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第十六話 不死鳥と月の姫




 霊夢達が八神集一の元へ辿り着いた時、外ではーーーー




「おらっ! よく避けるじゃないか!」


「あやや、当たったら凄く痛そうなので……って、容赦がありませんか!?」


「ふん、この件を新聞で余計な事を書かれると面倒だからな! さっさとやられちゃまえよ?」


「だったら、少しは容赦をしてくださいよー!?」


 妹紅が文の足止めとして、攻撃を仕掛けるが烏天狗である文は全ての攻撃を躱し切っていた。文としては巻き込まれたような立場なので、何処かでワザとやられて退場をしたいところだが、妹紅が繰り出す攻撃がどれも文がまともに受けると致命傷になりそうなのしかなかった。

 だから、避けるしかなくて当てられない妹紅はムキッとなって更に攻撃が猛烈に激しくなっていく。


「あのバカ……間違って殺してしまうんじゃないわよ?」


「こっちを無視するとはいい度胸ですね!?」


「そりゃぁ、貴女では相手にはならないもの」


 輝夜と妖夢が相対し、妖夢は剣の斬撃を繰り出して輝夜は弾幕で迎撃をしていた。だが、輝夜の方は戦い方が違うといえ、幽々子よりも弱いのでつまらなそうに相手をしていた。


「っ、『瞑想斬』!」


「斬撃は速い方だけど、速いだけで私を捉えることは出来ないわ」


 ヒラリと躱し、その動きでついでに弾幕を広げていく。妖夢がスペルカードを出している間は一瞬だけ動きが止まっている。常人相手なら問題はないが、妹紅と長年に戦ってきた経験がある輝夜からにしたら、大きな隙でしかなかった。

 その一瞬で弾幕は妖夢を囲み終わっていた。


「貴女は私達と比べたら、戦闘の経験が未熟。これからも修行を励むことね」


「ぐわぁぁぁ!?」


 囲まれた妖夢は全ての弾幕を消すことが出来ず、何発か重いのを貰っていた。


「ぐぅっ!」


「あら? まだ立つのね? 私はもう足止めが出来ているから戦う理由がないのだけれども?」


 集一から頼まれたことは、文と妖夢をこの場に留めるだけなので既に達成はしている。戦っているのは時が来るまで暇なので、相手をしているだけだったが、妖夢が弱かったから飽きてしまっている。


「な、何故、貴女達は協力しているのですか?」


 妖夢もこのまま戦っても勝てないし、万が一に勝っても先に進んだ霊夢達に追い付けるとは思えなかったから戦いを止めて問い掛けることにした。


「協力している理由ね……契約しているのよ。あのバカがね」


「契約?」


「そう。七神さんと出会ったのは、ちょうどお正月だったわーーーー」















 年を越した迷い竹林にて、いつものような理由で妹紅と輝夜は喧嘩をしていた。


「もう、優曇華うどんげにお願いをして何が悪いのよ?」


「馬鹿言え! お願いしすぎだ! アイツはあの事件で色々と頑張って疲れているんだよ!」


 事件とは、能力が暴走してしまう流行り病が起きたことであり、優曇華は師匠である永琳えいりんと共に薬を調合して、各地へ配達したりしていた。

 とんでもない量があった為、最後は気絶してしまう程に疲れた優曇華に対して、起きた先に輝夜からお願いをしていた。その時をたまたま通り掛かっていた妹紅が怒り…………今に至るのである。


「もう〜、ちょっとした買い物を頼んだだけじゃない」


「ちょっとした買い物だ? それなら、自分で行けよ!」


「自分で行くの面倒臭いわ。だから、優曇華に頼むのよ」


「この堕落姫が!!」


 妹紅がそう言い、空中へ跳び上がる。輝夜はスペルカードが来るのを予測し、スペルカードの発動準備をする。


「これで燃え尽きやがれ!」


「また土へ埋めてあげるわ」


 これからスペルカードがぶつかり合おうとしていた時ーーーー




「「ッ!?」」




 お互いのスペルカードが発動する前に両方へ黒い弾幕が襲って来て、咄嗟に弾幕で迎撃していた。


「喧嘩の邪魔をする奴は誰だ!?」


「貴方達も馬鹿ドリのように埋められたいのかしら?」


 妹紅と輝夜は黒い弾幕が来た方向から複数の気配を感じ取っていた。睨んでいると、拍手の音が聞こえた。




「高い実力を持っているようですね。主人様、どうですか?」


「確かに各地にいる妖怪の中でも強いだろうね」


 現れたのはネヤと集一の2人だった。ネヤが目的で必要になる人材を探し出し、集一と共に会いに来た訳だ。


「急にすまないね。僕らは目的の為に人材を求めていて、藤原妹紅へ会いに来たよ」


「私にだ? 喧嘩の途中に現れたからあいつにも用があると思ったが、違うか?」


 わざわざ、喧嘩の途中に現れたから輝夜にも関係があると思ったが…………


「あちらは永遠亭の姫様と聞いており、仲間にするのは難しいと…………ネヤはそう考えているよね?」


「はい、出来ればそちらも協力して貰いたいですが、集団となると私達のことがバレる可能性が増えるので。しかし、藤原妹紅なら個別に動いており、取引でそちらが望むモノを出せます」


