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神亡き世界の異世界征服  作者: 三丈夕六
小国同盟編

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第38話 殺戮と恍惚 ーフィオナー

 貴族アルフレドがこの世から消える前。



 ——バーナンド草原。エルフェリア陣営。



 生物が燃え尽きた匂いが鼻をつく。私を狙った冒険者達。彼らはデモニカ様へ選ばれた1人を残し、跡形も無く燃やし尽くされた。


 己の力量も分からぬ哀れな者達。最後は苦しまずに送ってくれたデモニカ様の慈悲に感謝して欲しいものですね。


「フィオナさん。敵部隊後方(・・・・・)より魔王軍の傀儡が現れました」


 リオンが使い魔からの情報を伝える。


 ふふ。流石はヴィダル。私のために(・・・・・)準備を整えてくれた。



 貴方の優しさに応える為、最大の力を持って作戦に貢献してあげましょう。



 デモニカ様がその眼を鋭く光らせる。


「フィオナ。貴様は己の力にのみ集中せよ。我が全ての敵から守ってやろう」


「ありがとうございます」


 心強い言葉を胸に、自分の中で魔力を練り上げていく。


「リオンは合図を。そろそろ決着をつけてあげましょう。仮初かりそめの希望は残酷なだけですから」


「分かりました」


 リオンが星の守護者(シリオンテア)を召喚し、上空へ光を照射する。


 それを合図に移動魔法ブリンクで次々と召喚士達が現れる。


「皆、良く聞くのです。今より最大出力の妖精の潮流(フェアリー・タイド)を発動します。全召喚士は魔力を放出しなさい」


 指で魔法式を描いていく。虚空に刻まれた魔法式が空へと昇り、空中に光の球体を作り出す。


「いたぞ! 召喚士だ!」


 あと少しで準備が整うという所で、フェンリル族の戦士達が現れた。



 フェンリル族が俊敏な動きでこちらへと向かって来る。


 数は30人ほど。精鋭部隊を先行させているのか。



「我の出番だな」



 デモニカ様が彼らに立ち塞がり、その両腕を開く。その姿は優雅であり、力強さも兼ね備える。まさに魔王たる風格。


 彼女の両手に蒼い火が灯る。それと共に大気が震える。


「た、隊長!? 物凄い魔力を感じます!?」


「構うな! 前衛は俺に続け! あの角女を叩く!!」


 フェンリル族達が二手に分かれてこちらへと向かって来る。


 ……力の片鱗を感じてなお魔王に向かって行くとは、奴らもまた大した力量では無いな。



 彼らに向かって、我が主人が魔法名を告げる。



渦巻く双獄炎ヴォルテクス・インフェルノ



 彼女がその腕を交差させると、2つの蒼炎の竜巻が巻き起こる。猛烈な炎の渦が空を貫き、周囲に恐怖と破壊の光景を広げていく。


「な、なんだあの炎魔法は……!?」


 エルフ達からざわめきが起こる。



「散れぇ!! 吸い込まれるぞ!!」



 フェンリル族が逃げ惑った。しかし、竜巻の風には逆らえず、次々とその火柱の中へと消えていく。



 蒼炎の竜巻は命を奪いながら一つの巨大な竜巻となり、やがて全てのフェンリル族達を飲み込んだ。



「すごい……あんなの……」


 リオンの呟きを遮る。


「召喚士は魔力放出に集中しなさい」


 己が役目を忘れた仲間達を叱咤する。両手を空へと掲げ、放出された魔力を集めていく。光の球体へと送る道筋を作っていく。


 私が1人で発動した時とは比べ物にならない魔力量。これを発動したら戦場にいる愚か者共はどうなってしまうのか……想像しただけで胸が高鳴る。


 私の魔法——私の子供がどれほどの力を秘めているのか実験したい。



 確かめたい。



 ゆっくりと戦場へと手を伸ばす。空中の球体は魔力に満ち、まばゆい輝きを帯びる。


 これで発動の準備は全て整った。


 あぁ……発動する。私の妖精の潮流(フェアリー・タイド)が。私の力。私の子供。私の結晶。



 見ていますか? 真の私を生み出して下さったデモニカ様。



 見ていますか? 本当の私に気付かせてくれたヴィダル。



 愛しき血族である貴方達に捧げます。



 興奮が抑えられない。脳がしびれる。身体が熱くてたまらない。それを感じながら魔法(我が子)の名前を告げる。



妖精の潮流(フェアリー・タイド)



 魔法名を告げると、球体の中から妖精達が現れる。



 何千、何万、いいや。もっと多くの妖精が。



 膨大な量となった彼らが空を埋め尽くす。戦場を覆い尽くす。そして、雪の様に大地へと舞っていく。


 数秒後。大地から敵兵達の声が響き渡る。妖精に肉体を食われる者達の声。



 大勢の声は、まるで地鳴りのよう。



 悲鳴。


 苦悶の声。


 苦痛に満ちた声。


 家族に助けを求める声。



 その全てが美しく感じる。妖精達が兵士の肉体を食らい尽くしていく。兵士達は苦しみもがき地面へと這いつくばる。けれど妖精達はその存在を喰らい尽くすまで決して離れない。


「素晴らしい力……リオンもそう思いませんか?」


「は、はい……俺には、怖いくらいです」


 ……凡人に理解を求めるのは無駄だったか。やはり血族の者でないと。


 デモニカ様が私を褒めてくださる。ヴィダルがこの力を認めてくれる。自分の力を最大限に生かし、成果を上げる。それだけで誇らしい気持ちになる。


 我が主は優しく私へ微笑みかけると、私に言葉を下さった。


「フィオナが我が元にいる喜び……我は今噛み締めている」


「ふふ。共にこの世界を喰らい尽くしましょう」


 戦場へと目を向ける。バーナンド草原は兵士達の装備だけを残し、生きる者全てが消え去っていた。



 ヴィダル。私の役目は終えました。



 仕上げは任せましたよ。


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