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こちら転生勇者絶許委員会!  作者: かんぬぁづき
2/4

時間停止能力者の倒し方 2

チキュン。それは人間と魔族の住む星。


この星では古来から人間と魔族の血で血を洗う激しい争いが行われており、その争いは今も続いている…なんて事はない。確かに数百年間、二種族は互いの領地拡大のため激しい争いを行なってきた。しかし、その争いは百年前、大魔術師『クール=ポッコ』のある発見により急に終わりを迎える。


その発見とはこの世界の根幹に関わる現象『魔力』に関する物だ。


魔力とは何か。


古来よりこの世界には魔力なる力が存在している。触れずに物を動かせ、何もない空間から炎や水を発生させる不思議な力。それが魔力。魔力は、この世界の生物と密接な関わりを持っていた。しかし、魔力とは何か、この力が何から生み出される物なのかは誰にもわかっていなかった。


研究に研究を重ね、そんな疑問に答えを見つけたのが『クール=ポッコ』だった。


魔力の正体…それは『精神に反応する力場』


重力を生み出す『重力場』が物質の質量によって生まれる様に、電気を生み出す『電場』が電荷によって生まれる様に、魔力というのは生物の『想い』『精神』というものによって生み出される場の力だった。


考えてみれば他の『力』と比べて、魔法で多彩な事が出来るのも自然だった。『想い』『精神』というのは生き方によって十人十色だ。そんな多様な『想い』『精神』に反応する魔法だから、冷静な性格のものはより巨大な氷を生み出し、熱い心を持つものはより熱い炎を生み出す事が出来たのだ。


そしてこの魔法についてもう一つ分かった事がある。それは、『より綺麗な心を持っている者の方が強大な魔法を扱える』という事だ。


当時、争いに明け暮れていた人間と魔族は、それぞれ相手より強い戦士を生み、争いに勝利するため…自分の子供達に()()()()()()()()()()()()()()()。そしてその結果、育てられた子ども達は強大な魔力を持ち、戦場に赴くと互いに……建設的な議論をする様になった。


『僕達は魔法でなく、議論によりこの戦争を終わらせるべきだ』

『その通りです。取り敢えずコレ、お茶です』


今まで数百年続いてきた戦争は新世代の戦士により、お茶を飲みながらの二週間の議論で幕を閉じた。その間、Twit◯erやY◯utube、にちゃん◯る等でたまに見る、民度の低いコメをする者は一人もいなかったという。この出来事を『民度革命』という。


かくして人間と魔族は、土地への適性度を元にそれぞれが所有して良い領地を綺麗に分け、チキュン上での争いは幕を閉じた。


ただ、チキュンが完全に平和になった訳ではなかった。まだこの星には小さな問題があった。


クール=ポッコが魔力の正体を見つける五十年ほど前、魔族に勝とうとした人間勢は、異世界からの協力を求めようとした。当時人間側に属していた大魔道士数百人を筆頭に、異世界から人間を召喚する召喚装置(ゲート)を作ったのだ。コレで何千、何万という人間を呼び、異世界人が直接戦いに参加せずともなんらかの形で協力をしてくれればこちらの勝利は間違いない。そう思ったのだった。


しかし、この計画は二つの予想外を生んだ。


一つ目は、ゲートから召喚出来るのは一度に一人であり、この召喚作業が終了すると、不定期な時間が経った後、自動的に新たな人材が召喚されるという事。この時間は数週間から数年までと、完全にランダムで予想ができない。

つまり、人間が全力をかけて作った物は、召喚装置とは名ばかりで、効率も悪ければ制御もできない完全な失敗作だったのだ。

二つ目は、()()()()()()()()()()()()()()()という事。ゲートは人間が『魔族に勝ちたい』という強大な『想い』をかけて作った物。その『想い』が強すぎるあまり、ゲート周辺の力場には歪みが生じてしまった。召喚時、異世界から来た一人の人間がこの歪みを一身に受ける事で、呼び出された人間は『自身の精神や想いに関係なく高い魔力を有する』、そして『チキュンに存在しない強力な能力を持つ』というこの世界の理を超えた特性を手にするようになった。