 輝夜については仲間に誘いたいから一応聞いてみるが、断られてもしょうがないと考えている。しかし、藤原妹紅については集一達が妹紅が望むモノを差し出せるから仲間に出来る自信があってのこと。


「その前に私を引き入れた後に何をやらせたいんだ? それを聞く前に取引をする訳にはいかねえな」


「ふむ、それはそうですね。まず、僕達の目的は解放。所々に封印や監禁された者を解放し、自由を与えることです」


「解放……?」


「はい。事を起こせば、スキマの妖怪によって異変とされてしまうでしょう。しかし、幻想郷には悪い影響は与えないと約束をしましょう」


「それで、僕達が君にお願いをしたいのは傭兵ですね。スキマの妖怪に邪魔をされないように足止め、弾幕ゴッコをお願いしたい」


 妹紅にやって貰いたいことは傭兵であり、襲ってくる敵から守って貰ったり足止めをする仕事だ。


「ふ~ん、スキマの妖怪が動くなら博麗霊夢の奴も動くだろうな。生半可な取引では応じることは出来んな」


「……報酬が良かったら受けるつもりなのかしら?」


「まぁ、私が本当に欲しいモノは出せないだろうが、目的から悪いことではなさそうだし、良い報酬なら考えても良いと思っただけさ」


 妹紅が本当に欲しいモノはとはーーーー






「安心して欲しい。僕が出せる報酬はーーーー『寿命』だ」






「…………えっ?」


 妹紅は予想もしていなかった報酬に啞然とした。報酬が『寿命』とは?


「わかりにくかったかな? つまり、貴女が死にたいと思ったら好きな時に死ねるように『寿命』と言う概念をあげると言っているよ」


「…………私は不死鳥だぞ? そんなことが……」


 妹紅は不死鳥の能力を持っており、永遠に老いることもなく何回も殺されても復活出来る。だから、死ねない。

 それが、妹紅にとっては嫌だった。後から産まれた者が先に死んでいくのを見届けるのを何十、何百もしてきた。もう、生きる事に疲れていたから望みが死ぬことになっていたーーーーなのに………


「出来ますよ。私達ならね」


「すぐに信じられないかもしれないが、解放をしていく内に見れるよ。僕の力をね」


 自信満々な2人が妹紅を狂わせる。




「…………少し考えさせてくれ」




 妹紅は嘘を言ってないことを感じ取れたが、未だに信じられないことが起きていて落ち着けなかった。だから、すぐ返事をせずに保留にした。


「うん、まだ行動はしないから落ち着いて考えてもいいよ」


「出来れば、一月内に連絡を頂きたいので、決めたらこの鈴を鳴らして下さい」


 ネヤが黒い鈴を妹紅へ渡し、次に輝夜へ目を向けた。


「難しいと思いますが、貴女はどうしますか?」


「そうね。面白そうだから、手伝っても構いませんよ」


「輝夜!?」


 まさか、輝夜がそう言うとは予想しておらず、妹紅どころか集一とネヤも驚いていた。


「意外でした。貴女が望む報酬は何ですか?」


「報酬はいらないわ。面白そうだから手伝ってもいいと思っただけよ。それに……馬鹿ドリが仲間になったら貴方達に迷惑をかけそうだから見張りも含めてね」


「おい? 馬鹿にしてんのか?」


「そうでしょ? 欲しいモノが手に入る可能性があるのに、手に入りそうになった瞬間に怯える馬鹿ドリに呆れているわよ。愚直に真っ直ぐへ進む馬鹿が怖じけたら役に立たないじゃない」


「…………ははっ、やはり死にたいようだな?」


「死にたいのは貴女でしょ?」




「「…………死ね!!」」




 その後は喧嘩になり、返事は喧嘩が終わった3日後だった。忘れられていた集一とネヤは苦笑したり、呆れたりで途中から帰っていた。

 黒い鈴で呼び出し、妹紅は…………


「やってやるから、仲間にしてくれよ!」


 と、スッキリした顔で妹紅も集一の仲間になるのだったーーーー











次回は明後日に投稿します。

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