3-4(偵察)
クリフがナザリに呼ばれた理由は、“ピニッツ”と別れて以降ここに至るまでの経緯を伝えることだった。
ヤフリナ国テネッサ・ホフムの屋敷でソラムレア国海軍に捕らえられたことから始まり、それから反乱軍と合流して大暴れ、南下してラウリーらに会い、ジェナルム国でオルセイと戦い──ネロウェン国軍に世話になった。
並べてみると到底あり得ない武勇伝だったが、ナザリはクリフの話をすべて信じてくれたのか、ひとつ頷いただけだった。
「合致する点が多いからな」
ナザリが持っている情報量は伊達ではない。逆に言えば、下手な嘘などつけないのだ。加えてナザリはクリフの性格を知っている。クリフは自分の話がナザリに認められたことに半ば安堵し、半ば当然だと思いつつ息をついたのだった。
クリフにとって久しぶりに入った船長室は、まだ落ち着かない場所である。“ピニッツ”そのものには慣れてきたが、高級そうな椅子は尻に馴染まないし、あいかわらず強い酒にもむせる。
クリフはちょっと身じろぎしてから、ふとカヴァクの頬が赤かったことを思い出した。
「カヴァクもここで、あんたと話をしたのか?」
酒を飲みながら。
「もうすぐヤフリナ国に到着するのでね、色々と聞かせてもらった」
肯定の意だ。
皆が腕相撲大会の開催日を見計らっていたのと同じく、ナザリも会話のきっかけを探っていたらしい。それが重なったのだ。イベント盛り沢山な一日になったことにため息をつき、クリフは薄く開いた木窓から入りこむ赤い光を見つめた。
おおむねは、何もなく過ぎていく。
細かく言えば毎日何かはあるのだが、今までの事件に比べれば「ない」と言えるほど些細なことばかりだ。もしロマラール国にいたままの自分だったら、この“ピニッツ”で体験している今のものがすべて大事件だったかも知れない。出航準備の大変さや嵐、生活は一変して、用を足すのも一苦労で……。
クリフは『人間、慣れるもんだよなぁ』と呑気に思った。
「え?」
だが、その「ない」を壊してくれそうな事柄がナザリの口から飛び出し、クリフの反応を鈍らせた。何を聞いても驚かなくなったと思う側から、驚かされる。
「ソラムレア……海軍?」
その名前には覚えがある。かつて自分を拉致監禁して大変な目に遭わせてくれた、迷惑な連中だ。
「あいつら、まだいたのか」
クリフは思わず毒づいた。クリフが倒した皇帝その他は、陸軍。海軍の方はヤフリナ国テネッサ領内に、しつこく潜伏しているというのである。
「未確認だし、戦況は変わっているかも知れないがな」
とナザリは言いおいたものの、その口調に迷いは見られない。“ピニッツ”の情報はいつも確かだ。
「お前がソラムレア国に連れ去られた時の船はほんの一隻でしかなく、主力艦隊はそのまま駐留しているはずだ」
「何だ、そりゃ」
クリフは額を押さえて、がっくりとうなだれた。
無理もない。皇帝を倒して万々歳、ソラムレア国には平和が戻りましたとさ──と思っていたのだから。どこもかしこも、何も終わっていなかったのだ。
「それで、その海軍なんだが。そいつらを抱えているテネッサ・ホフムは、ネロウェン国の変態ヒゲ男とつながりがあった。武器を密輸する気だったのだ。私はテネッサが、武器と一緒にソラムレア兵をネロウェン国に送り込むつもりだったんじゃないかと思っている」
「何でだよ」
正直すぎるクリフの疑問に、ナザリは小声で「少しは考えろ」とツッコミを入れた。
「軍力が上がれば内乱を起こせるからさ。変態男とテネッサは、王弟派だ。王を倒してネロウェン国を牛耳り、ソラムレア国に対抗できるだけの軍事大国にする気だったんだろうよ。ただ引き返してソラムレア国に攻め入ったって、返り討ちにされないとも限らない」
