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神亡き世界の異世界征服  作者: 三丈夕六
ヒューメニア戦争編

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98/109

第98話 約束 ーヴィダルー

 ——魔王国。血族の間。


 ヒューメニア周辺の地図を開く。


「周辺を草原に囲まれ、潤沢な兵力のあるこの国は、どこから攻め込もうとも対処されてしまう。森も存在するがゲリラ戦に引き込めるほどの広さは無い……か」


 ここは最大火力を持っての1点突破を……いや、ここまで見晴らしが良いと手を完全に読まれてしまう。敵は俺達の動きに柔軟に対応できるからな。


「4箇所からの同時攻撃……いや、これは数が劣る俺達では……」


 ヒューメニア、メリーコーブ、その他小国合わせた兵力は12万を超える。逆に1部隊が挟撃に合うと一気に形成は不利になるな。それに、未知数のレオンハルトの種族混合部隊……希望的観測は俺達の破滅を意味する。


 これは……詰将棋のようだな。


「ヴィダル? そこで何をしているのですか?」


 声に振り返るとフィオナが不思議そうな顔で立っていた。


「フィオナか。魔王国へ来るとは何かあったのか?」


「間も無くヒューメニアへの侵攻を始めるのでしょう? 使い魔ではなく直接状況を掴んでおきたいと思いまして」


「確かに認識の齟齬そごは避けたい。流石だな」


「それに……」


 急にフィオナが言い淀む。その目尻は緩み、口元はうっすらと笑みを浮かべていた。


「なんだ?」


「いえ何も。侵攻について考えていたのですか?」


「ああ。こちらの兵力はどうだ?」


「いつでも侵攻可能です。我ら連合の力は8万。ハーピオンを合わせて侵攻に投入できる兵力は10万5千ですね……数は不利ですが、何かあるのですよね?」


裏の方の策(・・・・・)は既に打ってある。よく分かったな」


「ふふ。ヴィダルのことですから、当然でしょう?」


「そちらは動き出すタイミングが不明瞭。だからこそ正攻法でも勝てるように動かなければならない」


「私にも考えさせて下さい」


 フィオナが、地図を覗き込む。


「問題は広大な草原……ですよね? 作物(・・)も潤沢に取れる地域。こう見ると神に愛された国という感じがしますね」


「創世の神が原初に作った国だからな」


「そして、この草原での戦いで私達の動きは相手へ筒抜け……と」


「そうだ。俺達の動きを読ませず敵をこちらのペースへ引き込みたい。その為には……」


 ん?


 待て……今何か聞き逃さなかったか?


「フィオナ、今何と言った?」


「え? 私達の動きが筒抜けと……」


「その前だ」


「え、ええと……作物が……」



 作物……作物か。



「潤沢に取れる為には天候の要素が必須だ。ヒューメニアで悪天候が起きることはあるか?」


「いえ、聞いたことがありません」


 悪天候を経験していない? なら……ヒューメニア兵達は……。


 急に頭の中で考えがまとまっていく。


「どうしたのですか急に」


「フィオナ。召喚魔法で広範囲に()を発生させられないか?」


「霧……ですか? 水の精霊を使い空気中の水分量を弄れば発生することは可能です。しかし、ヒューメニア周辺全体を覆うにはちょっと……」


渾沌の使者(アリオネ)の空間内ならどうだ? あれは空間内の物理法則を君の支配下に置く召喚魔法。広範囲に広げたとしても空気中の水分量を増やすことだけに集中させれば……」


「……できますね。イリアスの強化魔法を組み合わせれば」


「よし! これなら」


 相手に状況を読ませず行動することができる。


「で、ですが……それでもあの範囲を全て渾沌の使者(アリオネ)の空間に収めるなんて、エルフェリア召喚士達を総動員しなければなりませんよ? 攻撃へ影響はありませんか?」


「大丈夫だ。フィオナは召喚魔法だけに気を使ってくれればいい」


「分かりました」


「早速布陣を考えなければ。他の血族にデモニカ様も呼ぼう」


 急いで部屋を出ようとした時、突然手を掴まれた。


「どうした?」


「……」


「フィオナ?」


「無茶をしてはダメ。貴方は戦士ではないのですから」


 フィオナが悲しそうな顔をする。


「ヒューメニアでの一件は聞きました。レオリアも連れていかず単独潜入するなんて……」


「あれは単独の方が動きやすかったからだ」


「それは理解しておりますが、貴方は変えが効かないのですよ? デモニカ様も悲しみますし、私も、その、貴方がもし死んでしまったらと思うと……」


 フィオナは手を離さず、俺の目を見つめた。


「貴方は作戦を考えて、実行するのが役目。戦いはレオリアや、ナルガインに任せて下さいね」



 彼女にそんな心配をされるとは……。



 俺は、死の恐怖が無いということを理由に、自分の命を軽く扱っていたのかもしれない。


「……分かった。ちゃんと他の者を頼るようにするよ」


「約束してくれますか?」


「約束する。俺の身を案じてくれる者がいるんだ。悲しませるようなことはしない」


 それに、俺達の目的は征服・・だ。ヒューメニアを倒した後もやらなければならないことは沢山ある。


 その為には……。


「フィオナ。無茶を頼んでも良いか?」


「なんでしょう?」



「俺達が攻撃を開始したの話だ——」

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