79話 二人だけの第二生徒会室
さて、下校時間に到達するまであと30分弱というところで、今日の俺のノルマ+αは達成し、第二生徒会室に戻ってきた。
「ただいまーっと」
「あ、おかえり海石くん」
第二生徒会室にいるのは、雪乃一人だけだった。
「雪乃もお疲れさん、そろそろ切り上げようか」
「うん。他のみんなは……」
「白根さんは風紀委員との兼ね合いもあって、荷物持って出たからそのまま帰宅するそうだ。RINEに来てないか?」
「あ、ごめん。スマホ、鞄の中だから……」
鞄の中じゃ気付かないよな。
「そうか。大松先輩と誠二、昌磨は生徒会の方に出向いてるし、夕莉は……そろそろ戻ってきそうだが」
「そっか。……よしっ、今日はこれでおしまい」
手に付けていた端末を打ち終わり、充電器に差し込む。
「………………」
「…………」
「「……」」
な、なんだ、この妙な沈黙は。
「えっと……帰るんじゃ、ないの?」
「お、おぉ、そぉだな……」
今、この場で雪乃と二人きり。
それを理解すると、動悸が強くなり、何故かこの場に留まりたくなった。
しばし無表情のにらめっこを続ける俺達。
「か、帰ろ、っか?」
下校を促してくる雪乃に、俺は、
「待ってくれ、雪乃」
思わず引き留めてしまった。
「……何か、飲むか?」
「え?……帰る前にってこと?」
「俺が買ってくる。リクエストはあるか?」
「あ、じゃぁ、ホットレモン、お願いしていいかな」
「任せろ」
咄嗟に出た理由としては自然なものだろう。
しかしそこから先はノープランだ、俺は雪乃を引き留めて何がしたいんだ?
まぁいい、とりあえず飲み物買ってくるか。
雪乃のオーダー通りにホットレモン、俺もホットレモンを買って、第二生徒会室に戻って来た。
「お待たせ」
「ありがと、あとでお金払うね」
それぞれホットレモンを手に、キャップを開けて、一口。
温かい甘酸っぱさがじんわりと染み渡る。
「はー、あったかーい……」
ほふぅ、と息を白くする雪乃。
「今日も冷えるもんなぁ」
俺もそう頷く。
なんて双方相槌を打っているが……話は進まないし、話が進んだところでどうなるんだ?
「急にどうしたの?」
不意に、雪乃の方から話しかけてきた。
「何か、話したいことがあるのかな?」
まぁ普通に考えたら、話したいから待ってくれと引き留めた、と判断するだろう。
「いや、何か話したいことがあったわけじゃないんだが……」
「違うの?じゃぁ、なんで飲み物買ってきてくれたの?」
小首を傾げる雪乃。
何というべきなのか……
「ただ……なんとなく、雪乃と一緒にいたかっただけだ」
「えっ……そ、そう、なんだ」
なんとなく、とは言ったが。
「その、私もね。海石くんと一緒にいたい……っていうのかな、よく分からないけど、さっき引き留めてくれたとき、ラッキーって思っちゃって……へ、変だよね、早く帰らないといけないのに」
「…………」
……そう、なのか?




