第十五話 待ち受ける者
急いで守谷神社へ向かっていた霊夢達だったが、諏訪湖から煙が上がっているのが見えた。
「戦ったみたいだな! 神が2人いるといえ、どうなんだろう?」
「まだ戦っている可能性は…………なかったわね」
諏訪湖に着いた先に気絶する3人の姿があり、他の人影が見当たらなかった。
「まさか、この短時間で神奈子と諏訪子がやられてしまうとはな」
とりあえず、気絶している3人を起こして詳しい話を聞こうとする霊夢達だったがーーーー
「待って! 誰かが来るわ!」
突然に紫が叫んだ。空間を操れる紫だからか、一先に気付き、何も無い空間を睨み続ける。しばらくすると、紫が睨んでいた空間に裂け目が現れ始めた。
「よう、妖精達を蹴散らしたようだな」
「全く、貴女と一緒なのは不本意だけど、七神さんのお願いだからね」
「あ? こっちのセリフだが?」
「……妹紅と輝夜ね。貴方達が現れたということは足止めなのね?」
空間の破れ目から現れたのは妹紅と輝夜の2人だった。
「そうだが、魂魄妖夢と射命丸文以外は進んでいいぞ」
「その2人の足止めを頼まれているからね」
「七神達はそっちへ向かっているぞ」
「……あっさりと教えるとか何を企んでいるの?」
妹紅があっさりと七神達が進んだ方向へ指を指して教えたことから訝しむ霊夢。
「いえ、企んでもないわ。七神さんの言う通りにしているだけよ」
「……私はあの巫女とやりたかったですが、幽々子様を倒した貴女と戦えるなら文句はありませんが」
「あややや!? 私もここで残らないと駄目なんですか? 取材をしたいところですが〜」
「諦めなよ。私が通してやらねぇからな」
妖夢は輝夜がいるなら問題はなく、文は霊夢達に付いていきたかったが、指名されて通さないと言われているので従うしかなくて落ち込むのだった。
「いいじゃねぇか。ここは妖夢と文に任せて言う通りに進もうぜ。嘘を言っているようには感じられないしな」
「……そうね、無駄話をして時間を使う訳にはいかないしね」
「お嬢様。行きましょう」
「えぇ、フランがいるなら構わないわ」
ここは妖夢と文に任せて、霊夢達は妹紅が指を指した方向へ向かった。
「……今度は貴女達なのね」
「うん、私達だよー! 指名するのはレミリア、咲夜だよー」
しばらく飛んでいくとまた空間が破れて出てきたのがこいしとフランの2人だった。
「フラン。私は覚悟を決めてきたわよ」
「ふーん、確かに昨日よりマシになってきたわね!」
「じゃ、ここは任せるわね」
「向こうにいるのは七神、ネヤ、西行妖って訳だな」
こいしとフランはレミリアと咲夜の足止め。レミリア達からにしたら願ってのことだったので了承した。
「………………」
紫だけがこの状況で黙って何かを考え込んでいる様子だった。
「紫? 何しているのよ、さっさと行くわよ?」
「……いえ、なんでもないわ。先に進みましょう」
「そう?」
何でも無いような顔に見えたが、今は急いでいるので詳しく聞くことはなかった。レミリアと咲夜を置いて、こいしが指した方向へ向かった。
向かった先は妖怪の山を超えて、禁足地となっている場所に着いた。禁足地は毒性がある硫黄が噴き出しており、一部の妖怪以外は立場入り禁止となっている場所である。
「一体、何処にいるのよ」
周りを見回しても、目的の人物の姿が見当たらない。
「嘘を伝えられたと言うなら、戻るしかないが…………」
「いえ、嘘は言っていなかったようです」
紫がそう言い、指を指すと時空が割れて入口が出来ていた。
「どうやら、入って来いと言っているようです」
「待ち受けているなら、行ってやろうじゃない」
「何処に繋がっているかだな。宇宙とかだったら空気が必要だが…………」
『そんな心配は必要ありません。さっさと来なさい』
「ッ、あの女の声ね」
「うははは、なら問題はねぇな」
時空の割れ目から声が伝わった。魔理沙の心配事を除外した上で来いと。
「行くわよ!」
霊夢が先頭に時空の破れ目へ入っていくーーーー
「待っていたよ。博麗霊夢、霧雨魔理沙、八雲紫」
時空の破れ目に入ってすぐ、八神集一の姿が見える。そこは紫の『境界を操る程度の能力』で出来た固有の空間に似ていた。そして、1番目に付いたのが…………
八神集一の後ろにある氷漬けになった巨大な化物の姿だったーーーー
次回は明後日に投稿します。




