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22.観光

「せっかく遠くからはるばる来てくれたんだし、エルフの国の魅力を隅から隅まで紹介しちゃうよ〜!」


「よっ、待ってました!」


 ルーシーは二人に国を案内する。





「まずは、ここ!」


 赤、白、黄色、色とりどりの花が広がっている。どれもこの世の物とは思えない美しさで、エルフの国がいかに神秘に満ちているかを表している。


「花畑か。綺麗だな!」


「ただの花畑じゃないよ。ここの花は強い魔力のこもった花で、ポーションとかに使われてるんだ!」


「はえ〜、すっごい。ちょっともらっても良いか?」


「駄目! 乱獲する人が多いから最近規制が厳しいの! 国の許可を取らないで摘むと、逮捕されるよ!」


「まあ、そうか。便利な花を誰でも取り放題にすると、あっという間に絶滅しちゃうもんな」


「そういうこと! 環境保護は大切だよ!」


「SDGsだな」


「魔王様得意気に言ってますけど、SDGs全部言えるんすか?」


「一つも覚えてねえよ」


「これだから低学歴は困るっすね」


「おい、学歴煽りやめろ! 一番効くんだよ!」


「や〜い、低学歴!」


「この野郎ぉぉぉぉ!」


「なんすか? やるんすか?」


 魔王とゾンビは戦闘態勢に入る。美しい花畑で野蛮に戦う魔族の姿は実に醜い。


「二人共、くだらないことしてないで次いくよ〜!」






 次に訪れたのは繁華街。様々な露店が立ち並んでいる。


「うわ。魅力的な物が多くて目移りしちゃうな。エルフの文化って俺達より優れてるかも」


「私、あそこの串焼きを食べてみたいっす!」


「おお、美味そうだな! 俺も食べたい!」


「へへ〜ん。ならば、この私が奢ってあげちゃおう!」


「ルーシーちゃん、太っ腹! ありがとうございます!」


「百年前、ゾンビちゃんが借金の肩代わりをしてくれたお返しだよ!」


「あ〜、そんなこともありましたね!」


「え、ルーシーって借金するようなタイプの人なのか?」


「一時期どうしようもなく、お金に困っちゃって。まあ色々と人生が激変した時期だったから」


「へ〜、エルフも大変なんだな」


 ルーシーは露店に行き、焼いた肉が刺さった串焼きを三本購入した。


「はい、めしあがれ!」


「「いただきま〜す!」」


 ゾンビと魔王は口いっぱいに串焼きを頬張る。


「美味いっすね!」


「ジューシーな肉汁が噛めば噛むほど口内に広がる。今まで食った肉の中で一番美味いな!」


「喜んでもらえて良かった。この肉はエルフの伝統食なんだ!」


「へえ。こんなに美味けりゃ伝統として定着するわな。ところで何の肉なんだ?」


「ゴブリンだよ!」


「ゲホッゲホッゲホッ!」


 魔王は、肉の正体を聞くとノータイムで咳き込む。


「ゴブリンだぁ? そんなもん食えるかよ!」


「でも美味しいでしょ?」


「俺さ、知り合いに何人かゴブリンいるんだわ。そいつらのこと想像しちゃって、食えねえよ!」


「う〜ん、そんなこと言われても伝統は伝統だし」


「喋れるくらい知能のある生物を殺して食べるなんて、お前らの心は痛まないのかよ!」


「あ〜、安心して。普通に暮らしてるゴブリンを拉致して料理してるわけじゃないから」


「そうなのか?」


「もともと食用に作られたゴブリンを農場で育てて出荷してるんだ」


「余計に残酷だわ! 約束のネバーランドの世界観じゃねえか! いつか食用児に寝首をかかれるぞ!」


「魔王様。いらないなら、その串焼き私にください!」


「お前、よく食えるな…… あげるけどよ……」


「やった〜!」


 ゾンビは幸せそうな表情で串焼きを完食した。






「次は、ここだよ!」


「すっげえ、ギラギラしてる建物だな。目が痛くて直視できねえわ。これは何なんだ?」


「CASINOだよ!」


「発音良く言わなくてええねん。へ〜、カジノか。フーコの街にもあるけど、そこより大きいな」


「私、勝負してきます!」


 ゾンビは封筒を取り出す。今月の生活費が入っている、絶対に手を付けてはいけない封筒だ。絶対に手を付けてはいけないお金で行うギャンブルほど燃える物は無い。


「おい、こら! ギャンブルは禁止したはずだろ!」


「すびばせん……」


 魔王の強烈なゲンコツが炸裂する。当然のことながら、ゾンビのギャンブルは止められてしまった。


「ゾンビちゃん。私が勝負するのを見ててよ!」


「はい。人が勝負してるのを観戦するだけでも結構楽しいですからね!」


「よ〜し、ポーカーをやろうっと!」


 ルーシーはポーカーの席につくと、大量のチップをベットする。


「おいおい、そんなに賭けて大丈夫なのか? ざっくり計算した感じ、一般人の半年分の給料くらいだろ」


「ロイヤルストレートフラッシュが出るから問題無いよ。エルフは未来が見えるんだ!」


「マジか。最強の能力じゃねえか。ぜひとも魔王軍に欲しい人材だ」


