8話 クリパの準備を手伝いたい!
夕莉が何を忘れたのかと言えば、自分のエプロンだった。
昨日の文化祭、俺達のクラスの出し物は出店モノだったので、調理を担当する生徒はエプロンの着用をする必要があったわけだ。
そのエプロンをクラスのロッカーに忘れていたので、それを回収。
「んで、さ。クリパの準備する側に回るってことは、明日からは生徒会の人達と一緒にアレコレしたりするの?」
エプロンを鞄の中に納めたところで、夕莉は話の続きを持ちかけた。
「まぁ、そういうことになるな」
忘れ物も無事回収したところで、今度こそ下校だ。
「準備って、例えばどんな?」
「うーん、詳しいことはまだ分からないな。雪乃の方に逐次指示を仰げ、とは津辻会長には言わてるんだが」
「あそっか。雫、いよいよ生徒会長になるんだもんね」
余談といえば余談だが、俺、雪乃、夕莉は同じクラス。
夕莉と雪乃は親友同士で、その雪乃を生徒会長の座に着くように煽り……もとい、応援したのが夕莉を始めとした多くの生徒だ。親友を神輿に担いで生徒会長として奉るなんてひどいことをするもんだ。
階段を降りて、三度玄関ロッカーへ。
「でも、雫ってちゃんと生徒会長出来るのかな……」
「他ならぬお前が生徒会長にしたのに、今更何言ってるんだ」
「ひどーい!そんな雫を無理矢理生徒会長の座に押し込んだみた
いな言い方!」
「違うのか?」
「そりゃ推薦したのはあたしだけど、雫はちゃんと自分で立候補して、生徒会にもちゃんと認められたじゃん」
「それはまぁ、そうだろうが」
遠回しに立候補するように仕向けたんだろうが、とは思ったが口にはせず。
靴を履き替えて、校門の警備員さんに一言告げてから校門を潜る。
「あのさ椿。そのクリパの準備ってさ、何かしらの理由が無いと、一般生徒は手伝わせてもらえない感じ?」
夕莉と話していると、話題がコロコロ変わるから飽きないものだ。唐突な話題変化にも即応可能なコミュニケーション力を必要とするが。
「んー、その辺はどうなんだろうな」
俺がこうして登用されたのも、問題をやらかした者に反省させるための懲罰みたいなものだからな。
ただ、このクリパの準備は、新生徒会長の能力などを試すためのものと言っていたし、人脈や伝手もそれに含まれるようだが……
すると何を思ったのか、夕莉は「うんっ」と頷いた。
「もし手伝っていいなら……あたしもその準備、手伝う」
「は?なんでそんな結論に至ったんだ」
それは何故かと問えば。
「ほら、結果的にだけど、椿が準備会を手伝わされることになった原因、あたしも含まれてるし」
「いや、そこで夕莉が責任を感じる必要は無いだろう」
確かに原因の一端にはなっていたかもしれないが、それとこれは別問題な気がするぞ。
「そうかもだけどさ……あっ、じゃぁさ!」
名案を思いついたかのようにぱんっ、と手を鳴らす夕莉。"迷暗"でなければいいんだが。
「あたしもクリパの準備会を手伝いたい!よしっ、これだ!」
……何がよしっなのか、何がこれなのか、全くもってサッパリなんだが?




