21.エルフの国へ
「邪神器の一つ、鎧は洞窟にあった。だが、他の手がかりが何もなくてな。おっさん、何か知ってるか?」
新たな邪神器を見つけるため、魔王達は考古学者のドワーフの家へやってきた。
「君達がこの前来たあとに家の書物全てに目を通してみたんだがね、それらしき記述は見当たらなかったよ。あの古文書だけだね」
「マジかぁ…… ゾンビが言うには、ページが抜けてるせいで、あの古文書からは鎧の隠し場所しか読み取れなかったらしいんだよ」
「そうかい。あの古文書は私が買った時点で、既にあの状態でね」
「骨董商から買い取ったんだっけ? その骨董商なら何か知っているかもしれないな。紹介してくれないか?」
「過去に一度会ったきりで、詳しいことは知らんのだよ。数年に一度、世界を旅して物を売り歩いているらしいが」
「謎の旅商人か…… 情報はゼロに等しいな。何かその人の特徴とか覚えてないか?」
「女性だったね。それで耳が長くて、蝶のような羽が生えていた」
「それエルフだな。エルフって確かとある王国にまとまって住んでいるんだよな。そこに行って、骨董商を探してみよう。ゾンビ、場所わかるか?」
「昔、旅行で行ったので、わかりますよ。まだ王国軍の手に堕ちていないので、安全なはず。直接テレポートしちゃいましょう!」
「そうだな。情報ありがとうな、おっさん!」
「ああ。気をつけていくのだよ」
ゾンビがテレポートを使うと、二人は光に包まれてその場から消えた。
「到着! ここがエルフの住む国、レルへンっす!」
辺り一帯が森に囲まれた国に二人はやって来た。大きな建物がたくさん建っていて、森の中とは思えないほど発展している。耳の長い羽の生えた種族、エルフ達がそこら中にいる。
そして国の真ん中には魔王城に匹敵するほど豪華絢爛な城が鎮座している。
「勢いだけでエルフの国に来ちゃったけど、どうしようか? ここの土地勘とか全く無いんだけど」
「私の知り合いがいるので会いに行きましょう。彼女ならどうにかしてくれるはずっす! えっ〜と、お家の場所は……」
「あれ? ゾンビちゃん?」
ゾンビの元に一人の少女が駆け寄ってくる。真っ白な肌に黄金に輝く髪、そしてサファイア色の瞳。見る者を魅了する美しいエルフの少女だ。
「あれ? ルーシーちゃんっすか?」
「そうよ! 久しぶり!」
「すごい久しぶりっすね。何年ぶりでしょうか?」
「この前旅行に来たときだから…… 百年ぶりくらいかな?」
他の魔族と違い、エルフは長命の種族なのだ。だから人口がどんどん増え、森の中なのに文明が発達している。
「久しぶりに会えて嬉しいっす〜!」
「私もだよ〜!」
ルーシーとゾンビは抱き合って再会を喜ぶ。
「ゾンビ。その方がお前のお知り合いか?」
「そうっす! 私の親友のエルフ、ルーシーちゃんっす!」
「よろしくね〜! あなたはゾンビちゃんの下僕?」
「バカ言え! 逆だよ! 俺は魔王様だぞ?」
「あっ、ふ〜ん…… そういうタイプの人なんだ……」
ルーシーは一歩下がって、魔王との距離を取る。
「別に俺は精神異常者でも何でもないぞ!」
「ゾンビちゃん、今日は何しに来たの? また旅行?」
「おい、俺を無視するな!」
魔王のことをスルーして話は進んでいく。
「ちょうどルーシーちゃんに聞きたいことがあって来たんすよ」
「何でも聞いて!」
「この王国に住んでいる骨董商を知っていますか? その人の力が今すぐ必要で」
「この国で名のしれた骨董商といったら、一人しかいないね。メルちゃんっていうんだけど」
「その方はどこにいらっしゃいますか?」
「今は他国を旅して商売しているはずだよ」
「どこで商売しているかわかりますか?」
「あの子の旅は自由きままだから行き先がわからないんだよね。いつ帰ってくるかも未定だし……」
「そうなんすか……」
「マジか〜。割と急な用事なんだがなぁ……」
「でも、旅に出てからだいぶ経つしそろそろ帰ってくるかも! それまで、ここの国で待っていたらどうかな? 泊まる場所が無いなら、うちにおいでよ!」
「ではお言葉に甘えさせてもらうっす! 魔王様、良いっすよね?」
「ああ。エルフの国に来たのは初めてだから、観光でもしながら待つか。『どんな気持ちで過ごしても同じ待ち時間ですよ。焦ったからといってどうなるものでもありません。同じ待つのなら穏やかな気持ちで待とうじゃないですか』byブルック。俺の座右の銘な」
「え、ちょっと待って。ゾンビちゃんは泊めてあげても良いけど、その変な男は嫌! 何されるかわかったもんじゃない!」
「おい、こら! どういうことだ!」
「きゃあ! 変態に犯される! 助けて!」
魔王はルーシーの胸ぐらをつかむ。
「二人とも落ち着いてください!」
ゾンビが間に入って、争う二人を引き離す。
「この人が変なことをしないように、ちゃんと見張ってますから! だから、一緒に泊めていただけないでしょうか? お願いします!」
深々と頭を下げてお願いする。
「ゾンビちゃんがそこまで言うなら仕方ないかぁ。二人とも泊めてあげるよ」
「ありがとうございます! ほら、魔王様も!」
「お、おう…… ありがとうな!」
魔王達は骨董商のエルフを待つため、しばらくの間レルヘンに滞在することとなった。




