29話 我らが三人衆、下校の刻
今日の準備会の活動も無事に終了し、雪乃と夕莉の二人は一緒にどこかに寄るようで足早に下校し、大松先輩は津辻会長と帰るつもりなのか、第一生徒会室へ向かっていった。
さて、今日は慎ましく一人で帰るとしますか。
四階から玄関ロッカーへ降りてくると、ちょうどそこに、誠二と昌磨の二人が靴を履き替えているところに出会した。
「お疲れさん誠二、昌磨」
俺から声を掛けると、二人とも揃って振り向いてくれた。
「おぃっす椿、そっちもお疲れさん」
こなれたように革靴を履きながら上履きをロッカーに放り込むのは誠二。
「お疲れ様。今日も準備会の仕事?」
丁寧に靴紐を結び直しているのは昌磨。
この二人、あらゆる意味で正反対で、イケメンであることしか共通点が無いのに、何故か気が合うらしい。
かく言う俺も、この二人と気が合うことも多いので、こうして気兼ねない関係を築けているのだが。
「まぁな。連日強制筋トレで、上腕筋が産まれたての子鹿になりそうだ」
肩を回してみせて、
あ、いまなんかベキキッって音が骨から聞こえたんだけど大丈夫だろうか。
「男手は今、お前しかいないんだっけか?そりゃ力仕事をまかされるわな」
大変そうだなー、と笑う誠二だが、こいつは普段のバスケ部の厳しい練習に加えて、時には運動部棟に併設されているトレーニングルームで、自分の体重よりも重いウェイトを上下しているのだ。
「運動部の筋トレよりはマシだろうけどな」
「いやいや、引っ越しとか建設のアルバイトを何度も経験してる椿も大概だと思うよ」
涼しい顔で苦笑する昌磨。
こいつはこいつで、誠二みたいに筋肉が付いているわけじゃないが、下手な連中よりよっぽど鍛えてるからなぁ……
単純な筋力なら誠二、殺陣での瞬発力なら昌磨、長時間の持久力なら俺……と言う、意図したわけではないんだが、奇妙な三つ巴が出来上がっている。
俺も上履きから革靴へ履き替えたところで、我ら三人衆(と、誠二が勝手に言っている)、いざ下校の時だ。
「十月なんてまだまだ夏みたいなもんだろって思ってたけど、日が沈むと気温が下がって来てるって実感するよなぁ」
誠二はそう言いながら、捲くっていたYシャツの袖を降ろしている。
「なんでも、今年はかなり早い段階から真冬並みの大寒波がやって来るようだし、今の内に冬物の準備が必要かもしれないね」
昌磨が言うことは、俺もニュースで何か聞いたことがある。
今年は、近年稀に見る大寒波が日本に上陸するとかなんとか言っていた気がする。
「となると、雪も積もるかもな」
辺り一面雪景色なんて、実際にはもう何年も見てないくらいだ。
……ホワイトクリスマス、か。
別に興味があるわけじゃないが、何となくその方がクリスマスらしいと思うだけだ。
――この時はまだ、本当にホワイトクリスマスになるとは思っておらず、それを"彼女"と過ごすことになるなど、今の俺には予感することも出来なかったんだが――