「なるほど。……変態男ってのは?」
「お前もいただろうが。ヤハウェイサーム・フセクシェルのことだ」
名前を呼ぶのも汚らわしいという雰囲気がありありと伝わる。だがその名に面識のないクリフは首をひねった。それから、ようやくナザリが殺した男爵の名だと気付いて「ああ」と手を打ち鳴らした。変態男と言われてもクリフが見たのは屍だけだったので、ピンと来なかったのだ。
「すると内乱を阻止するためにあんたは、あの男爵を殺したってことか」
クリフが頭を使って会話のレベルを合わせようとすると、見透かしたかのようにナザリがふっと笑った。ムッとするクリフを見て、さらに微笑む。
「あれを殺したぐらいで事は止まらんよ。気に入らなかったので殺しただけだ」
「気に、って」
絶句。
「少しはそうした考えもないではなかったがな」
「……あんた嫌な奴だよな、ナザリ」
「よく言われる」
ナザリがしれっと答え、クリフは顔をしかめた。
「ああいう輩は法に照らすと逃げる。影の者がこれを消さんと、どんどんと光がよどむ」
酒を口にしながら詩のように呟いたナザリの言葉は、今度こそクリフには理解しかねた。そんなもんかねと言い、クリフも熱い液体を少し舐めた。
「フセクシェル家に遅れが出ることで、テネッサ商会の動きも鈍るはずだ。その間に、ソラムレア海軍がどう動くかだな。ヤフリナ国内の反対勢力と衝突している可能性もあるし、すでに新たな戦略を設けて別の動きを始めたかも知れん。テネッサ・ホフムの権力はヤフリナの王族をも動かす。国を挙げての大事件に発展していることもあり得る」
「ぶ」
クリフはナザリの思案にむせた。
「ナザリ、悪い。そういう話は他の奴としてくれ。俺にそれを言って、どうしろと」
自分の分を分かりすぎているクリフだった。だが、それに対してナザリは、
「お前だから言うんだ」
と真顔になった。
「何で」
「お前はソラムレア国の反乱に加担して、イアナの英雄と名を馳せたな? 先ほどお前はそれを言わなかったが、私の方には、そう呼ばれた赤髪の男がいたという武勇伝が聞こえている」
勘弁してくれとクリフは思ったが、ナザリは構わずに続けた。
「実際にお前の話を聞くまでは半信半疑だったが、符合する言葉が多かったのでな」
ナザリはここで言葉を切った。
喉を潤した後、「そこでだ」と身を乗り出す。それに合わせてクリフは身を退いた。嫌な予感がする。
「お前に、ソラムレア国の新政権を取る反乱軍と接触してもらいたい」
「反乱軍!?」
退いた身を、すぐ前へ突き出した。
「来てるのか、ヤフリナ国へ?」
「正規軍討伐という名目で、ソラムレア国を旅立ったと聞いている」
ソラムレア軍に捕らえられたクリフを助けてくれた、カーティン・ボーラルが所属している国民軍だ。一緒に戦って皇帝の首を取った。ロマラール語を理解してくれて、ソラムレア語を教えてくれた、カーティン。
「共に戦えとは言ってない。話を聞いてきて欲しいだけだ。ソラムレア国の現状と戦況をな。本当にお前がイアナの英雄なら向こうも会ってくれやすいだろうし、面白いかと思ってな」
「面白い?」
ナザリが当然のような言い草をしたので、クリフは憮然とした。
「手前ぇな。俺のことを駒か何かだと思ってないか?」
クリフから飛びだした言葉は、かつてナザリがオルセイに言ったと同じものである。ナザリはつい微笑んでしまった。
「鋭いじゃないか」
「否定しろよ」
「無駄なことはしない」
