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第十八話 正体



 霊夢、魔理沙、紫の3人は七神集一の元へ着いたのはいいが、その後ろにある氷漬けに封印された化け物の姿に驚きを隠せない。




「……それが、あんたらの最終目的という訳ね?」




「うん、そうだよ」


「何なんだよ!? あの化け物は! 紫は知っているのか!?」


「……いえ、知らないわ。見たこともないわ」


 永年も生きている紫でさえ、知らない生物。その質問に答えたのは、集一だった。


「教えてあげるよ。これは化け物ではなく、れきっとした神であるよ。邪が付くけどね」


「邪神!?」


「それから、八雲紫が知らないのは仕方がないよ。幻想郷が生まれるよりも昔、戦国時代に現れて封印されたからね」


「戦国時代!? そんな昔から……」


 それなら、紫が知らなくても仕方がないと納得する霊夢。詳しいことも気になるが、それよりも…………


「その邪神も気になるけど、貴方のことも教えて欲しいわ。目的といい、動機といい、どんな神なのかも気になるけど?」


「ふふっ、どんな神か知りたいのはわかるけど、その前に僕の出生を知って貰う必要があるね。……それについては八雲紫が知っている筈だよ。顔はあまり変わっていないから」


 集一の言葉に目を見開き、紫へ視線を向けるとそこには難しい顔をした紫がいた。


「その顔……何か知っているわね?」


 知っているというより、信じられないという表情で、確信を持てないでいた。


「まさか……いや、何故? あの人は既に……」


「何か知っているなら教えてくれよ!?」


 魔理沙の問い掛けに、紫はもしかしてだけど……と言い、話し始めた。


「…………貴方は元から幻想郷にいた。そして、加護のせいで死んだ人ですよね?」


「正解だよ」


「幻想郷にいて、既に死んでいた?」


「しかも、死因が加護? どういうことだ!?」


 予想もしていなかった内容、霊夢と魔理沙は驚きを隠せないでいた。


「あの子供だった貴方が……」


「そうだね。よく覚えているよ、あの日をね」


 集一は数百年前、幻想郷にいた。そして、八雲紫とも会ったことがある。


「僕はまだ人間だった頃、10歳ぐらいの時にある神様から加護を与えられた。ただ、望んでも無かった加護を勝手にね」


「望んでも無かった? 加護を貰えただけでも凄いことなのに?」


「まぁ、普通ならね。でも、与えられた加護はーーーー」






 『周りの不幸を吸い取る』という加護だった。






「その加護は自分の周りを幸せにする力があり、自分は不幸になっていく」


「はぁっ!? そんな加護がある訳!?」


「残念のことに本当のことだよ。不幸を吸い取り続けた僕は様々な病を貰い、傷も増えていく。そして、周りは病が勝手に回復して、傷も消えていく」


 霊夢と魔理沙はそんな状況に置かれてしまった子供を想像してしまい、顔を青褪めるのだった。


「勿論、そんな加護を与えられた僕は死の淵まで追い込まれた」


「そんなことが……どの神がやったのよ! 加護を与えた神が異変を起こしているじゃない!!」


 霊夢は怒っていた。そんな神がいるなら懲らしめる必要があるからだ。


「無駄よ。あの時は数百年のことで、今はもう幻想郷にはいないわ」


「いない? もしかして、外の世界に?」


「そう。貴方達が生まれる前に認知されていったのか外の世界へ戻れるようになったの。それに、貴方にとっては不幸だったかもしれないけど、あの神は貴方を気に入ったから加護を与えたみたいよ。気に入らないからではなくて」


