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13.祝宴

「ううん…… ううっ……」


「魔王様、魔王様」


「ううううう…………」


「魔王様!」


「うわっ!」


 布団で眠っていた魔王が勢いよく体を起こす。 

「何だ、ゾンビか。びっくりした……」


「魔王様が物凄くうなされていたので、心配になって声をかけました」


「ちょっと昔の夢を見ていてな。ところで確認だが、ここは俺達の家であってるか?」


「当たり前じゃないっすか。もうそれなりに暮らしているんだから、わかるでしょう」


「さっきまで俺は砦で王国軍と戦っていたはずなんだが、急に家に戻ってるから困惑してるんだよ」


「魔力を使い果たして気絶しちゃったから、連れて帰ってきたっす。今回も一週間気を失っていましたよ」


「ま〜た、一週間か。あれ、ちょっと待て! 王国軍はどうなった? 魔族達は?」


 魔王は慌てて最重要事項を確認する。


「作戦がハマって大勝利っす!」


「本当か!」


「ええ、相手は壊滅状態っす!」


「よっしゃー! 勝った、勝った勝った! うぐっ!?」


 魔王は興奮して立ち上がるが、急に立ちくらみがして床に倒れてしまう。


「いってぇ……」


「見た感じ、また魔力が弱体化していますね。勇者との戦いの直後に戻ってます」


「マジかよ……」


「魔力を使い過ぎると、こうなってしまうみたいっすね。今後は無理をしないように気をつけましょう」


「ああ……」


 数ヶ月間の修行の成果が水の泡となり、魔王は落ち込んでしまう。しかし、修行ならまたやれば良いとすぐに立ち直った。


「この一週間は戦後処理などをしておりまして、今日祝勝会が開かれる予定っすよ。魔王様も行きますか?」


「おう! 行く行く!」


 日が落ちてくると、二人は街の酒場へ向かった。






「お〜、やってるなぁ」


 店の扉を開けると、中は大盛りあがりであった。皆の笑い声が響き渡っている。


「おい、来たぞ! あいつだ!」


「おう、お前か! こっち、来い、来い!」


 勝利のための策を授けた魔王は、周りの者達から歓迎される。  

 あらかじめ用意された席に魔王とゾンビは腰かけた。

 

