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31.反撃開始

 魔王はふかふかのベッドで眠っている。窓から朝日が差し込み、目を覚ます。


「おはようございます。魔王様」


「ふわぁ〜、おはよう。良い朝だなあ!」


 刑務所のようなアパート暮らしから一転、魔王達は街で一番大きな屋敷に引っ越した。自らが魔王であることを証明できたことにより、街の人々に新たな家を用意してもらえたのだ。


「さあ、魔王様。きちんとした正装に着替えてください」


「今日何か用事あったっけか?」


「新たに魔王軍に加入してくれた方々と会うんですよ!」


「ああ、そうだったな。全部で何人くらい来そうだ?」


「軽く千くらいは」


「せ、千!? 屋敷の中に入りきらねえだろ!」


「外の広場で集まることになりそうっすね。今日は天気も良いですし、何とかなりそうっすよ」


「なら、良かった」


「私、会場の設営とかしとくんで、魔王様も準備できたら来てくださいね〜」


「ほいほ〜い」


 魔王は手早く身支度を済ませると、広場へ向かった。






「皆! 今日はよく集まってくれた!」


 広場に用意されたステージの上に立ち、魔王が大声で群衆に呼びかける。


「魔王様だ!」


「本物だ!」


「サイン欲しい!」


 人々の黄色い声援が惜しみなく送られる。今まで人前に姿を現さなかった魔王を生で見られるのだ。その興奮は大きい。


「ここにいる全員を魔王軍の戦闘員として歓迎しよう! 俺はこれより、王国軍に攻勢をしかける。お前達、俺についてこい! 手柄を立てれば、褒美は思いのままぞ! 金でも土地でも何でもくれてやる!」


「「「うぉぉぉぉ!」」」


 群衆達は大いに湧き上がる。貧乏人でも己の腕一本で成り上がる最大のチャンス、それが戦争だ。歴史上にも戦争で成り上がってきた人物は多くいる。


「魔王様、魔王様……」


 壇上の魔王に、ゾンビが耳打ちで話しかける。


「そんな約束しちゃって大丈夫なんすか? 褒美にあげる金とか土地はどうやって調達するつもりで?」


「安心しろ。金ならエルフの女王様からたんまりもらった。土地は、これからの戦争で王国軍の土地を奪えば良い」


「勝てた場合の話っすけどね」


「大丈夫だ。確実に勝てる!」


 今の魔王には自信がある。王国軍相手に何度も勝利してきたし、邪神器の力、そしてついてきてくれる仲間達がいる。負ける気がしない。


「最初の目標は魔王城の奪還だ! やはり魔王軍には魔王城が無ければなるまい! お前達、覚悟は良いか?」


「「「うぉぉぉぉ!」」」


「よ〜し、準備に取りかかれ!」


 魔王軍は急いで戦闘準備を始めた。

  





 戦闘の準備を整え、ついに出撃当日となった。魔王が現れたという情報を聞きつけた魔族達が各地から参集し、その数は一万にまで膨れ上がった。

 それでも、魔族のほんの一部。魔王の力を信じきれず、未だ日和見を続ける者が多くいる。


「少し物足りない気もするが、俺が前線で戦えば何とかなるか」


「お〜い、魔王君」


 後ろから肩をちょんちょんとつつかれる。  


「久しぶり!」


「お、ルーシーか! 一緒に戦ってくれるのか?」


「うん。エルフの戦闘員達も、ちょこっとだけ連れてきたよ。本当は全軍を送り込みたかったんだけど、うちの国も戦後復興とか色々と忙しいんだよね」


「エルフは普通の魔族の何倍もの戦闘力がある。少人数でもすげえ助かるぜ!」


「魔王君にどうしても、会いたいって子を連れてきちゃった。会ってあげて!」


 ルーシーの後ろから、一人のエルフがひょっこり顔を出す。


「魔王様、こんにちは。私のこと、覚えていますか?」


「お、メルじゃん! お前がくれた邪神器のお陰でこの街を守ることができた。本当、感謝だよ」


「もっともっと魔王様のお役に立ちたいので、助太刀にやってきました。私、頑張ります!」


「それは頼もしいな!」


「魔王様、魔王様。そろそろ時間っす」


「おっ、そうか。皆、こっち注目!」


 魔王は拡声器を使って呼びかける。


「俺達はこれから魔王城の奪還へ向かう。長く苦しい戦いとなるだろうが、勝てば栄光を掴める! お前達、出陣だぁぁぁ!」


「「「おぉぉぉぉ!」」」


 魔王軍は大規模な遠征を開始した。






 フーコの街から出て数日歩くと、王国軍の砦にたどり着く。


「俺が砦をぶっ壊す。中から出てきた敵兵をお前らが叩き潰せ!」


 魔王が砦に向かって手をかざすと、ペンダントが光り、次の瞬間には砦が爆散する。中にいた兵士達は何が起きているのかわからず固まってしまう。魔族達がそれらを殺していく。


「わざわざ部下に戦わせず、魔王様が邪神器の全部殺しちゃえば良くないっすか?」


「いやそれがさ、メルに聞いた話なんだけど。邪神器って一つだけだと、扱える魔力には限りがあるらしい。魔力を使い過ぎると、回復するまでしばらく使えなくなってしまうんだ。ノスファルドとの戦いの時、途中でバテてしまったのはそのせいだ」


「もっと大きな戦いに備えて魔力を温存しておきたいというわけっすか?」


「その通り。あと、部下達の戦闘力を確認しておきたいというのもあるな」


「ずいぶんと余裕っすね」


「ああ。お茶でも淹れてもらえるか?」


「ういっす」


 魔王はお茶を飲みながら戦いの行方を見守る。


「メルちゃん。魔王君が見てるよ。良い所を見せないと!」


「わ、わかりました! 頑張ります!」


 ルーシーに励まされると、メルは腰から短刀を抜き取る。そしてなんと、それをペロリと舐めた。


「さ〜て、殺すとしますか」  


 目にも留まらぬ動きで敵中に飛び込むと、高速で短刀を振り回す。一振りするごとに死体がどんどん増えていく。


「ひゃははははは! 血を! もっと血を見せてください!」  


「魔王様、魔王様。メルちゃんってとんでもないバーサーカーみたいっすね」   


「単身で元四天王に勝利して、邪神器を手に入れるような奴だもんな。顔は可愛らしいからアリかもと思ってたけど、流石にあれは怖過ぎるわ」


 その後も特に苦戦することなく、砦に詰めていた王国軍を壊滅させることができた。


「よ〜し、休憩したら次行くぞ〜!」


 魔王軍は悠々と進軍を続けていく。


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