 そう、加護を与えた神は子供だった集一のことを気に入り、周りの不幸を無くすことで自分自身も幸せになれるようにしたかっただけなのだ。

 しかし、それには1つだけの勘違いが集一を不幸にしてしまった。


「理解しているよ。僕は神ではなかったから、病や傷を無効にすることが出来なかった。神様なら人間の不幸などはかすり傷にもならないからね」


「そうなのか……ん、紫と会ったことがあるのは?」


 魔理沙は不幸だった時の話をさせるのは気が咎めるけど、まだ聞いてないことがあった。そう、紫と会ったことがある話だ。


「僕の命日、死ぬ前に会ったことがあるよ」


「人間の町で突然に元気になったり、傷を負っていた者が回復していたら調べるわよ。そしたら、貴方を見つけたわ…………私には何も出来なかったけど」


 紫が集一を見付けた時は既に死ぬ寸前だったし、たかがの大妖怪が神から与えられた加護を何とかすることも出来ない。だから、死ぬのを看取ることしかなかった。


「…………私を恨んでいるの? 貴方を助けられなかったから……」


「えっ?」


 そう言われるとは思っていなかったことを言われて驚く集一だった。


「別に恨んでもないよ? 仕方がなかったことだったし…………あの時は加護があったからわかっていた。八雲紫が凄い力を持っていることを。しかし、その力があっても助けられないこともあるし、出来ないことがあることをね。それを教えてくれた貴女には感謝しているぐらいだよ」


「え……か、感謝?」


「うん。その時から目標が出来たんだ。誰にも出来ないこと、助けられないことがあっても僕が出来るようになれる存在になる目標がね」


 子供らしい夢に近い目標だが、来世の目標が出来たことに感謝をしていた。




「……その結果が貴方は神になり、今の状況を起こしたのね」


「マジで目標を叶えているな。スゲェーよ、アンタは」


 霊夢と魔理沙は素直に凄いと認めていた。実際にレミリアが出来なかったフランの能力を制御出来るようにしたし、大きな悩みだった大妖怪の西行妖を無害にしてみせたからだ。


「しかし、どうやって? ただの人間だった貴方が神になれたのは? 加護があったとしても…………あ、まさか!?」


「気付いたみたいね。そう、彼女のお陰でねーーーー」


 彼女。この場にはもう1人の神がいることを思い出した。






「ネヤこそが、僕を神にしてくれるきっかけになってくれたんだ」






 ネヤ。正体は神であるとしかわかっていないが、まさか集一を神にした存在であったとは。


「私は少しだけ手伝っただけで、ほぼは主人様の才能ですよ」


「…………そろそろ従者の真似事は辞めない? これから正体を明かすんだから」


「いえ、私はずっと主人様の従者ですから」


「いやいや! 師匠を従者になんて! ってか、そういう役で隠すとかじゃなかったか!?」


「でも、期限は決めていなかったーーよね?」


「師匠!?」


「師匠ではありません。ネヤとお呼びください。これは命令ですよ?」


「…………はぁ、頑固なのは知っていたけどさぁ」


 珍しく集一が困っている様子だった。霊夢達はその状況にどう声を掛ければいいかわからなかった。


「え〜と、師匠と言っているからネヤがアンタを神に生まれ変わらせたってことだよな? 何の神になったんだ?」


「あ、あぁ、七福神って知っているかい?」


「七福神? 確か、外の世界では有名な神よね」


「うん、実は七福神には8人目がいることは?」


「は? 7人だから、七福神と呼ばれているんじゃなかったか?」


「それは間違っていないけど、正確には七福神は元々1人だったんだよ」


 それは知らない。まさか、七福神は元々1人だったとは。霊夢と魔理沙は知らなかったが、紫だけは違っていた。


「知っているわ。その神こそが、貴方に加護を与えた存在よ」






「そうだね。名はーーーー『零福』。福を零す神様であり、不幸を吸い取る力を持っているよ」






 昔は知られていた名だが、だんだんと七福神の方が広がってもう1つの名は忘れ去られたせいで、零福は幻想郷にいたのだ。


「僕にはその神様から与えられた加護があり、ネヤの手伝いで色々と能力が変わっているけど、僕は零福の化身と言えるだろうね」


 ついに明かされた。零福の化身こそが、七神集一の正体であったーーーー










次回は最後の2話を纏めて明後日に投稿します!

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