4話 利害の一致と言う名の脅迫
「ちょ、絵里香先輩!?頼りないけどってなんですか頼りないけどって!?」
当然と言うべきか、雪乃は声を上げて反論した。
「あら、客観的評価としては、まともでしょう?」
対する津辻会長はニコニコと応じる。
「や、その、頼りないのは、自覚はあります、けど……」
自覚あったのか、雪乃。
しかし肝心の俺は話が見えていないので、挙手する。
「はい津辻会長、発言許可をお願いします」
「どうぞ」
「何故そこで、雪乃新会長を手伝うことに繋がるのかを教えていただきたいのですが」
つまりはどういうことだ?
「海石くん。この学園には、12月下旬に我が校特有のイベントが開催されます。それは何でしょう?」
「クリパですね」
そう。
この猩々学園は、いつから始まったことなのか、毎年恒例行事として、生徒会が中心となってクリスマスパーティー――通称、『クリパ』が開催されるのだ。
行事とは言うものの、れっきとした年間行事ではなく、あくまでも有志によって催される。
そのため、文化祭のように各クラスで何かしらの出し物を考案する必要もなく、クリパの参加者はただ手ぶらで学園に来るだけでいい。
その上、参加するもしないも自由。
行事というよりは、言ってしまえばボランティア活動のようなものだ。
表向きはその通りだが、これはどちらかといえば、新生徒会長の腕試し――自身の能力や他人への采配、人脈や伝手などがどのくらいあるかをテストするため、と言う側面もある。
つまり、このクリパを無事に成功させることによって、初めて生徒会長として認められるというわけだ。失敗したからと言って会長の座を降板させられるとは限らないのだが。
「そして海石くんは、ただ自己防衛をしただけで、あらぬ汚名を着せられ、そのせいで停学処分ギリギリのラインにいます」
……なんとなくだが、話が見えてきたな。
「利害の一致、と言えばご理解いただけるでしょうか?」
やっぱりそういうことかぁ……
「つまり……処罰を免除する代わりに、クリパの準備に有志として参加しろと、そういうことですか?」
「参加しろ、ではありませんよ?」
「裏を返せば、「クリパの準備会に有志として参加しなければ停学処分にするぞ」と脅してませんかそれ?」
人の弱みに付け込むつもりか?
聖女みたいな笑顔でとんでもないことをするな、この腹黒会長は。
とはいえ。
「……本当にそれだけでいいんですか?」
俺は確認も兼ねて津辻会長に訊ねる。
「それは、どういう意味でしょうか?」
「停学になるレベルの事をやらかしたにしては、甘過ぎるんじゃないかなと」
「停学処分にしてほしいのなら、そうしましょうか?」
「謹んで遠慮します」
御免被るわ。なんで望んで停学処分を受けにゃならんのだ。
「……まぁ、それで処分が免れるなら」
俺は、その利害の一致とやらに微妙に作為的なものを感じながら、頷いた。
どの道、この話を呑む以外に選択肢はあってないようなものだ。




