者達が一箇所で暮らすのは楽なことではない。


「色々混乱はあったけど、ばっちり対策したからもう大丈夫だ」  


「どう大丈夫なんすか?」


「ほら、あそこにめちゃめちゃ怪しい奴がいるだろ。あいつをよ〜く見とけ」


 二人の視線の先には一匹のゴブリンがいる。白目を剥いて、舌をダランと垂らしながら歩いており、見るからに怪しい。


「おちんちんビローン!」


 ゴブリンはわけのわからないことを叫ぶと、ズボンを下ろして下半身を露出した。


「うわ、変態じゃないすか。こんな奴がはびこっているとは、世も末っすね」


「黙って見てろ。すぐ解決するから」


 魔王がそう言った直後、変態ゴブリンは絶命した。生首がその場に転げ落ちる。


「ひゃっはー! 犯罪者の首ゲットー!」


「うひょー! うちのオブジェにしようぜ!」


 物影に潜んでいた無数の首狩り族が、ゴブリンに飛びかかり、殺害したのだ。早速、狩り取った首を飾り付けしている。


「首狩り族に治安維持の仕事を任せたんだ。少しでも犯罪の臭いがしたら、あいつらが殺しにくるぜ。ここ数ヶ月で犯罪件数はグッと減った」


「リコリス・リコイルの世界観じゃないっすか。一見平和だけど、実はとんでもないディストピア」


「治安が維持されるならそれで良いだろ。首狩り族も趣味の首狩りを楽しめて、Win-Winだ」


 首狩り族は首を狩ることが生きがいなので、首狩りをやめることはできない。やめさせられないのなら、有効活用してやろうという逆転の発想である。


「さあ、町をもっと良くするぞ〜!」


 内政に目覚めた魔王は、民のために更に邁進していく。


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