第二話 ネヤの狙い
3対1になった先に戦いの場所を湖の上へ変えていた。ネヤは湖へ沈むこともなく立ち、咲夜達は空中に浮かんで弾幕を張っていた。
「私には単純な弾幕は効きませんよ?」
「……全てが外れているわね。どういう原理なのかしら?」
「パチュリー様、当たりませんよ!?」
「黙りなさい。必ずタネはある。それを見抜けない限りは当たらないままでしょう」
3人がかりで弾幕を放っても、何故かネヤには1発も被弾せずに湖へ消えてしまう。まるで、わざと当たらないように外しているのでは? と勘違いしそうになる程に当たらないのだ。
「時間を掛けて調べたい所だけど――」
「向こうがそうしてくれる訳がないわね」
「次は私の弾幕を見せてあげるね」
お祓い棒から黒い弾幕が広がっていき、ランダムに消えて現れると言う不思議な弾が3人を襲う。
「小悪魔!」
「はーい。『奇星の断章』!」
まず、小悪魔が放つ弾幕が今に現れている弾を相殺し、次に現れた弾には咲夜が時間停止で対応する。
「停止、『エターナルミーク』!」
時間停止中に大量のナイフを投げつけ、弾幕の向こうにいるネヤまでも標的にする。もちろん、これだけで当たるとは思っていない――――
「解除! パチュリー様!」
「わかっているわ! 『火金符』!」
ナイフ群の中に火玉を混ぜて、火玉は直接にネヤを狙わずに足元へ着弾させる。湖の上であっても着弾さえすれば、関係なく火柱がどんどんと上がっていく。その際にネヤを巻き込む…………つもりだったが――――
「この火玉は普通じゃないわね? 『暗きの怪し閨』!」
ネヤはパチュリーが放ったスペルカードが単純な弾幕ではないと見破り、お祓い棒を下に突き刺した。突き刺した先から黒が広がってネヤの後方に大きな巨人や大量の手が現れる。大量の手が火玉を掴んで消していき、消しきれなかった分は巨人がネヤを包み込み、湖へ着弾して上がる火柱から守った。
「守った! つまり、火柱は当たっていたわね」
「そうね……おそらく、当たらないのは一方向だけ? それか、下からの弾幕には対応出来ないだけかわからないけど、やりようはあるわね」
「どうします?」
いくら攻撃しても防御や回避もしなかったネヤがついに守った。パチュリーの言ったように完全にわかった訳でもないが、必ず当たらないのではないとわかっただけでも希望はある。
「うーん、面倒なことになる前に目的を達成させたいよねぇ」
しばらく3対1で戦っていたが、まだ決着は付いていなかった。その時にネヤはたまに当たりそうになる弾幕が現れていることに面倒だと思うようになってきた。目的はほぼ達成はしているが、出来れば完璧にしたい。だから――――
「出てこないと紅魔館が消えるよ。『愚者の月墜』!」
一個の弾を上へ放ち、ボンと膨張して月みたいに巨大な弾になり、大きな瞳が浮かぶ。その弾は見掛けだけの弾ではなく、スペルカードに相応しい威力がある。それが…………3人だけではなく、その後ろにある紅魔館までも標的になっていた。
「な、紅魔館を!?」
「ひえええっ! デカすぎますよ!?」
「口よりも動きなさい!」
3人は押し返す為に弾幕を張り続けるが…………
「「「当たらない!?」」」
デカい弾なのに、何故か放った弾幕が避けるように横へ逸れてしまう。まるでネヤと同じように…………
「このままでは!」
「ッ! 間に合わない!」
「わわわぁぁぁ!?」
次の弾幕、スペルカードを使おうとしても紅魔館がもう近くにあって巻き込んでしまう。どうすればいいかと思った先に――――
「貫きなさい、『スピア・ザ・グングニル』!!」
紅魔館から1つの影が現れ、紅きの槍が『愚者の月墜』を突き抜けて行った。巨大な弾はあっさりと破壊され、紅魔館は無事に済んだ。この事態を収めたのは…………
「全く、我が家を狙うんじゃないわよ」
「「「お嬢様!!」」」
レミリア・スカーレットが現れた。本当ならこのまま咲夜達に任せるつもりだったが、紅魔館を壊されてはたまらないので、出てきたのだった。
「へぇ、やるじゃない。貴女が主で間違っていないわよね?」
「そうよ。よくも私の手を煩わせてくれたわね? 高貴な吸血鬼であるこの私にやられる覚悟は出来ているかしら?」
グングニルを手に持ち、睨むレミリア。それに対して、ネヤは薄く笑うだけだった。
(これで、目的は達した。あとは軽く撃ち合いでもして時間を稼ぐだけね)
外で戦いが繰り広がっている中で、紅魔館の地下では…………
「僕が外に出してあげよう」
「外に……出してくれるの?」
部屋に張っていた結界等は既に解除されており、青年は部屋の中へ入っていた。閉じ込められていた破壊の姫様であるフラン・スカーレットを解放させる為に――――