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【完結】宮廷占い師は常に狙われています! ~魔の手から逃げきってみせますよ~  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!


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78.結婚はハードな運動を伴う

 結婚が、こんなにハードな運動を伴うとは知らなかった。触れるキスで結ばれて、舌を絡めて吸うと赤ちゃんを授かるんじゃないの? 唾液を受けたら、それが赤ちゃんの種になるのよね。そう思ってたのに……。


 あんな姿でそんな恰好をさせられ、こんなことになるなんて。時々意識も飛ぶし、危なかった。ギシギシと痛む全身と引き換えに、夫ルーカス様の満面の笑みをいただいた。ご褒美と考えても、こっちの分が悪い気がする。痛いのでほぼ動けず、まるで介護されるご老人のようだ。


 抱き上げてお風呂に入れられ、交換されたシーツに下される。濡れた体を拭ったり、髪を乾かしたり。およそ貴族家当主の仕事ではないのに、嬉々としてこなしていく。ハンナに比べたらぎこちない動きだけど、私はすべてお任せした。いや、動けないんだけどね。


「大変名残惜しいが……部下の様子だけ見てくる」


 こくんと頷く。首も痛いわ、参ったわね。


「君の世話はハンナに任せるが、すぐに戻るから」


 すぐにを強調された。にこっと口角を上げて返答がわりにする。首を動かすと痛いからね。気持ちとしては、ごゆっくり……なんだけど。口にしたら泣かれそ……いや、私が泣かされそう。そもそも結婚式から何日経ったの?


 途中まで数えていたが、気を失うように眠ったりしたので曖昧だった。心配そうに振り返りながらルーカス様が出かけ、数秒後に扉が開いた。目の下に隈を作った、半泣きのハンナが飛び込む。扉の外に副団長のエサイアス様がいたような、いないような。


「お嬢様! いえ奥様でした。奥様、体調はいかがですか? 獣のような旦那様に、こんなお姿にされて」


 ぐずぐずと泣きながら、さり気なくルーカス様を貶す。ハンナ、今の言葉はまずいわ。一応雇い主なのだし。まだ喉が痛いので、声は出せなかった。


「まずはお肌を整えて、髪も香油で艶を出さなくては。それからお食事も大事ですね。果物ばかり差し入れておりましたが、肉やパンも召し上がっていただかなくちゃ」


 あたふたと動き出す彼女の指示で、他の侍女達が準備を始める。入って出たばかりなのに、再びお風呂に沈められた。ふやけて溶けてしまうわ。


 のぼせる前に、冷たいお水をもらう。ほんのり甘いのは、何か果汁を足したのかしら。美味しい。うっとりしながら世話をやかれ、ベッドに戻された。身体中に残る痕に、侍女達が顔を見合わせる。


「旦那様に節度を覚えていただきましょう」


「ええ、このままでは奥様が壊されてしまいます」


 私、壊されちゃうの? 確かにこんな生活を続けたら、介護老人まっしぐらだわ。侍女さん達も手がかかるし、迷惑よね。私だって庭でお茶を飲んだり、ちょっと意地悪を言われる社交をしたり、散歩もしたい。


 ぐっと握った拳に、ハンナの手が優しく触れた。


「ご安心ください。今夜は私が寝ずの番に立ちます」


 侯爵家当主相手に、ハンナが? ルーカス様に蹴散らされちゃうと思うけれど、気持ちはありがたく受け取っておくわね。

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