「いやぁ、すごかったな、お前! お前の立てた作戦が見事にハマったよ!」


 隣の席の魔族が、肩を組んで話しかけてくる。


「へへっ。いざという時にどう戦うべきか、日頃からちゃんと考えてるからな。そういうのって、大事だぜ?」


「急に議会に割り込んできた時には、何だこのキチガイって思ったけど、意外と賢いんだなあ」


「尊敬しろよ! 俺はすげえんだ!」


 久々に他者から褒められて、魔王は有頂天になる。


「だけど、今回の敵はアホだったな。どうしてあんなアホな奴が王国軍を率いれるんだ?」


「そりゃ、主人公を活躍させるための製作上の都合っすよ。魔王様はかなり馬鹿なので、相手をもっと馬鹿にする必要があったということっす」


「馬鹿馬鹿うるせーぞ。お前だってそう変わらんだろ」


「今回の作戦、魔王様の手柄になってますけど、考えたのほとんど私っすよね?」


 ゾンビが耳元で囁くと、何も言い返せず黙り込む。


「それにしても小僧。川を氾濫させるためには相当な魔力がいるだろう。それこそ、魔王級の。それ程の魔力をお前はどうやって調達した?」


 向かいの席に座る魔族が疑問を呈する。


「良い質問だ! 特別に答えてしんぜよう!」


 魔王は椅子の上に立つ。


「この俺の正体は、魔王だ! お前達魔族を束ねる王! 俺にかかればあの程度の魔法などチョチョイのチョイよ!」


 盛り上がっていた酒場が静まり返る。


「あれ? もっと、でかい反応を期待していたんだけど……」


 そんな魔王の様子を見て、魔族達はコソコソと話を始める。


「おい、聞いたか? あいつが魔王だってよ。虚言癖のレベルがカンストしてるぞ」


「でも、本気で言ってるっぽいぞ。虚言癖じゃなくて、自分を魔王だと思いこんでいる精神異常者では?」


「しょっちゅう警察の世話になってるらしいぜ。筋金入りの犯罪者だ。今回の魔力も、薬物みたいに闇ルートから入手したものじゃね?」


「作戦を立てる頭はあるのに、色々と残念な奴だなぁ……」


 魔王のことをボロクソに言うと、彼の周りから皆離れていく。


「クソっ…… 何で信じてもらえないんだ!」


「かつての魔王様は圧倒的な魔力から、オーラが溢れ出てたじゃないっすか。でも弱体化しちゃったから、それを感じられないんすよ。ただの馬鹿そうな兄ちゃんにしか見えません」


「畜生…… 早く魔力を取り戻さないとな」


 そんな魔王のもとに一人の魔族がやってくる。腰の曲がった老人ゴブリンだ。この前の作戦会議でまとめ役をしていた議長である。


「ちょっと君、良いかな?」


「あっ、はい。何か?」


「君は素性の知れぬ、めちゃめちゃ怪しい奴だ。だが、君のお陰でこの街を守れたのも事実。君には報酬として十億ゴールドを差し上げよう」


「い、十億ゴールド!? それだけあれば、魔王軍の再興が……」


「ほら、これだ」


 議長はパンパンに金が敷き詰められた袋を手渡した。


「よっしゃ! お前ら、今日は俺の奢りだ! 好きなだけ飲め!」


「「「「うぉぉぉぉぉぉ!」」」」


 手のひらを返すように、皆が周りに集まってくる。

 宴は夜通し続き、魔王は街の魔族達と少し仲良くなった。






「ふぁ〜、おはよう……」


 祝勝会の翌日、魔王は自宅で目を覚ます。


「あ、やっと起きたんすね。もう夕方っすよ」


「そんなに寝てたのか…… ちょっと飲みすぎたかな」


 二日酔いで痛む頭を押さえながら、あくびをする。


「王国軍に大打撃を与えましたが、そのうち体勢を整え直して再侵攻してきますよ。もっと、シャキッとしないと!」


「そうだな。今のうちに魔王軍を再興させないと。とりあえず、十億ゴールドの使い道を考えよう」


「そ、そうっすね……」


「あれ? 十億ゴールドはどこだ?」


 昨日、帰宅した際、部屋の隅に金の入った袋を置いていた。しかし、それが見当たらない。


「あのですね…… 私、十億ゴールドをもっと増やそうと思って…… いわゆる資産運用をしようと思ったんすけど……」


「ほう?」


「全部無くなっちゃいました……」


「は?」


 魔王は頭の中が真っ白になる。


「どういうことだ?」


「ですから資産運用に失敗して、全部溶かしました」


「たった一日で!? いったい何をしたんだ!」


「その…… サイコロの目を当てられたらお金が増えるという資産運用で……」


「つまりギャンブルじゃねえか!」


「そうとも言います…… でも、おかしいんすよ。全然当たらないんす! 負けて負けて、気がついたら全部無くなってました!」


「常々、お前はアホだと思っていたが、まさかここまでだったとは……」


「今回の負けは必ず取り戻します! 次の給料が入ったら……」


「全然反省してねえな! お前には罰を与える!」


「ば、罰っすか!?」


「獄門だ!」


「ひょぇぇぇぇ!」


 ゾンビの首に刀が振り降ろされ、頭と体が離れる。


「酷いっす! もとに戻してください!」


「反省するまで、晒し首だ!」


 ゾンビの首はアパートの前に晒された。そのアパートは事故物件扱いとなり、家賃が少し下がった。

 


 


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