つまり戦時中、想定外が重なり、人類は『勇者』と呼ぶにふさわしい人間を不定期に召喚する装置を手にしたのだ。


この装置が完成してからの五十年間、例の終戦まで確かに魔族は勇者達の力にかなり苦しめられたのであった。


そして、終戦した今。このゲートはチキュンに住む者たちの『問題』となっている。なにが問題かと言うと…この装置、()()()()()()()()()()()()


先ほども言った通り、完全に不良品であるゲートは召喚を制御できない。そしてさらに言うと、現状、破壊も出来ないらしい。何やってんだ人間。


現在、ゲートには人間側の見張りが置かれており『勇者』が召喚され次第状況を説明し、人間側の領地でスローライフを送ってもらう、という事になっている。しかし、彼らの中にはたまに『どうしても魔族を倒すぜヒャッハー!』という狂戦士(バーサーカー)みたいな輩がいる。


そんな輩は魔族に『敵性勇者』と認定される。せっかく平和に過ごしているのに絶滅させられたらたまったもんじゃない。そんな思いで、魔族は人間の協力を一部得ながら、敵性勇者を鎮圧、又は消滅させるための専門組織『転生勇者絶許委員会』を設立したのだった。


転生勇者絶許委員会は六人からなる。


白い眉に白い髪、権威に満ち溢れた風貌の『委員長』

メガネをかけた半人半鬼、文書解読、整理担当の『ミカン』

青髪が特徴的で冷静沈着な分析、参謀担当の『クラーク』

頭から生えた羽が特徴的なサキュバス、部隊指揮担当の『ライザ』

寡黙で感情をあまり表に出さない蛇男。偵察担当の『ネイク』

健気で常に全力の獣人、伝達、輸送指揮担当の『新人』


彼らは今日も、魔族達の平和のため、必死に働いているのだった…。







「――なんていうのはどう?」

「何がよ」


敵性勇者の報告があった後、転生勇者絶許委員会の五人は移動用馬車に乗っていた。


「いや、若者にうちの組織を知ってもらうための広報、こんな感じでどうだろう?」

「そうね、唐突に喋り出したからすっごい気持ち悪かった。それに尽きるわね」

「広報の感想ですらない!?」

「気持ち悪かったっす!」

「新人まで!?そんな真っ直ぐな瞳で!?」

「あ、あの…感想であれば…人物紹介の時に委員長、自分の事を過大評価してたと思います…」

「その通りね、ミカン。委員長、ミカンが勇気出して指摘するレベルで酷いから自己紹介はすぐ治しなさい。『白い眉に白い髪、権威に満ち溢れた風貌の委員長』は長いしウザい。『口が臭いぞ!委員長』とかがいいわ。分かりやすいし」

「職員の口内環境紹介する広報なんてこの世に存在しないんだよ!あと『ミカンが勇気出して指摘するレベル』ってなんだよ!?勇気出すのはいい事だろうが!」

「あの…」

「ん?どうしたクラーク?」

「もう少しで合流地点ですが皆さんネイクからの資料に目は通しているのですよね?」

「「「「…」」」」

「えぇ…」


クラークは移動用馬車に揺られながら、給料が良くなければこの仕事、すぐに辞めてただろうなと思ったのだった。

【読んでも読まなくてもいい設定】

魔力


・大魔術師『クール=ポッコ』によってその正体が分かる。クール=ポッコが魔力の正体を見つけた時興奮のあまり「やっちまったなぁ!」と叫んだのはあまりに有名な逸話。(アウトです、アウト)

・力の正体は『精神』『想い』に依存する力場。生き物の性格に依存して特性が無限に変化するので、多様な使い道がある。

・『厨二病 複素と力場に 便りがち』(作者 心の俳句)

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