92話 準備し過ぎて損はない
そして、運命の翌日。
今日は、昼頃に雪乃が家に"お泊りデート"に来る。
そう来ると分かれば、準備が出来る。
昨日に帰った後にスーパーに駆け込み、明日の朝から翌日の昼までの食料品を買い込み、掃除関連の消耗品もいくつか補充し、芳香剤や入浴剤と、あとは……まぁ、その、雪乃と"事"をする時に必要になるものをだな。
翌朝は早朝から掃除を始め、全ての部屋を塵一つ残さず完璧に掃除し、生活の粗と言う粗は可能な限り潰した。
あとは何か……食料品は十分以上に買い込んだし、おやつや食後のデザートもしっかり用意している。
大丈夫、大丈夫だ……よし、13時までソシャゲでもやって落ち着こう。
ピンポーン、と言うインターホンが鳴ると同時に、俺はビーチフラッグもかくやの反応速度でソファーから飛び起きて、玄関へ駆ける。
誰かどうかも確認はしなかったものの、開けたドアの向こうにいる人は、俺の恋人――雪乃だった。
「お待たせ、雪乃」
「うん、こんにちは海石くん」
というわけで早速雪乃を部屋に上げる。
餞別というか俺と一緒に食べる用に、雪乃もお菓子をいくつか持ってきてくれたので、要冷蔵品は冷蔵庫へ。
「……なんか、前に来た時よりも綺麗になってる?」
リビングを見渡しながら、雪乃は小首を傾げる。
「汚部屋に入れるわけにはいかんだろう」
「や、その、前に来た時だって普通に綺麗だったよ?その時よりもずっと綺麗というか……」
「そうでなくても、恋人が来るんだから掃除は念入りにしておくさ」
「こ、こいびとっ……!」
俺の「恋人」発言に、雪乃が反応した。
改めて認識し直さなくても、俺の恋人は雪乃だ。
で、その恋人が"お泊りデート"をしに今ここにいるわけだが……ここからどうすればいいんだ?
まさか今から早速"事"をヤるわけにはいかんだろうし、いや本人が望むならそれもやぶさかでないが……
「ねぇ、海石くんのお部屋、見てもいいかな?」
「ッ……ど、どうぞどうぞ、ご自由に……」
「海石くんが緊張してる……ふふっ♪」
緊張してたら雪乃に微笑まれた。
……雪乃は緊張していないのか?
ま、まさか雪乃……本当にただお泊りしに来るだけのつもりだったのか!?
俺は今晩に起こり得るであろう"事"に意識しっぱなしで仕方ないというのに。
いやいや、いくら雪乃がド天然でも、小学生並の情緒しか無いってことはない、はず、だが……これまでの雪乃のド天然っぷりを鑑みれば、強ち的外れでもないかもしれん。
「えっと、お部屋に行くんじゃないの?」
「ぁあそうだな、行こうか」
頑張れ、俺の理性……ッ。




