39話 学園史上最強の風紀委員
結論から言って、今日でかなり片付いた。
あともう一日、本腰を入れて攻略にかかれば、第二生徒会室の制圧は完了するだろう。
俺と白根さんと言う前衛二人でダンボール箱や重量物をどかして運び、雪乃、夕莉、大松先輩の三人が手分けして分別、確保、廃棄に取り掛かる。
特に白根さんの怪力無双っぷりには脱帽だ、不要な木材も簡単に細かく圧し折ってみせるものだから、俺としてはここでも自分の立つ瀬が心配になるくらいだ。
今日の片付けも何事もなく終了し、お疲れ様だ。
新しい人と仲良くなりたい症候群の夕莉が、早速白根さんに話しかけている。
「白根ちゃんってさ、なんで風紀委員なのって訊いていい?」
そう。
それは俺も聞きたかった、聞きたかったんだが……なんか、こう、予想の遥か斜め上を突き抜けた返答が来そうで怖いんだが。
「あ、それ私も聞きたかったの」
雪乃もか。
「白根さんの腕力は、控えめに言ってヤバい。女子プロとかなら世界目指せるレベルだよ」
大松先輩まで。
しかも女子プロの世界レベルて。
並み居るゴリゴリのゴリラみたいな女子選手を、ポイポイと投げ飛ばしていく華奢な美少女……いっそコメディアンだな。
「そ、そんな女子プロなんて目指せませんよ。風紀委員に入ったのも、今の委員長さんに「君のその力で我らが学び舎を守ってほしい!」と熱烈なスカウトを受けまして……まぁ、それも悪くないかなぁと」
その力って筋力的な意味で、なおかつ守るっていうのも物理的な意味だろうなぁ……
この学園にチンピラみたいなのがいないのも、もしかしたら白根さんのおかげかもしれない (武力で黙らせていると言う意味で)。
白根さんの控えめな武勇伝 (なお、内容はとんでもない)も終わったところで下校だ。
電車通学の白根さんは真っ直ぐ駅に向かい、途中までは雪乃、大松先輩と別れ、最後まで一緒にいるのは夕莉。
「いやー、すんごい後輩が来ちゃったね」
白根さんのことを言っているのだろう、夕莉は苦笑している。
「俺は自分の立つ瀬が無くなるんじゃないかって本気で危惧してるよ」
いや、ホントに。
力仕事は男子に、って構図を根本から引きちぎるレベルだよ、アレは。
「椿は今のとこ、力仕事担当だもんね。ポジションとられちゃって大変ねー」
からかうように言う夕莉だが、肩身が狭くなるのは否定できん。
だからといって、俺が明日から白根さんを上回るパワーを見せられるのかと言えば、無理の二文字、不可能の三文字だ。改造人間にでもならなければ、一晩で筋力が増したりするものか。
「なんかもう、アレは比較したらダメな対象かもしれない」
見た目は雪乃や夕莉よりもずっと華奢で細いのに、自分の体重の二倍以上のウェイトを平然と持ち上げる。
きっと筋肉の造りが人間のそれじゃないんだろう、カブトムシとかクワガタムシの遺伝子でも継いでるんじゃないかとでも思わなければ納得しかねる。
「ま、慌てたり劣等感感じたりもしないでいいんじゃない?ここで椿がバックレたら、白根ちゃんばっかりがしんどくなるし」
「そうだな……」
別に白根さんとポジション争いや敵対視しているわけじゃないし、ふつうに話すこともある。
ただ……役割を横から持っていかれるって、意外とショックかもしれない。