クリフは口をつぐんで明後日を見た。
「……何かナザリと話してると、誰かを思い出す」
「ほう。会ってみたいものだな」
「それが誰だか忘れたんだ」
ナザリが鼻白み、クリフもため息をついて頭を掻いた。思い出しそうで思い出せないというのは非常に気分が悪い。悪いので、クリフは忘れることにした。
このナザリの性格と“ピニッツ”の性質は、いくらクリフでも、おおよそ理解している。情報収集が主な目的の船だ、その機会があれば見逃さないだろう。快諾とはいえないが、クリフは不承不承、頷いた。正規軍に忍び込めと言われるよりは、まだマシだ。
「ただし」
とクリフは強い口調でつけ加える。
「ヤフリナ語とソラムレア語が話せる奴と同伴の上、必ず“ピニッツ”に戻れるように援助してくれよ。妙な隠し事もなし、武器の携帯も許可、会談は同伴の奴に任せるから俺に喋らせるな、それから、」
「分かった分かった」
まくしたてるクリフをさえぎって、ナザリは珍しいことに声を上げて笑ったのだった。
「それから……」
だがクリフは若干目を伏せて、続ける。
「俺に何かあっても、ラウリーはロマラール国に返してくれ」
元気のなくなったクリフの物言いに、ナザリは少し考えてから、
「立ち入ったことを聞くようだが」
淡々と言った。
「お前があの娘に対して妙な態度になるのは、お前の名前に関係があるのか?」
「え?」
意外な質問に、クリフは目を見開いてしまった。
「あんたにしては脈絡がないな。何の関係があるんだよ、それ」
「思いつきだ。私情で心が乱れているなら、援護にも限界がある。いざとなったら切り捨てなければならない」
優しいのか冷淡なのか分からない。思いつきにしても質が悪い。するとナザリは複雑な微笑を浮かべてから、思い出したように平静になった。
「お前の名だけ貴族のものだ。コマーラ家に引き取られた負い目が、ことさらにお前を追いつめているのかと思ってな」
「立ち入ったことだな」
だが、なぜだろうか。怒りも感じるが、ナザリの言葉に邪気がないせいか同情ではないのが分かるためか、どす黒い感情は起こらない。
「俺の親父が剣士で伯爵だったってのは、言ったことがなかったっけ? 貴族って言ってもその程度さ、気にするほどのことじゃない。親のつけてくれた名前だから大事なだけであって、家が大事なわけじゃない」
「そうか」
「ラウリーのことは切り離すさ。引き受けた以上、迷惑はかけないようにする」
「分かっていれば良い」
ナザリは薄い微笑の中に安心らしき感情を混ぜて頷き、杯を掲げた。
「お前の前途に平安を祈る」
「あんたがぶち壊してくれてるけどな」
木のコップがあわさり、コンと間抜けな音を立てた。
◇
かくしてクリフは、ヤフリナ国内の海岸沿いをゴーナで駆けている。
「景色に見とれてる暇なんてないからねっ」
一緒に走るマシャが檄を飛ばしてくるが、目下、見とれているほどの景色はない。町の雰囲気は独特だったが、海岸から少し離れた、潮の匂いがする草原は、ロマラールと変わりがない。帰郷気分を味わって感慨深くなってしまうという意味では確かに「見とれている」と言われても文句が言えないかも知れない。クリフは少しゴーナの腹を蹴って、急がせた。
クリフに並んでゴーナを駆る者は、マシャとギムだ。
情報を仕入れてソラムレア反乱軍の居場所をつきとめた3人はそこに向かうべく野を駆け、ほどなく、小さな村に到着したのだった。
思わず拍子抜けしてしまうほど、のどかな村だった。土造りの家並みはこぢんまりとしており、村の入り口付近では老人が魚の干物を並べており、井戸端では女たちがぺちゃくちゃと会議をしていて、その足元で子供が遊んでいる。