「それじゃあ勝負に出るよ!」


 大金がかかった大勝負。ディーラーはフルハウス。それに対してルーシーは……


「ノーペアだ! あ〜、もう!」


 ルーシーはボロボロに敗北し、賭け金は没収された。


「おいおい未来が見えるんじゃないのかよ」


「確かにロイヤルストレートフラッシュになる未来が見えたのに! 何で! 何で負けちゃうの! イカサマでしょ! あなたイカサマしたでしょ!」


 怒り狂った彼女はディーラーに掴みかかった。


「お客様! 困ります、お客様!」


「私のお金を返してよ! あれが無いと、今月は雑草を食べて生活するしかないの! 私に山田リョウみたいな生活をさせるつもり? 早く返さないとボコボコにしちゃうよ!」


「困ります!!困ります!!お客様!!困ります!!あーっ!!困ります!!お客様!!あーっ!!お客様!!お客様!!お客様困り!!あーっお客様!!困りますあーっ!!困ーっ!!お客困ーっ!!困ります!!困り様!!あーっ!!お客様!!困ります!!困ります!!お客ます!!あーっ!!お客様!!」


「どうした? 何の騒ぎだ?」


 全身に分厚い鎧を着て大きな剣を持ったガチガチ武装のエルフがやって来る。彼女はここの警備員だ。


「こちらのお客様が、かくかくしかじかで……」


「なるほど。お客様、ご退店いただけますか?」


「ひぇっ…… いや、あの……」


 ルーシーは警備員に首根っこを掴まれて叩き出された。


「うわ〜ん! お金無くなっちゃった! 生活できない! どうしよう!」


「ルーシーちゃん、うちの生活費を半分貸してあげますよ。元気出してください!」


「ありがとう! ゾンビちゃん大好き!」


 ルーシーとゾンビは仲良く抱き合った。


「あいつが借金作る理由、完全に理解したわ……」







「さあ、ここが我が国最大の観光スポットだよ!」


 大きな赤い鳥居をくぐる。その先には、洋風なエルフの街並みからは浮いている異質な光景が広がっていた。


「何だこれ?」


「神社っていうんだよ。神様を祀った教会みたいな物だね。先代の魔王様が建てたんだ」


「はえ〜。俺の母さんは生前にこんな物を建てていたのか。知らなかったわ。いったい何が祀られているんだ?」


「先代の魔王様自身だよ!」


「ええ? 自分で自分のことを神様だと名乗って神社を建てたのか? 中二病やんけ……」


「違う、違う! 先代の魔王様は、もし自分が死んだとしても魔族達を守れるように、神になろうとしたの! 魔族のことを最後まで考え続けたすごく良い人なんだよ! 神社のパンフレットにもそう書いてあるでしょ?」


「あっ、そうなんだ。そういえば、めちゃめちゃ優しかったもんな。また会いたいなぁ……」


 魔王は遥か昔に亡くなった母親に思いを馳せる。


「ねえねえ。せっかくだから魔王様にお祈りをしていこうよ! 鈴を鳴らして、あの箱にお金を入れると願いが届くらしいよ。他の教会とかと違って、面白いお祈りのしかただよね」


「よし、やってみるか!」


 三人は鈴を鳴らして賽銭を投げ入れる。二礼二拍手一礼をして願い事を念じる。


(ギャンブルに勝てますように……)


(魔王様が幸せになりますように……)


(魔王軍を復活させ、魔族が永遠に栄え続けますように…… 母さん、俺に力をくれ!)


 それぞれの願い事を終えた後、三人はおみくじを引いた。全員大凶だった。






 その後も色々な観光スポットを回り、魔王達はエルフの文化を堪能した。


「どう? 楽しかった?」


「ああ。楽しすぎて時間が過ぎるのを忘れちまったぜ。気づいたら、もう夜だな」


「うちの国は、一日じゃ回りきれないくらい、たっぷり魅力があるんだよ!」


「ところでルーシー。一つ気になることがあるんだが」


「ん? 何?」


「この国のエルフって女しか見かけないけど、どうやって子孫を増やしているんだ?」


「あ…… えっと…… それは……」


「魔王様。それは聞かない方がいいっす。この小説がノクターン(なろうの18禁版)にブチ込まれちゃいます」


「そ、そうか……」


 魔王はエルフ族の闇を垣間見た気がして、身震いをした。


「それにしても、お腹減ったっすね〜!」


「だな。そろそろ夕飯食いたいわ」


「それならおすすめのレストランがあるよ!」


「エルフの伝統的なゲテモノ料理とかだったらブチ切れるぞ」


「一般人の間でも普通に食べられてる料理だから大丈夫だよ!」


「ほう? どんな料理が食えるレストランなんだ?」


「餃子とかチャーハンとかが美味しい店だよ。桃のマークがシンボルなんだけど」


「バーミヤンじゃねえか! すかいらーくグループはどこにでもあるな!」


「飲食業界の最大手っすからね〜」


「美味しそうだから行くけどよ!」


 三人はレストランで夕食を済ませた。ルーシーはほとんどお金が無いので、魔王達の生活費から代金を捻出した。

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