第五話 仮面の姫
今は昔
ある国の領主に仮面を献上するものがいました。
その仮面は元の容姿がどうであろうと、心の美しい者がかぶれば美しくなり、醜いものがかぶれば醜くなると説明されました。領主は半信半疑ながら手元においておきました。
間もなく、領主と奥方の間に美しい女の子が生まれました。それはそれは美しい姫でしたので、領主は溺愛しました。
姫が歩き始めた頃、仮面が姫の足元に落ちてきました。それを姫が拾おうと、手をのばすと、仮面は自然に姫の顔にはりつきました。そして、美しかった姫の顔はみるみる醜くなっていったのです。
「なぜだ。私の姫がこんなに醜いはずがない。まだ、ものごころもついていない、幼い姫なのだぞ」
急ぎ、仮面を献上した者を呼び寄せ、問いただしました。
「それは、生まれ持った、さがなのです。おそらく前世で行った悪行の結果でしょう。ですが、善行をつめば、美しくなってまいります」
それを聞いた領主は姫が一人である程度できるようになると、いろいろな奉仕にいかせました。しかし、姫の醜い顔をみると人々は恐れて近寄りません。仕方なく、姫は人のこないところで、掃除や、書類処理など、一人でできることをするのでした。姫は悲しくて泣きましたが、誰を恨むでもなく、与えられた仕事をこなしていました。
姫は本当は美しい心の持ち主でした。
実は仮面は心とは反対の容姿になる呪いの仮面だったのです。
ただ、姫の優しさを知っている動物たちは姫の周りに集まってきました。城の庭の片隅で動物たちと楽しくしている姫をみると領主はとても姫が醜い心の持ち主だとは思えないのでした。
「私の友達はあなたたちだけね」
姫はさみしそうに微笑むのでした。ただ、姫には不思議な力がありました。姫の声を聞いたものは、どんなに悪い心の持ち主でも改心して美しい心になるのでした。しかし、人とあまり接しない姫の声を聞いた者は少ないのでした。
あるとき、仮面を献上したものが城にやってきました。
そのものは、本当は姫の母にかぶせて、自分の娘を領主の側室にするつもりでした。ですが、領主と奥方の仲は睦まじく、姫に呪いをかけても、領主が奥方を厭うことはありませんでした。こうなったら、姫から、仮面を取り返して、改めて姫の母に被せてやろうとしてやってきたのでした。
その日も姫は動物たちと戯れていました。
「姫様」
誰だろう。醜い私に声をかける人などいないのに・・・振り返り、姫は声をあげました。
「あなたは、だあれ?」
その声をきいた途端、そのものは雷にうたれたような衝撃を受けました。
「わ・・・私はなんということを・・・」
そのものは、いきなり土下座しました。そして、仮面の秘密を話したのです。
それを聞いた姫は驚きましたが、その呪いを解く方法はないのか聞きました。
そのものは言いました。
「呪いを解くためには、姫が悪い心を持ち、悪事を働かなくてはなりません」
さて、姫はこのまま、美しい心を持ち、醜いままでいくのか、それとも悪事を働く道を選ぶのか・・
次回は竹が生える家に住む男です。