「本当にこんな村が、ソラムレア反乱軍をかくまって……あだーっ」
呟いたクリフの足を、マシャが容赦なく踏んづけた。かかとによるグリグリ攻撃もセットだ。これは痛い。
村の入り口に立つクリフらに注目する村人は少なくない。老人は手を止めてこちらを見ていたし、井戸端の女たちもクリフの存在に気付いたようである。
「ナザリの人を見る目も曇ったもんだよ、まったく! 次に余計なこと喋ったら、本当に怒るよ」
今も怒ってるくせにとクリフは思ったが、それは言わない。
ギムがそんな2人の間に割って入った。
「マシャ。クリフは分かってないんだ、許してやれよ」
「クリフは一度、ネロウェンの宿屋でも同じ過ちをしてる。繰り返す奴は好きじゃない」
なかなか手厳しい。だが一理ある。クリフは“ピニッツ”副船長に謝罪した。
「失言には気を付ける」
「そうしてよ」
マシャの目が和らいだ。
ナザリがクリフに内情を教えたのは、口の固さを信用したからではない。身内だと認めたからだ。ナザリは“ピニッツ”の全員を、その能力差にかかわらず平等に扱う。実際に現場で能力差を調整するのは、マシャの役目なのである。
「まぁだから、あたしがここへ来たって話でもあるんだけど」
マシャはゴーナの手綱を持って通りを歩きながらクリフに説明をした後、最後にそう締めくくった。クリフも、それを肯定するのは癪に障るが妥当な人選だなと思って頷いた。ナザリやルイサは表に出ない。かと言ってギムのような男ばかりで交渉に臨んでも、警戒されるだけだろう。
「トゥエイン様のお家を訪ねたいのですが」
そう語りかけて井戸端会議の女性たちが快い顔を向けてくれるのは、相手がマシャだからだ。ロマラール人だと分かる様相はあいかわらず少年風で、伸びた髪が襟元でくるんと巻いていて愛らしい。そして意志の強いぱっちりとした瞳が人を惹きつける。
目的の場所を聞き出して「こっちだって」と振り向く仕草は、かつてクリフの記憶に一番強く残っているラウリーのはつらつさと似ていて、そして何やら少し可愛く見えた。
「いかん、お前が可愛く見えたら終わりだ」
「ギム、この馬鹿男を簀巻きにして、あっちの海に捨ててきな」
2人の後をついて歩くギムが爆笑した。先ほどの独り言と言い、クリフはそれらを小声で言ったつもりだったのだが、通る声をしているので聞こえてしまったのだ。マラナの月も終わりかけていて、クリフはすっかり回復していた。
そんなクリフにマシャは、
「力は信用してるけどね」
などと言う。クリフは、反乱軍に会うための橋渡しであると同時に、マシャの用心棒でもあるのだ。それでもギムが同行したのは“援護”と、2手に分かれなければならないことが起こった時のためである。反乱軍らにしても、それを仲立ちしてくれるはずのトゥエイン様とやらにしても、穏便に事が運ぶとは限らない。
だが、それは杞憂だった。
普通の家より若干大きい建物からは、これ以上ないほど朗らかで優しげな笑みが飛びだして、3人を出迎えてくれたのである。事情を聞いても、その笑顔は変わらない。トゥエインその人だった。
「詳しくは、どうぞ中へ。教会は、門を叩いて下さった方を拒みません」
白い髪を背中まで伸ばした男トゥエインは、マシャたちが多くを語らないうちに玄関の扉を開けはなしてくれたのだった。入ったすぐの広間はガランとしていて簡素な長椅子だけが幾つか並んでおり、一番奥の壁に設置された大きな擦りガラスが、3人を出迎えて微笑むかのように日光を通して眩しく輝いている。
教会?
