第76話 非道な者 ーザビーネー
「この村に神殺しの大剣が眠っている。見つけた者には褒美を取らす。全力で探せ」
「ザビーネ様。村の者は如何致しましょう?」
「殺せ」
「抵抗した者をですか?」
「バカかお前。神殺しの大剣を奪いに来たなんて国に知られてみろ。問題になるだろうがよ。村人は誰1人生きて返すな」
「は、はい」
部下のハーピー達が戸惑った様子で顔を見合わせる。
「いいかお前ら! 勘違いしてるだろうから言ってやる。お前らは既にハーピオンの禁を破った犯罪者なんだよ」
「え……? なんで犯罪者になるんですか!?」
「ここはな。序列1位以外の者が近づいていけない禁じられた村なんだよ。破った者は絞首刑になる」
「私達何も聞いてないですよ!?」
「何の為に部隊を30人に絞ったと思ってるんだよ。バレねぇようにする為だろうが」
「そんな……」
「だから死ぬ気で村のヤツを殺すんだな」
他の者達が怯えた表情でこちらを見る。しかし、その顔は先程までの顔じゃない。自分達が生きる為には手段を選ばない……そんな顔になっていた。
「クカカカッ。それで良いんだよ」
上空から村の様子を伺うと、バードマン達が平凡な生活を送っていた。
「よし。先行部隊は村の長を捕縛しろ。その他の者は村人を殺せ」
「や、やっぱり私できません……こ、子供もいるんですよ!?」
「なんだとテメェ……」
「リイゼル様はそんな命令はしませんでした!」
「リイゼルだぁ……?」
翼をはためかせ、上空へと舞い上がる。
背中の大剣を抜き、落下の勢いごと部下を真っ二つに切り裂いた。
「ギャアッ!?」
短い悲鳴を上げた後、2つに分かれた体は地面へと落下して行った。
「分かったかぁ? 甘い考えは捨てろ! グラムの情報を無理矢理にでも吐かせろ!」
「はいっ!!」
ハーピー達が一斉に滑空して行く。
数刻の後。ホークウッド村は地獄の殺戮場へと姿を変えた。
◇◇◇◇
「た、助けてくれぇ!!」
逃げ惑うバードマン達を数人まとめて大剣で切り裂く。
「あなたっ!!」
「クカカ。1人殺すと他の奴が吸い寄せられるのが気持ちいいよなぁ。すがりついて泣き喚くなんて……よ!!」
「あぁっ!?」
大剣を薙ぎ払い死体に縋り付く女共の首を落とす。
「おい! 手応えなさすぎだろうが! 誰か1人でも向かって来いよ!」
叫んだ瞬間、視界の端に弓矢が見えた。
「……っぶねぇなぁ」
目の前に迫った矢を素手で掴む。
「——なっ!? 矢を止めるだと!?」
「狩人か? 残念だがよぉ。弓なんて姑息な武器使う奴に負けはしねぇんだよ!!」
翼を広げ、弓を構えたバードマンの前へと飛ぶ。一瞬にして間合いを詰めてそのまま技を放った。
「戦嵐斬!!」
すれ違い様にバードマンの片腕を切断する。
「い"っ!?」
倒れた男を足で踏み付け、鉤爪で最中の肉を抉る。
「ぎぃ……!?」
「男がよぉ!!」
「がはっ!?」
血を撒き散らしなが踏み付ける。
「コソコソ遠距離から狙ってんじゃねぇよ!!」
「が……あ、あ……」
全力で踏み付けると、嫌な音と共に男は動かなくなった。
「ちっ。脆すぎるぜ」
ツバを吐いて悪態を吐いていると、ハーピー兵が駆け寄って来た。
「ザビーネ様! 村の者を全員捕えました!」
部下に連れられ村の中心地へと行くと、長老らしき男が他の者を庇うように立っていた。
「わ、我らは何も迷惑なぞかけておらん。何故こんなことをするのじゃ……」
「神殺しの大剣グラム。それを奪いに来た」
「た、大剣を……!? いかん! あれは我らの先祖が勇者ライズロット様から預かった大切な物。貴様のような邪悪な者へは決して渡す訳にはいかん!」
偉そうなジジイの胸倉を掴む。
「ぐぐぅ……」
「おいオッサン。お前らの置かれてる立場分かってんのか? 言わねぇと村の仲間達が苦しむことになるぜ?」
顎で合図すると、部下の1人が子供を人質に取った。
「痛い! 離してよ!」
「し、シャル……っ!? 貴様! 子供にまで手を出す気か!?」
「クカカカカカッ。良く分かってんじゃねぇか。どうするよ? 迷ってる間にガキを剣のサビにしちまうが?」
「……」
「オラ。どうするよオッサン。子供か。大剣か。決めろ」
「……神殺しの大剣は南の洞窟だ」
「はじめから素直になれば良いんだよ」
周囲の部下達へ指示を送る。
「ガキどもを集まろ。他の者は全員殺せ」
「なんだと!? それでは約束が違うでは無いか!?」
「約束ぅ? 騙される方が悪いだろぉ?」
「貴様……子供は、子供達はどうする気だ!?」
「心配すんなって。ちゃんとアタシが面倒見てやるよ。人間共を憎む立派な兵士に仕上げてやるからさぁ」
「く、狂っておる……」
長老がこちらを睨み付けて来る。
「これ以上交わす言葉は無い。やれ」
部下達が一斉に村へと火を放つ。
「や、やめろおおおおおぉぉぉ!!」
村人の断末魔が渓谷に響き渡った。





