23.エルフの女王
「んあ〜。やることねえな〜」
「何も無いっすね〜」
魔王達がレルヘンに滞在してからかなりの時が経過した。
魔王とゾンビは、ルーシーの家でひたすらゴロゴロしている。
「ねえ、二人共! ずっと寝てないで、何かしようよ! お外に出ようよ!」
「え〜、ダルいわ。寝てたい」
「私も今日はダラダラしてたいっす」
「そんなこと言わずに外出しよう! 観光してエルフの文化に触れよう!」
「もう一通りこの国は観光し終えたからもう良いよ」
「古物商さんが帰ってきたら教えてください。それまでは休憩っす」
「んも〜。この引き籠もりどもめ! 日の光を浴びないと体に悪いよ! 引っ張り出してやる!」
ルーシーは二人の体を引っ張る。一人の力で二人の体を動かすなど不可能だと思われたが、徐々に玄関に向かって引きづられていく。
「ちょ、待てよ! その華奢な体のどこにそんな怪力が!」
「エルフは力が強いんすよ! このままじゃ、至福のゴロゴロタイムが強制終了されちゃうっす!」
「くそっ! 外になんか出てたまるか!」
二人は手足をバタバタさせて全力で抵抗するが、それも意味をなさず、ついに外まで引きずり出されてしまった。
「ほら、お出かけだ! どこに行きたい?」
「どこにも行きたくねぇ……」
「そんなこと言わずにさ!」
家の前でそんなやり取りをしていると、「カンカンカン」と鐘を叩く音が街中に鳴り響く。
「うわ、うるせえ! 何だ、これ!」
「警報だ! 何か緊急事態が起こったみたい! 行かないと!」
「行くってどこに!?」
「お城だよ! そこそこの強さはありそうだし、二人もついてきて!」
三人は城に向かって、全力で走って行った。
「おい、怪しい奴め! 止まれ!」
城の目の前に到着したが、魔王は門番に止められてしまう。フーコの街にいる間も何回も職質をくらっているので、不審に見られやすいのだろう。
「お〜い、門番ちゃん」
魔王の後ろからルーシーがひょっこり顔を出す。
「あっ、ルーシー様!」
「こいつめちゃめちゃ怪しいけど、私のツレだからさ。通してやってもらえないかな」
「かしこまりました!」
門が開かれ、三人は無事城の中に入ることができた。
「あの門番、めちゃめちゃ畏まってたけど、ルーシーって何者なの?」
「私ね〜、そこそこ偉いんだよ。部下もたくさんいるし、給料もけっこうもらってるんだよ」
「その割には質素な家に住んでるよな」
「お金がなかなか貯まらないせいでね」
「たくさん給料もらっても、ギャンブルで使い果たしちまうのか。どうしようもないな……」
城内を歩き続けると、一際きらびやかな部屋に到着する。玉座の間だ。
玉座には王冠を被ったエルフの女王が座っている。他のエルフよりも身長が高く、スタイルが良い。そして顔が大人びている。
「女王様、緊急事態と聞いて駆けつけて参りました!」
「来たかルーシー。お前が一番乗りだ。隣にいるのは…… ゾンビか?」
「お久しぶりっす! 女王様!」
「え、ゾンビ。お前、エルフの女王と知り合いなのか?」
「先代の魔王様がエルフ族と会談する時、私もよく同席させてもらってたので」
「母さん、こいつのこと気に入りすぎだろ。まあ、俺もなんだけど……」
「その変な男は誰だ? 見るからに怪しそうだが」
「この人に関してはよくわかんないです。ゾンビちゃんの取り巻きらしいですが」
「俺は魔王だ! れっきとした魔族の王!」
「魔王ねぇ……」
エルフの女王はじっとりとした目で魔王を見つめる。
「彼女に息子がいるとは聞いていたが…… そいつには少し彼女の面影があるような、無いような…… う〜む…… まあ、良い。お前が本当に魔王ならば、これからの働きで証明してみろ」
「おう! いくらでも働いてやるぜ!」
「ところで女王様。この国に起きた緊急事態とはどのようなことでしょう?」
「ああ、そのことなのだがな……」
女王が話そうとした瞬間、玉座の間の扉が勢いよく開かれる。そして、大量のエルフが室内になだれ込む。
「「「ただいま参上しました。女王様!」」」
「皆、揃ったか。では話すとしよう」
女王は神妙な面持ちで立ち上がり、口を開く。
「前々から不穏な動きを見せていた王国軍だが、ついに我らエルフ族に対して宣戦布告をしてきた。もう既に進軍を開始している。かなり大規模な動員をかけたようで、その兵数は五万を超えるそうだ」
エルフ達はざわつく。この国が王国軍の侵攻を受けるなど、長いこと無かったからである。
「敵の大将は誰だ? ノスファルドか? 奴は俺が絶対に殺してやる!」
「いや、ノスファルド公爵は現在別地域で活動しているらしい。今回の大将はキハラヤスとかいう奴だ」
「チッ、小物かよ。でもまあ、小物だろうと貴族の首であることは変わりないか。キハラヤスの首、俺が取ってやる!」
「ふふふ、頼もしいな。皆の者、この男に負けぬよう武功を上げるのだ!」
「「「おう!」」」
エルフ達はすぐに戦闘準備に取りかかった。