クリフはその広間を天井まで見上げて、怪訝な顔になってしまった。
確かに普通の家と言うには、ほとんど何もない広間が少し不思議だが、それ以外は民家と違いがない。大きいけれど質素な土造りで装飾もなく、家の周囲にもほんの少し、庭と畑が造りつけられているだけである。飼われているゴーナも必要最低限だった。
室内に足を踏み入れながら、クリフはマシャに耳打ちした。
「教会って何だ?」
マシャが苦い顔をした。目だけで口ほどに、
『ついさっき余計なこと言うんじゃないって注意したばっかりだろうが、次から次へと手間かけさせやがって、喋らせるなって言うんだったら喋るな、このくそ馬鹿男が』
と言っているのが分かる(気がする)。何が失言になるか分からないものだ。
「どうかしましたか?」
トゥエインが広間途中で振り向いた。
「いえ何でも」
とり繕おうとしたが、彼は少しだけなら言葉が分かるらしく、丁寧な質問をしてくれた。
「教会がどうとか聞こえたのですが、不都合がありましたでしょうか?」
適当に言い逃れることができなくなってしまった。
マシャはクリフを一睨みしてから、トゥエインにはころっと表情を切り替えて謝罪した。
「ロマラール国には教会がないので、この者が珍しがっただけです」
合点したらしいトゥエインは、なぜか嬉しそうな顔になった。
「ああ、そういえばロマラール国には教会という場がないのでしたね。王都に、神殿があるのでしたか?」
「そうですね」
ロマラール王都には、町外れの丘の上にほとんど機能していない形ばかりの神殿がある。中には7神が人だった頃の彫刻と、絶対神ファザを象徴する小さな祠が中央に位置しているだけの、他には何もない建物だ。
だが何もなさにかけては、この教会とやらも負けてはいない。7神の像どころか象徴的なものもない。敷いて言えば奥の擦りガラスぐらいなものである。
等身大はありそうな磨りガラスの前に立って皆を振り向くと、後光を背負って皆を見下ろすことができる。一段高い演説台になっているのだ。長椅子にびっしりと人が座れば、数十人ほどだろう。それを一度に見渡せる。
そこに立つ者にふさわしい穏やかな笑みで、トゥエインは「そうですか」と頷く。その動きに合わせて、緩く縛ってあるだけの長く白い髪がさらりと流れた。後れ毛が額に一房かかり、男性なのに妙に艶めかしい。
まだ老いていないのに彼の髪が白いのは、クーナ神の影響だろう。対称的なまでに黒い瞳が3人を捕らえて細められた。
「神に祈りを捧げる場所だという点では、神殿も教会も同じです。ただ私どもの方では7神伝説の、特に、司っている言葉の意味について人間的解釈を加えて研究し、その真意を人々に説くのです。ですから神殿とは役割が変わるために教会という言葉を生み、私はここの教会長として、その教えを受け継いでいます」
饒舌である。
マシャは渋々ながらも、かいつまんでクリフに伝えた。ついでに私見を交えつつ。
「ロマラール国もだけどヤフリナ国も、神殿運営の実権は王族にあって、平民には手が出せないんだ。7神に関わろうと思ったら、独自で団体を起こすしかないんだよ」
「ふーん」
クリフのものすごく薄っぺらな相づちに、マシャは顔をしかめた。
「クリフって絶対、談議向きじゃないよね」
「失礼な。ちゃんと聞いてるぞ」
「じゃあ教会が説く7神の教えって奴、興味ある?」
瞬時にクリフは黙ってしまった。元よりラウリーのうんちくにだって耳を貸さない男なのだ。ロマラール国で言い伝えられている神話とて、ろくに知らない。自分でも馬鹿なことを聞いちゃったなぁと思ったらしいクリフの顔は、苦いものになった。
「正直な答をありがとう」
マシャはにっこり笑ってトゥエインに向き直り、本題を切り出した。
「トゥエイン様。こちらでかくまっておられるソラムレア反乱軍の方に、会いたいのですが」
今まさに神の教えを説こうと勢いこんでいた教会長は、若干、肩を落としたようだった。