第十一話 お代官様
今は昔 男がいました。
男はごくごく普通のサラリーマンでした。男が家に帰る途中、車の事故に会い、男はあっけなく死んでしまいました。
男の意識に語りかけるものがあります。
「お前はまだ、若い。このまま死ぬのは可哀想だ。何か一つのぞみをかなえてやろう」
男は時代劇が好きでした。中でも好き放題しているお代官様に憧れていました。
「お代官様になりたい」
「よかろう。そののぞみかなえてやろう」
男は江戸時代のお代官様に転生しました。気がつけば男は代官屋敷におり、お代官様の衣装を着ています。男は本当にお代官様に転生したことを確信しました。
なら、正義の味方のようなものが現れるまで、好き放題しよう。さて、何から、はじめようか。まず、どこかから娘を拐ってきて、帯くるくる・・・それから・・・商人に賄賂をもらって・・・男の妄想は膨らむのでした。
男が妄想していると、ふすまがあき、美しい女が入ってきました。
「誰だ?]
「あなたの妻ではありませんか。お茶をお持ちしました」
妻・・・うわ~めっちゃ好み・・・ 妻っていうことはこの女とやってもいいんだよな。
男は妻を抱き寄せました。
「あらっ?昼間っから・・・」
恥ずかしがる素振りもかわいい・・・
「いつものもやりますか」
「いつもの?]
「あなたの好きな帯をくるくる、ほどくことですよ」
わ~ のりいいじゃないか。
妻にすっかり満足した男は娘を拐ってくるのをやめました。
商人から賄賂をもらおうとおもいましたが、治めている土地は貧しく、特産物もありません。そんな代官に賄賂を渡す価値など見出す商人はいません。
男は考えました。なければつくればいい。未来の知識を総動員して、開墾をすすめ、養蚕事業をおこしました。そのかいあってか、その土地は豊かになりました。男は農民たちに慕われました。
「何かが違う。違うような気がする」




