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Side クロウ episode.3

 そうして俺は、ウイングを学校へ呼び出した。


話せる限りのことの顛末と、俺の思いを伝えた。


正直なところ、あいつが現実に生きていなくても

どうでもいいと思っているのは変わらない。


それでも、クレナが笑って生きるためには

きっと必要な存在なのだろう。


セレンという大切な存在の維持のためには、必要不可欠なのだ。


 とはいえ

あいつと話している最中に、セレンから電話があったのは驚いた。


俺たちが、この世界の真相に気付いていて


この桃源郷を壊そうとしていることも

とっくに気付いていたのだろう。


だからか、俺は今少しづつ灰になっていっている。


もう既に指先は見えなくて


感覚はあるのだけれど

動かして見ても何も分からない

何も掴めない。


「なんで、あなた達は自分の命を投げ打ってしま……」


目の前にいる少女は、なぜか

苦痛で顔が歪んでいるようだった。


その声は僅かに震えているような気もしたけれど


その声が耳に届き切る前に


俺の耳は肺になっていった。


床に落ちるピアス。


クレナが、俺との約束の為に選んでくれたものだ。


悲壮感で溢れていた俺に


全てを希望に変えるかの如く現れた彼女。


でもそれは俺の勘違いで


彼女もまた


俺の存在が生きる糧だったのだと話してくれた。


1人では

きっと生きていけない俺と


1人では

いつか崩れてしまうクレナと


互いに補い合えていたのだろう


そんな思いが言の葉になって


この消え逝く桃源郷に響いたような気がしたんだ。


目の前の少女が、大きく目を見開いたのを見て


俺の視界は白に染まった。


 もう一度、クレナに会えたらなんて言おうか。


「俺、クレナのために役目ちゃんと果たせたよ」

「俺、ちゃんと生きていたよ」


でも、やっぱりクレナのいない世界は酷く寂しいから


「早く会いたいな」


そう願いを口にした時に

遠くから俺を呼ぶ声が聞こえた気がした。

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