44話 夕莉と誠二のどつき漫才コンビ
今回は他者視点のみの話です。
雉隠夕莉は、いつもの登校時間が近付いて来ているのを確認しつつ、RINEの通知を見る。
それは、幼馴染みの椿からの連絡だった。
『卵粥、作ってくれてありがとう。うまかった。
すまん、今日は欠席させてもらう。雪乃に伝えてほしい』
体調が悪い状態で、最低限だけの用件だけ伝えたのだろう。
『うん分かった。ゆっくり休んでて』
それだけ返信してから、夕莉は鞄を手に自宅を出る。
いつものこの時間帯なら、椿と、ついでに誠二と会うものだが、今日は椿は欠席、見かけたのは誠二だけだ。
「おはよー誠二」
「おーぅ、おはよう夕莉。って、今日は一人か?」
夕莉の声に振り向いた誠二だが、夕莉の隣にいるだろう悪友の姿が見えないことに目を凝らす。
「椿は風邪だから休むってさっきRINEで聞いた。昨日も、体調悪いみたいだったしね」
「あの日雇いバイトのプロが風邪か?いや、確かに昨日はだいぶ様子が変だったけどよ」
昨日の椿の様子がおかしかったのは、誠二も気付いていた。
「普段のあいつなら、「風邪なんかひいてる暇があったら働かにゃならんだろう」とか言いそうなのにな」
「ほんとにね。まぁ……このところクリパの準備会で忙しかったし、土曜日も働きに行ってたみたいだし、その上から一人暮らしだし」
「しかも、そのクリパの準備会じゃ力仕事担当だろ?そりゃ疲れるわな」
あいつは全く、と誠二は溜息をついてみせる。
「んで、その椿は今、自宅でぐったりか」
「多分ね。インターホンにも出れないくらい体調悪いんだし、さすがに大人しくしてるでしょ」
「あいつは変なとこばっか頑固だからなー、釘刺しておかなきゃ、熱が下がったからってしれっと学園に来そうだ」
この場に本人がいないのをいいことに、二人とも好き勝手に当人をダシにして話題を広げる。
「そのくせ、昔っから嘘隠すのは下手なんだから。それに巻き込まれたあたしの身にもなってほしいっての」
「正確には、夕莉が椿を心配して自分から地雷踏みに行ってるの間違……いぎっ!?」
瞬間、夕莉のノーモーションのローキックが誠二の脛骨の角にクリティカルヒットする。
「だぁれが地雷踏み女ですって?」
声のトーンを喧嘩腰にして睨みつける夕莉だが、その蹴られた本人である誠二は弁慶の泣き所を直撃され、涙目になって擦っている。
「ばっ、ば、バッカおまっ……スポーツマンの足狙う奴があるかっ……!」
「なら顔の方が良かった?」
「うわ、カワイイツラしてとんでもねぇこと言いやがったぞこいつ。俺のイケメンが傷物になるだろうが!?」
「全世界の女性のためにも、その鼻圧し折っといた方がいいかしら……」
「やべぇ、目がマジ過ぎる、怖ぇ」
そんなくだらないじゃれ合いをしながら、夕莉と誠二は並木道の通学路を往く。




