第九話 女を知らない男
今は昔。
男がいました。男はある国の領主でした。
領主の自分が結婚するとすれば政略結婚しかないだろうと考えていました。だから、男は小さな頃から決めていました。
「どんな女が自分に嫁いできてもその女一人を大切にしよう」
やがて、年頃になり、隣の国の姫と結婚することになりました。もちろん、政略結婚です。
嫁いで来た姫は人柄もよく、美しい女でした。二人は仲良く、夜はいつも一緒に眠りました。ですが、二人は男女のことは何も知りませんでした。なので、二人は何年も清らかな夜を過ごしていたのでした。
何年も子宝に恵まれない主君を心配した家臣たちは側室を勧めましたが、男はとりあいませんでした。
業を煮やした家臣たちは一人の妖艶な女を男の寝所に送り込むことにしました。
いつも一緒に眠っていた二人でしたが、姫に月のものがあるときは、離れていました。男は姫が月のものがあるときは一緒に寝られないのはなぜだろうと不思議に思っていましたが深く考えませんでした。
姫と一緒に寝られなかった日、朝、目が覚めると一人で寝ていたはずなのに見知らぬ女がそばで寝ているのです。男はあせりました。
私はこの女と一緒に寝てしまったのか。浮気をしてしまったのか・・・
男は悩み続けるのでした。