第十話 便器に高値をつけた男
今は昔
茶の道に優れた商人がいました。
茶の道に優れてはいましたが、彼は根っからの商人でした。
時の権力者と結びつき。彼が目利きした茶器を売りさばいていました。茶の名人が目利きしたということで、彼が目利きした茶器は高値をつけても飛ぶように売れました。
そんな、ある日のことです。外国から渡ってきたという陶磁器が彼のところに持ち込まれました。その焼きの素晴らしさから、彼はその陶磁器に高値をつけました。しかし、それは彼の国で使われていたおまるだったのです。ですが、彼をはじめ、この国の人は誰も知りません。みな、素晴らしい茶器だと思っていました。
そのおまるはある大名が高値で買い、家宝のようにして大切にしていました。
あるとき、その大名のもとに外国の使節がやってきました。その使節から、大名は大切にしていた茶器が実はおまるだと知らされました。
恥をかかされ、大金を支払わされた大名は怒りましたが、自分の恥にもなることと公にはしませんでした。そんなおり、商人と結びついていた権力者が亡くなりました。商人は後ろ盾をうしなったのです。
大名は内々に国王に打ち明けました。国王も商人が茶器に法外な高値をつけるのを苦々しく思っていましたが、それをとりなしていたのが亡くなった権力者だったのです。
国王は商人を呼び出し、詰問しました。
商人はあれがおまるだとしても焼き、年代ともに優れた逸品だと訴えたましたが取り合ってくれません。
商人は、武士でないにも関わらず、切腹を命じられてしまいました。
商人が、切腹を命じられた理由は、いろいろな憶測をよびましたが、真実は誰もわかりませんでした。




