優美な女性
暖かな陽射しを受けながら、ボクは風にうねる桃色を眺めている。
ボクは春になると、毎年ここにやって来るのだ。電車を20分ほど乗り継いでやってきた大きな公園にはやはり多くの人がいた。園内に作られた広い道を、それでも溢れるように押し寄せる人々。それなのに。それ程多くの人がいるにも関わらず、皆同じ目的でここへ来ている。青空に揺れる桃色を、皆一様に見上げているのだ。「あの樹の下には屍体が埋まっている」と、都市伝説を流しながらも人はやはりこの樹の下へ、ボクが冠した名前の樹の下へ集うのだ。
この樹は、「精神美」や、「純潔」などの花言葉を持っているらしい。その名を冠したからには、ボクもそれらの言葉と反するような人間にはなりたくはない。その願いを叶える為に、日々忘れぬ為に、毎年ここへやってくるのだ。
ああ、だが。一つ、数ある中でもどうしても反さざるを得ない花言葉があった。それはたしか、