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Side セレン episode.1

 出会った頃はなんで私がって思ってた。

心臓が悪くて、自由に身動き出来ない人の

面倒なんて見たくない


そう思っていた。


幼馴染だったから

もちろん顔は知っていたし

話したことだってある。


でも、小学校へ入学するときは

その場にはいない彼の事を


周りは誰も知らない。


ただ教室に空席が1席あるだけ。


でも、その空席の意味を理解出来る人なんて

そこにはいなくて


こういう子が居るんだよ

って話したところで


『それは誰?』

『そんなことより遊ぼうよ』


と返されるだけ。


 本当は花々を愛でるのは好きで

動物モノのテレビを見た日には

誰にもバレないように

泣いているような

繊細な心の持ち主で


でも、それを周囲に見せない

隠し通す芯を持った子なのだということは

理解していた。


彼のことを理解してくれない世界に

不信感を抱いたこと


それと同時に

彼と接することを

『面倒だ』と一蹴しようとした

自分に嫌気がした。


その時に姉からこう言われた。


『ウイング君の事を忘れられるのであれば

このまま突き放してしまうのも一つの手立てよ?


……けれども、貴女にそれが出来るかしら」


 思い出さずに生きて行けるのであれば

ここで彼との縁を切ったことも

後悔せずに生きて行けるのだろう。


けれども

同級生と過ごす中でも


彼のいない日常の中でも


彼という『非現実』を思い返してしまう。


そして周囲にそれを共有しようとしているのだ。


 その時点で、私は彼を見放すことが出来ないし

このまま、彼を置いて行く事を酷く後悔するだろうと思った。


気付いた時には心惹かれていたのだから

きっかけがなんだったのか

もう思い出せない。


一緒に花を愛でてくれた時の顔が優しかったとか


姉と喧嘩した時に

病室で口を尖らせる私にリンゴを剥いてくれたとか


誰にも打ち明けないその心を

少しだけ見せてくれた夏の日だったとか


どれがきっかけで

ウイングに恋をしたのか分からない。


 それでも、恋焦がれている相手を見捨てて生きる事を

『正しい選択』とは思えない。


 だとしても

私に彼を救う手立てはない。


周りにいくら彼の良いところを伝えたところで


彼と新たに友達になってくれる人はいないだろうし


彼もまた、それを望んでいないのだと

感じていた。


考えるだけで

実行にいつまでも移せない。


考えても正しい答えなんてどこにもない。


……正解のない世界は苦手だ。

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