11.議会に飛び入り
「いったいどうすれば王国軍に勝てるんだ! 相手はイワトの村を落として勢いに乗った大軍だぞ!」
「でも何か対策をしないと滅びてしまう!」
「対策と言ったってどうする! このペースじゃ明日か明後日には総攻めをしかけられるんだぞ! その短期間でどうしろと!」
議会では、街の有力者達による会議が夜通し行われている。しかしその会議は、解決策が出ることなく延々と無駄な話し合いだけが続くという小田原評定のような物であった。
「俺らが作った砦があるんだ! 安心せい!」
「私が率いる警察だっているんだ。そう簡単に負けることは無いよ」
サイクロプスとワーウルフが立ち上がって発言する。
「その砦は本当に機能するのか? この街の警察の数だってたかが知れてる!」
「そうだ! 王国軍を迎え撃つには心もとないだろ!」
「俺達が頑張って作った砦を否定するのか?」
「我ら警察を愚弄するような言葉は聞き捨てならんね」
解決策が出ないどころか喧嘩にまで発展しそうだ。
「お困りのようだな。お前達!」
混沌とした議会に一人の男が現れる。魔族の救世主、魔王だ。
「この俺が、魔族を助けるために尽力してやってもいいんだぜ?」
「お、お前は誰だ!」
「怪しい奴め! つまみ出せ!」
「あっ、ちょっと! 待てよ! 話だけでも聞いてくれ!」
魔王は取り押さえられ、外に追い出されそうになる。
「まて、皆! あれは俺の部下だ! 何か言いたいことがあるみたいだから入れてやってくれ!」
「彼は確か、うちの警察署によく来る犯罪者予備軍だね。でも、何か策を持っているのなら聞こうじゃないか。君みたいな者でも、頼れるなら頼ろう」
サイクロプスとワーウルフのとりなしにより、魔王は議会に入ることを許される。
「まずは皆、この資料を読んでくれ。俺の優秀な側近がまとめた敵の情報だ」
「おお、なんと……」
「これほどまでに詳細な情報が……」
雑用係時代に培ったゾンビの諜報能力は飛び抜けており、本職のスパイをも超える程だ。議会の人々は資料の完成度に度肝を抜かれる。
「こちらに進撃している敵兵は七千程度だ。その気になれば勝てない相手じゃない」
「待て! 王国軍がその気になれば何万もの兵を出せるはずだ。七千では少なくないか?」
議員の一人が口を挟む。
「そうだ。少ないんだよ。その理由をうちの部下に探らせたところ、面白いことがわかった」
「面白いこと?」
「ああ。今回の軍を率いているのが、キハラヤス・メラルド伯爵という奴でな。あいつは出世欲がヤバい奴らしい。他の奴らに手柄を取られる前に急いで出撃したわけだ。準備も急ごしらえだから、兵をあまり集められなかったのだろう」
「なるほど。そう聞くと希望が見えてくるな」
「更にキハラヤス伯爵の配下達の中には、出撃することに反対する者も多くいるらしい。軍の規律を無視して勝手に出撃するなんて危険だからな。ということで、敵の士気はかなり低い。暴走した貴族の出世のための戦争に、本気で命をかける奴がどれだけいるかという話よ」
「何だか勝てそうな気がしてきたぞ!」
議会の中に明るい空気が流れ始める。
「ちょっと待った!」
議員の一人が待ったをかける。
「そんな相手でも、イワトの村は壊滅状態にさせられたのだぞ」
「あの村はろくな防衛設備も無ければ、戦闘員もいない。急に襲撃されればひとたまりもないんだよ。だがこの街には砦があるし、兵力もそこそこあるだろ」
「兵はいるといっても、警察や義勇兵をかき集めたところで二千が限界だ! 相手とは三倍以上の差があるのだぞ!」
「チッチッチ。戦を決めるのは兵の数ではないんだよ。こっちは地の利ってのがあるんだ」
魔王は街の周辺地図を広げる。
「王国軍がこの街に来るには、この山を超えなければならない。山には砦があるし、山の手前には太い川がある。この川と山に防衛線を張って戦うんだ」
「ふむ。具体的には?」
「作戦の詳細をじっくり話してやるから、耳の穴かっぽじって聞いとけ。俺に従っておけば勝利すること間違い無しだ!」
図などを活用して作戦をわかりやすく通達する。その場の人々は内容を理解することはできたものの、戸惑いを隠せない。
議員の一人がその戸惑いを口に出す。
「その作戦を遂行すれば、恐らく理論上は勝てるだろう。でも、それには莫大な魔力が必要だ。この街の住人を全員の魔力をかき集めても足りないぞ」
「魔力の供給なら心配無い。俺に全部任せとけ。お前ら一人一人が自分の役割を果たせば、この戦いには必ず勝てる。俺を信じろ!」
魔王が高らかに宣言するが、その場に沈黙が流れる。
彼の提案した策は理にかなったもので、勝率が高い。しかし、いきなり議会に乱入してきた怪しい男が提案した作戦。それをすんなり受け入れるのは難しい。
「俺はこいつの作戦に賛成する」
沈黙を破ったのはサイクロプスだ。共に仕事をする中で魔王の人となりを知り、信頼に足る人物であると確信したのだ。
「私も賛成しておこう。他に良い作戦は無いのだろう? であれば、この男に賭けようじゃないか」
警察署長も同意する。
「代替案が無いなら仕方ないな」
「このまま何もせず殺されるくらいなら、盛大に暴れてやろう!」
「騙されたと思って怪しい男についていくか! 何かこいつカリスマ性あるしな!」
次々と賛成の言葉が口にされ、魔王の策で決戦に臨むことが決まる。
「よし、お前ら! 俺についてこい!」
「「「「「おう!」」」」」




