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旅神のご加護がありますように!  作者: マリオン
異聞 終話 少年は荒野をめざす

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4

「上位の悪魔の出現まで、()()()()()()()

 紅林は、腕時計をちらと見て、焦りの色を見せる。


「関係者はすでに集めている。君たちが最後の参加者になる」

 言いながら、紅林は会議室の鍵を開けて──僕らに外に出るようにうながす。次いで、僕らを先導して、階段で三階にあがり、すぐの扉を開く。


 そこは、先よりもいくらか大きな会議室のようで、おそらく紅林の言う関係者とやらが集まっている。その様は、まるでドラマで目にする捜査会議のようで、僕は不謹慎にも心躍るのであるが──ドラマにくらべるといくらか手狭で、すぐに現実に引き戻される。


「やあ──君たちが()()()()()かあ!」

 会議室に入るなり、部屋の一番後ろの席に陣取っていた外国人が、陽気な声をあげる。


 金髪碧眼の、見るからに外国人といった風体の男は、部屋にいる他のものとくらべると、ずいぶんと雰囲気が異なる。上位の悪魔との戦いを前に、皆ぴりついているというのに、彼だけはのほほんと頬杖をついていて──この場にいなければ、どこぞの留学生か何かとでも思ったであろう。


「僕はエンティア、政府の──()()()()()()()だよ」

 男──エンティアは、紅林に聞こえるように、嫌味たらしい自己紹介をする。


「ちなみに──念のために聞くけど、同じ世界からの来訪者──じゃないよね?」

 エンティアの問いに、マリオンたちは顔を見あわせて──異世界の都市名と思しき名をいくつか口にするのであるが、エンティアはそのどれにも思いあたるものがなかったようで。

「よかったあ! 僕、帰ったら()()()だからさ。安心したよ」

 そう言って、無邪気に笑うのであるが──いったい何をやらかして、異世界まで逃げてきたやら。あまり信用のできぬ輩やもしれぬ、と僕は気を引きしめる。


 エンティアと話しているうちに──紅林は僕らを置いて、すたすたと会議室の前に歩み出る。

「彼女らが、新たに作戦に加わる稀人たちだ。すでに一度、上位の悪魔を退けている」

 紅林は、僕らを簡単に紹介して──周囲から驚きの声があがる。皆の目が、いっせいにこちらに向くのであるが──マリオンたちはともかくも、僕は単なる民間人なのであるからして、大変に居心地がわるい。


 僕らは、紅林に座るよううながされて、エンティアと同じく、部屋の後方の席に腰をおろす。テーブルには、対悪魔用の作戦をまとめたと思しき資料が用意されていて──僕はそれを手に取り、ページをめくる。


「マリオン──()()()として、発言はあるか?」

 と──会議室の前に立った紅林が、名指しで問いかけて──マリオンは席を立つ。

「私たちは、上位の悪魔を『()()』と呼称してる」


 マリオンの語るところによると、彼女らは自身の故郷たる異世界で、魔神と──そして、さらにその上位存在である魔神王と遭遇したことがあるのだという。


「彼らの目的は、()()()()()()──魔神は、その先遣部隊の隊長のようなものと考えていいと思う」

 マリオンの発言に、周囲がざわめき始める。


 それはそうであろう──今まで突発的な災害のように対処してきた悪魔という存在が、実は明確な意思を持った侵略者であるというのであるから、驚くのも無理はない。


「今回の魔神について、私たちが知っている能力は、()()

 マリオンは、ざわつく周囲をよそに、話を続ける。


「一つ目は、予備動作なしで衝撃波を放つこと」

 言って、マリオンは、一本目の指を立てる。


 衝撃波──それは、肝試しのときに、マリオンがポンチョで防いだ()()であろう。ミラーハウスを破壊するほどの、凄まじい威力であったことを思い出す。


「二つ目は、低位の悪魔を召喚すること」

 次いで、マリオンは二本目の指を立てる。


 海水浴のときに、無人島で戦った悪魔──先客の証言だけで、実際に魔神が召喚するところを目にしたわけではないが、それでも確度の高い情報であろう、と思う。


「三つ目は、死体を操ること」

 最後に、マリオンは三本目の指を立てる。


 これも、肝試しのときのこと──()()()()()のことであろう、と思う。マリオンは軽々と倒していたので、それほどの脅威ではないようにも思える。


「これまでも対応してきたなら知ってると思うけど、低位の悪魔は心臓を破壊すれば、こちらの世界に顕現できなくなる。強力な武器があるなら、対応可能な相手だと思う」

 マリオンの言に、紅林は鷹揚に頷く。例の特殊部隊とやらは、十分に強力な武器を持っているのであろう、と思う。


「ただ、死体の方は、ちょっと厄介でね。死体だから、普通には死なない。いわゆる()()()ってやつなんだ。この中で不死者を殺したことのある人──」

 マリオンの問いに、勢いよく手をあげるのは──稀人エンティアただ一人である。

「──となると、たぶん、私たち稀人以外では、不死者を殺すことはできないと思う」

 マリオンは、眉根に皺を寄せながら、そう結論づける。

「なるほど──しかし、君たちが殺せるというのなら、戦いようはある」

 紅林は、不死者というイレギュラーの存在にも、動じることはない。


「とはいえ──魔神はどうする? 君たちなら、魔神も殺せるのか?」

 紅林は、その一点をこそ、どうしても知りたいようで、真顔でマリオンに問う。

「遊園地では無理だったけど──」

 言って、マリオンはロレッタさんを、ちらと見て。

「──()()()()()()

 力強く断言する。

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