29.第二次フーコ防衛戦
二万人を超える王国軍がフーコの街のすぐ近くに布陣。魔族達は軍備を増強していたが、それでも四千程度。数的不利をカバーするため、前回と同様に川と山の上の砦を利用して戦うことになる。
「進めー!」
ノスファルドが号令をかけると、兵士達は街へ向かって攻撃をしかける。
「魔族達は思った以上に狡猾だ! 罠がしかけられていないか気をつけながら進むのだ!」
王国軍はノスファルドの指示通り慎重に、それでいながら迅速に前進していく。そして、防衛ラインである川の前にたどり着く。
「安直に渡河しようとすれば、遠距離攻撃の餌食となるだろう。私が道をこじあけてやるから、その隙に渡れ!」
ノスファルドは弓を引き絞り矢を放つ。そして、飛んでいった矢に向かって魔力を込めた。すると矢は何十本にも増殖し、魔族達の急所を貫く。
「何だ、あいつ!」
「貴族の癖にめちゃめちゃ強え!」
ノスファルドの弓に恐れおののき、魔族達は射程の外に逃げる。
「さあ、道は開いたぞ! 皆の者、進め!」
「「「うぉぉぉぉ!」」」
王国軍は川を渡り始める。魔族達は妨害を試みるが、ノスファルドの矢によって仕留められてしまう。二万の兵は全員が渡河を完了させた。
「次はあの山を落とすぞ。柵を設置して要塞化しているから、安易には攻められん。だが、私ならそれを解決できる」
ノスファルドは山の麓から天に向かって多数の矢を放つ。その矢は全て山頂にある砦に命中。更に魔法の力でそれらの矢は発火した。炎はどんどん燃え広がり、砦を焼き尽くしていく。
「これじゃあ砦が使い物にならん!」
「俺達も焼かれちまう前に退くぞ!」
魔族達は山を放棄して、街へ引き上げた。これにより全ての防衛ラインが崩壊し、フーコの街は丸裸にされてしまった。
「ノスファルド様。いよいよ街を攻め落としますか?」
「いや、もう一度だけ降伏勧告を送るぞ。私は虐殺をしたいわけではない。犠牲無く拠点を制圧できるのならば、それに越したことはない」
「降伏の条件はいかがいたしましょう?」
「魔族の戦争の中心となっている人物、すなわち議会のメンバー全員の身柄。それを差し出せば、他の奴らは解放する。この街は退去してもらうがな」
「ではその旨を書状に認めて、あちら側に渡してきましょう」
「ああ。魔族には一日の猶予を与える。それまでに返答が無ければ総攻めをしかける」
「かしこまりました」
ノスファルドの使者はフーコの街に潜入し、議会へ向かった。
王国軍からの降伏勧告が届き、議会では大激論が交わされていた。
「この戦いに勝ち目は無い! 民衆の命だけでも助けるためにも、我々の身柄を差し出すべきだ!」
「そうだ、そうだ! 降伏しよう!」
「王国軍が約束を守ると思うか? 我らの身柄を確保したら約束を反故にして、民衆を虐殺するぞ! それくらいなら、徹底的に戦おうじゃないか!」
「そうだ、そうだ! 徹底抗戦あるのみ!」
どちらの意見も筋は通っている。だからこそ、話し合いは平行線のまま進展しない。
そのまま丸一日が経過してしまった。
「約束の時間が来ました。皆様の返答をお聞かせ願えますか? ノスファルド様にそのまま報告いたします」
「ま、待ってくれ! まだ結論が出ていないんだ。もう少しだけ時間をくれ!」
「もうさんざん待ちました。何の返答も得られなかったと、ノスファルド様に報告させていただきます」
すがりついてくる議長を払いのけ、王国軍の使者はノスファルドの陣へ向かった。




