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神亡き世界の異世界征服  作者: 三丈夕六
閑話

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第52話 イリアスの部下選び

 イリアスの教育が始まって1週間。


 「部下を持てる」というのがイリアスのやる気を刺激したらしく、彼女は熱心に学んだ。


 主に学んだのは軍事的行動や使い魔を使用した情報伝達。まだ幼いイリアスに政治的判断を行うのは難しいだろう。まずはデモニカや俺の指示を的確に認識し、敵を殲滅せんめつすることを教育した。


 そして、全ての内容を伝えたフィオナは内政の為帰国。次の段階としてイリアスの側近を選定することとなった。




 ——グレンボロウ。



 グレンボロウの広場を借り受け、レオリア、ナルガイン、イリアスと共に魔王軍への入軍希望者を集めた。様々な種族から集まった数は200人。希望者だけでこれほど集まるとは想像していなかった。


「ね〜ヴィダル? なんで今日は僕達が一緒なのさ?」


「ここにいる全員面接をするからな。フィオナが帰国してしまった今、レオリア達にも手伝って欲しい」


「面接ぅ? なんでそんなことするの? 精神拘束で1番強いヤツをさ、ちょちょっと」


「自ら忠誠を誓って貰わなければ咄嗟とっさ連携れんけいが遅れるだろ?」


「う……そう言われると、確かに」


 レオリアが納得するように頷いた。


「……イリアスの命を預けるんだ。生半可な奴はオレが認めんっ!!!」


 ナルガインが腕を組んで広場を見渡す。フルヘルムの隙間から赤い光が漏れると、集まった参加者達から軽く悲鳴が上がった。


「ナルガイン。気合いを入れるのは良いが参加者を怖がらせるな。圧迫面接になるだろ」


「あ、圧迫……!? オレはそんなつもりじゃ……!?」


 ナルガインがオロオロと困惑する。何故か距離が近い。鎧の状態だと威圧感がすごいな。


 急に圧力を感じたので見てみると、俺達の間にレオリアが割り込んでいた。


「近いよ」


 レオリアはいつもより冷たい声をしていた。そんな彼女に気圧されたかのように、ナルガインが俺から距離を取る。


「あ、す、スマン……」


 オドオドするナルガインに冷静に彼女を見つめるレオリア。なんだかいつも違う雰囲気の彼女達に戸惑ってしまう。


 ふと隣を見ると、イリアスが笑いを押し殺していた。


「これほどまでの人数がわらわの部下となりたいとは。妾も罪な女じゃの〜」


 レオリアが耳打ちして来る。 


「イリアス何か勘違いしてない? ここの人達は魔王軍(・・・)への入隊希望者なんでしょ?」


「さっきから説明しているのだが聞かないんだ。思い込みが強すぎる」


 イリアスが広場に設営した舞台に飛び乗る。そして、集まった希望者に向かって元気良く叫んだ。



「よくぞ集まってくれた! 妾は魔王軍幹部候補、イリアス・ウェイブスなのじゃ! これより妾の部下の選定を開始する!」



 イリアスの声が広場に響く。参加者達は明らかに怪訝な顔でイリアスを見つめていた。中には帰ろうとする者もいたのでレオリアが慌てて引き止め、魔王軍の入軍選定だと伝えた。


「ねぇナルガイン。イリアスって前からこんな感じなの?」


「前はもっと大人しかったんだが……変異の影響かもしれない」


 ナルガインは首を傾げた。



◇◇◇


 その後、各人の面接を行い、それぞれの能力を見ながらナルガインと俺の部隊へと配属を割り振っていった。


「なぁ!? もうそろそろ妾の部下を決めてくれてもええじゃろ!?」


「ダメだ」


「えぇ〜なんでじゃ? 早く決めて欲しいのじゃが……」


 イリアスはつまらなそうに足をユラユラと振っていた。


「ほらイリアス。ヴィダルも真剣なんだからさ、そんな顔しないでよ」


 レオリアがなだめると、イリアスは口を尖らせた。


「だってさっきからウンウン唸ってばかりで全然決めないじゃろ? ナル姉様の部隊の者はすぐ決めるというのに」


 イリアスが不満げに俺を睨む。


「これは俺達血族の子、イリアス・ウェイブスの命に関わる問題だ。それに、この選定でイリアスの未来が決まる。妥協などできない」


「……え?」


 イリアスが目を大きく見開いた。


「ヴィダルってこういう人なんだよ。きっとイリアスが心配だから中途半端なことはしないんだねぇ」


「レオリア。不要なことは言わなくていい」


 イリアスは腕を組むとウンウンと唸り出す。


「う、むむむ……それなら、うん、文句は言わんのじゃ」


 その後、面接を繰り返し、夕方にやっとイリアスの親衛隊が決定した。


 決まったのはそれぞれ別種族の3名。



 フェンリル族の老兵、剣士のザンブル。


 エルフの弓使い、ダルク。


 人間の大斧使い、ラスハ。



 皆同様にイリアスを見つめる瞳には優しさを感じられた。


「いい感じだねぇ。練度も高そう。ちょっとだけ戦いたくなるよ」


 レオリアがその瞳を鋭くさせる。


「でもなんか、似たような雰囲気を持つ3人だな」


 ナルガインが3人へと視線を送った。



「彼らはそれぞれイリアスに近い年齢の家族を亡くしている。イリアスの姿にその面影を重ねてくれれば、その忠誠は確かな物となる」


 イリアスが目を輝かせながら部下達に初めての指示を出す。


「よーし! みんな妾について来い! 共に魔王軍を駆け上るのじゃ!」


 イリアスが得意気に胸を張った。その様子を見守る3名は皆優しげな顔でイリアスを見つめる。


 ……忠誠心の心配はいらないな。



 ナルガインがイリアスの頭を撫でた。


「後はオレが連携の面倒を見よう。イリアスの身体強化魔法を使いこなせるようにな」


「訓練が終わったら教えてくれ。イリアス達に最初の任務を与える」



「最初の任務?」

「なんじゃそれは?」



 イリアスとナルガインが顔を見合わせる。



「接種すると幻覚作用を引き起こすキエスの花。その生産地の1つを発見した。イリアス達にはその場所を制圧して貰う」

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